『ジェイソン・ボーン』シリーズはマーベル映画のようにユニバース化を試みたが頓挫していた

マット・デイモン主演のスパイ・スリラー『ボーン』シリーズは、ある時点でマーベル映画のようなユニバース化を試みたことがあったが、製作側の内部事情によって実現できなかったことがあったそうだ。シリーズを手がけたトニー・ギルロイが米Deadlineに明かしている。
リアリズムを追求した本シリーズは、他のスパイアクションものとは一線を画す作風で硬派なファンを多く獲得。『ボーン・アイデンティティー』(2002)『ボーン・スプレマシー』(2004)『ボーン・アルティメイタム』(2007)に加え、ジェレミー・レナーが演じるアーロン・クロスを主人公とする『ボーン・レガシー』(2012)がある。2016年には復帰作『ジェイソン・ボーン』が公開された。
もしも何かの事情が異なっていたら、シリーズは現在に至るまでずっと拡大していたのかもしれない。「『ボーン・レガシー』をマーベル・ユニバースのようにしたかったのですが、断られてしまったのです。実は、それが目標でした」と、シリーズの脚本や監督を務めたトニー・ギルロイは語っている。シリーズの関連作を手がけ、ユニバース化する構想があったというのだ。
ギルロイは、『ボーン』シリーズの歴史を「史上最も乱雑な成功」と表現。「もし誰かが初めからフォローしていれば、素晴らしいものになっていたはず」と、統制が取れていなかったことを赤裸々に振り返っている。このシリーズは、「成功に向かって、ずっとつまずいていた」のだと。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は2008年の『アイアンマン』に始まり、2012年の映画『アベンジャーズ』でその前代未聞の試みが話題となった。同じ頃にギルロイも、スピンオフ的な性質を持った2012年の『ボーン・レガシー』をユニバース化の足がかりとしたかったようだ。
MCUは綿密な計画によって、今や世界最大の映画フランチャイズとなった。ギルロイは『ボーン』シリーズもユニバース展開したかったものの、「わだかまり」などの内部事情によって実現できなかったと悔やんでいる。ちなみに同シリーズからはドラマ版「トレッドストーン」が登場しているが、2019年放送のシーズン1をもって打ち切り終了の憂き目にあっている。
もっとも、ギルロイが夢見たユニバース構想は、完全に消え去ったわけではない。同一世界観で語られるという新作映画の企画が存在しているのだ。ただ、具体的な進展は数年間伝えられておらず、今の状況がどうなっているのかはわからない。
MCU以降は同じようにユニバース構想を試みるIPが増えた。もしも成功していれば、『ボーン』シリーズはユニバース化トレンドの先駆者のうちの一つとなっていたはずで、またジェレミー・レナーは二大ユニバースを股にかける俳優となっていたことだろう。
なおギルロイは現在、『スター・ウォーズ』という別のユニバースに参加している。ドラマ「キャシアン・アンドー」では、『ボーン』シリーズ顔負けの硬派なスパイ・スリラーを『スター・ウォーズ』銀河で再現。2024年配信予定のシーズン2もファンの間で期待されている。
ユニバース展開するスパイものといえば、Amazon Primeオリジナルの「シタデル」がある。それこそMCUで成功を納めたアンソニー&ジョー・ルッソ監督がそのノウハウを活かし、「シタデル・スパイバース」と呼ばれる同一世界観のもと世界各国で独自のストーリーを展開。それらをやがてクロスオーバーさせる野心的なドラマだ。2023年4月28日に配信開始となると、早速新シリーズ「Citadel: Diana(原題)」の2024年配信予定もアナウンスされている。
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Source:Deadline