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『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』フランスで劇場公開されない可能性 ─ 現地の配信政策にディズニーが抵抗

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
©Marvel Studios 2022

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が、フランスにて劇場公開されない可能性が浮上してきた。

問題のきっかけは、フランスの文化省が、劇場公開作品のストリーミング配信について独自の厳しい政策をなかなか緩和しないことだ。以前、劇場公開作品の定額配信サービスにおける配信が認められたのは劇場公開の36ヶ月後。2022年1月にはこれを映画会社ごとに緩和したが、ディズニーに対しては「劇場公開後17ヶ月後に認める」との方針が決定されていた(有料配信は4ヶ月後から可)。

この判断に対し、ディズニーは断固として抵抗する姿勢を示している。2022年6月には、新作アニメーション映画『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』のフランスでの劇場公開を撤回。同作は11月23日に公開される予定だったが、フランスではディズニープラス(Disney+)での独占配信とすることを決定した。この時、ディズニー側は文化省の政策を「反・消費者的」であり、「過去数年間に発展した視聴習慣を無視し、海賊版のリスクを高めるもの」と批判。今後の劇場公開作品については「市場の状況にもとづき、映画ごとに判断する」とした。

もっとも、『ストレンジ・ワールド』の劇場公開撤回から3ヶ月以上が経過した現在もフランスの状況に変化はない。仏Le Film Francaisによれば、ディズニーは『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』について「(劇場公開の)判断を下していない」とのこと。同時に、作品ごとに上映の有無を判断する方針は現在も変わっていないことを示唆した。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』はフランスでは11月9日に劇場公開予定のため、ディズニーは『ストレンジ・ワールド』の配信開始を待たずに次の判断を下さなければならない。ただし、選択肢は大きく分けてふたつしかない。従来のMCU作品と同じく劇場公開に踏み切るかわり、現地の法令に準じて配信を大幅に繰り下げるか(MCUのフェイズ4作品はフランスでは未配信のままだ)、『ストレンジ・ワールド』と同じくディズニープラスでの独占配信に踏み切るかだ。おそらくはビジネス的によりよい方向性が選択されることだろう。

なお、近年のMCU作品は中国・ロシアで上映されていないほか、『エターナルズ』(2021)『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)は性的少数者に関する描写があるためにサウジアラビアやエジプトなど湾岸諸国での上映が見合わせとなっていた。しかし、今回のケースはそれらとは原因や状況が大きく異なるものだ。

Sources: The DirectLe Film Francais, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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