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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』監督、ブロフェルドの新たな陰謀を示唆 ─ マドレーヌの過去と『カジノ・ロワイヤル』繋がるか

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
Credit: Nicola Dove © 2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

『007』シリーズ第25作、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる最終作となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)に始まった“クレイグ版ボンド”の総決算となりそうだ。脚本・監督を務めるキャリー・フクナガ監督が、英Empireにて“たくらみ”の一端を明かしている。

この記事には、映画『007 カジノ・ロワイヤル』『007 スペクター』のネタバレが含まれています。

ダニエル・クレイグ版ボンドが重ねてきた年月

フクナガ監督によると、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の物語は前作『007 スペクター』(2015)から5年後。つまり、現実世界で経過した時間の流れが、そのまま物語に反映されているのだ。引退したボンドはジャマイカで穏やかな生活を送っていたが、そこにCIA出身の旧友フィリックス・ライターが訪れる。誘拐された科学者を救出する任務を引き受けたことから、ボンドは恐るべき最新技術をもつ巨悪に接近していくのだ。

「今回の予告編では、新しい世代の精神を示しています。常に限界を押し広げていくんです」。クレイグ版ボンドの積み重ねてきた時間を本作が重要視していることをフクナガ監督は強調する。「今回やりたかったことのひとつは、“ボンドが残すもの(レガシー)”というテーマ。引退したあと、新しい世代が出てくると、彼の存在は塗り替えられてしまうのかということです」

ボンドが5年ぶりに訪れたMI6では、警備員が自分の顔を知らない。おなじみの名乗り文句「ボンド…ジェームズ・ボンド」が警備員に向かって言い放たれるのは、コミカルだがどこか寂しくもあるだろう。アクションの面についても、監督は「ダニエルが『カジノ・ロワイヤル』当時と同じ年齢であるかのように見せかけるのはやめました」と語った。もっとも、すでに激しいカーチェイスやバイクアクションが見られるように、年齢ゆえのパワーダウンを心配する必要はない。フクナガ監督は「ボンド映画にかつてなかったものを作ろうとした」とも話しているのだ。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』予告編はこちら

『007 スペクター』マドレーヌとブロフェルドの存在

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の物語がクレイグ版ボンドの過去作品と深く結びついているのは、登場人物の観点からも明らかだ。『007 スペクター』からは、ボンドガールのマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)と、悪役のエルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)が続投。マネーペニー役のナオミ・ハリスは、本作が『007 スカイフォール』(2012)『スペクター』と繋がっていること、そして「みなさんがショックを受ける、とんでもないサプライズ」が用意されていることを明かしてもいる。

ボンドとマドレーヌの関係について、フクナガ監督は「(前作は)ボンドとドクター・スワンが(アストン・マーティン)DB5に乗って、夕方のロンドンへ向かうところで終わりました。それをなかったことにはできません」と語った。「2人の関係に敬意を払い、その先を見なければと考えました」

どうやら本作では、マドレーヌの秘密こそがストーリーの鍵を握っているらしい。マドレーヌの過去に関わっている人物や、そこに眠っている何かが、ボンドとの関係に危機をもたらすことになるのだ。では、その秘密とは。

「スワンの父親はミスター・ホワイト。ミスター・ホワイトは、ボンドがヴェスパー・リンドとの人生を生きられるかどうかのカギを握っていました。つまり、そこに何かがあるのです。」

ヴェスパー・リンドとは、クレイグ版ボンドの第1作『007 カジノ・ロワイヤル』のボンドガールであり、ボンドが深く愛した女性。ところが彼女は、物語のクライマックスで命を落としてしまった。もし、マドレーヌの秘密がミスター・ホワイトを通じてヴェスパーに繋がるのだとすれば、やはり本作はクレイグ版ボンドの物語を総括するものになりそうだ。

かたや、世界の裏側からあらゆる悪の手を引いてきたのがエルンスト・スタヴロ・ブロフェルド。ボンドの義理の兄、フランツ・オーベルハウザーだ。彼は『カジノ・ロワイヤル』から『スカイフォール』までに登場した悪役3人を操っていた、まさしく真の巨悪というべき存在だが、それゆえに今では国からも一目置かれる存在となっているらしい。もっとも、フクナガ監督は非常に不穏な予告を繰り出しているのだが。

「ブロフェルドはすべてのボンド映画においてアイコニックなキャラクター。獄中にいますが、本当に彼を閉じ込めておくことはできません。その場所から彼ができることとは何なのでしょうか。そして彼は、ジェームズ・ボンドや世界に向けて、どのように極悪でサディスティックな計画を立ててきたのでしょうか。」

なお、本作でメインの悪役としてボンドの前に現れるのは、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)のラミ・マレック演じる男サフィンだ。年齢的には『カジノ・ロワイヤル』以来もっとも若い悪役だが、監督は「悪人にも新しい世代が登場します。とても知性的な、ボンドの敵役にふさわしい人物です」と述べている。

今回の予告編で、ボンドを「暴力の歴史」と形容したサフィンに、ボンド自身は「歴史ってやつは、神様気取りに優しくないんだ」と口にする。“神様気取り”とはどういう意味なのか、サフィンの目的が何かは分からない。ちなみにフクナガ監督は「すべての暴君には没落がある。少なくとも、僕たちはそうであることを望んでいます」と話しているが、暴君とは“神様気取り”のサフィンのことか、あるいは、今もなお何かを目論んでいるのかもしれないブロフェルドのことか、それともその両方か。

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2020年4月10日(金)全国ロードショー

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Source: Empire, GQ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。