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『ボヘミアン・ラプソディ』フレディ役ラミ・マレック、監督交代劇で直接嘆願していた ─ 後任監督は『キングスマン』マシュー・ヴォーンの推薦

ボヘミアン・ラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

2018年の映画界を大いに盛り上げた、クイーンとフレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』。世界中を熱狂させ、日本でも大ヒットを記録した本作は、監督交代という大きなトラブルに見舞われた作品だった。最大の出来事は、監督を務めていたブライアン・シンガーが撮影現場に現れなくなり、20世紀フォックスが解雇に踏み切ったこと。残りの撮影を引き継ぎ、作品を仕上げたのは映画監督・俳優のデクスター・フレッチャーだった。

このたび米The Hollywood Reporterでは、フレッチャーが監督交代劇の舞台裏を語っている。その背景には、『キングスマン』シリーズのマシュー・ヴォーン監督による推薦と、本作でフレディを演じたラミ・マレックの強い要請があったという。

『ボヘミアン・ラプソディ』から『ロケットマン』へ

2017年12月、フレッチャー監督が『ボヘミアン・ラプソディ』の監督後任者として20世紀フォックスから打診を受けた時、本来ならばフレッチャーはオファーを受けられる状況ではなかっただろう。なぜなら彼は、エルトン・ジョンの伝記ミュージカル映画『ロケットマン』(2019年8月23日公開)の撮影準備に入っていたからだ。

それでも白羽の矢が立てられたのは、『ロケットマン』でプロデューサーを務めているマシュー・ヴォーン監督が、フォックス側にフレッチャーを推薦したからだった。前任者のシンガーが撮影現場に現れないことを危惧したフォックスは、ヴォーン監督を後任者として検討し、すでに完成している映像を見せたのだという。ヴォーン監督は、当時を回顧してこう語る。

「シンガーはとても良い仕事をしていましたが、映画は完成しなかった。そこで、“僕が仕上げることはできませんが、誰がふさわしいかは分かります”と答えたんです。デクスターには“70年代のポップ・アイコンを撮る訓練になるよ”と言って。『ロケットマン』に参加してもらって、その確信があったんです。」

ボヘミアン・ラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

当時のフレッチャーは『ロケットマン』に気持ちが入っていた頃だったというが、プロデューサーのヴォーン監督が推薦したとあっては話は早かっただろう。さらに主演俳優のラミ・マレックも、フレッチャー監督の就任を強く希望したという。フレッチャー監督は、ラミの発言をきちんと記憶していた。

“どうしてもあなたが必要なんです。あなたでなくても誰かは必要なんだ。もし現場の床にウンコしたって、まだアイツより良い仕事ができますよ”。そう言われました。」

『ボヘミアン・ラプソディ』が賞レースにて成果を上げはじめた2019年2月、ラミは前任者のシンガーとの確執を隠さなかった。言葉少なくも「ブライアンとの経験は楽しいものではまったくありませんでした」、そして「解雇されるべきだと思っていました」とまで述べているのである。シンガーが現場に現れなくなったころ、両者の関係は非常に悪化していたとみられる。

既報の通り、フレッチャー監督が担当したのは全編の約30%。これまでにも「Another One Bites the Dust」「We Will Rock You」のレコーディングシーン、そして映画前半の明るいシーンのいくつかを担当していたことが明かされているが、The Hollywood Reporerによれば、フレディが自分の誕生日を家族と祝う場面はフレッチャーの手によるものだという。

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本作の関係者は前任者のシンガーについて多くを語っていないが、それはフレッチャーも同様だ。「いずれ事実は明らかになります。なんにしたって彼(シンガー)の問題ですから」と述べ、『ボヘミアン・ラプソディ』については「ラミや素晴らしい音楽、それから映画を観て、愛してくださった多くの方々が作ってくれたもの」だと話している。

ちなみにフレッチャー監督は、実は『ボヘミアン・ラプソディ』がソニー・ピクチャーズで企画されていた当初、監督としてプロジェクトに関わっていた人物でもある。しかし当時の企画は、完成した作品とはかけ離れた「R指定で悩みの深い映画」だったという。いわく「移民であることやゲイであること、アウトサイダーの価値観を描こうとしていたんです」。

スタジオとの創造性の違いから企画を離脱したフレッチャーは、いささか奇妙な形で『ボヘミアン・ラプソディ』に戻ってきた。現在、彼は本作について「自分が魂を込めたからといって、それが正しいとは限らないんですね。フォックスは正しかった、だって(興収)9億ドルですよ」とコメントしている。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』ブルーレイ&DVDは発売中。なお、フレッチャー監督によるエルトン・ジョンの伝記ミュージカル映画『ロケットマン』は2019年8月23日(金)全国ロードショー。

『ロケットマン』も期待しましょう

Source: THR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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