【ネタバレ解説】『ブレードランナー2049』最大のサプライズは、いかにして実現したか ─ 超えるべきは『スター・ウォーズ』

前作への想い入れの強い方ほど、『ブレードランナー2049』は語りたい作品となるだろう。しかし皮肉なことに、今作は「何を語ってもネタバレになる」類の作品だ。特に、劇中に忍ばされた思いもよらないサプライズは…、おっと、これ以上は大変なネタバレとなってしまう。この先は、かならず『ブレードランナー2049』を鑑賞してからお楽しみ頂きたい。

注意

この記事には、映画『ブレードランナー2049』の重大なネタバレ内容が含まれています。かならず鑑賞を終えてからお読みください。また、内容が分かってしまう形でのSNSシェアは、本編未見の方のためにお控え下さい。

ブレードランナー 2049

(C) 2017 Alcon Entertainment, LLC., Columbia Pictures Industries, Inc. and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.


『ブレードランナー2049』は、1982年のオリジナル版を継ぐ様々な要素が登場する。ディストピア的なロサンゼルスの雨雲とネオン、スピナー、ハリソン・フォード演じるデッカード…。その中でも思いもよらぬ形で登場するのが、前作ラストでデッカードと逃避行を共にした美しき女性レプリカント、レイチェルだ

『ブレードランナー2049』レイチェルはいかにして復活したか

レイチェルを『2049』に蘇らせる──この大胆なアイデアは、脚本のマイケル・グリーンによるものだった。劇中のデッカード(ハリソン・フォード)の台詞は、産みの親であるリドリー・スコットの提案によるものだ。マイケル氏はEntertainment Weekly誌のインタビューに対し、以下のように語っている。

「一体どうやればあのシーンをうまく見せられるか、行ったり来たりを繰り返しました。(出来には)とてもとても感謝しています。最終的に完全なバージョンになるまで、繰り返し進化させました。すばらしい瞬間でしたよ。リドリー・スコットが”彼女の瞳は緑だ”の台詞を提案してくださったんです。すぐに書き足して、自分のものにしました。」

『ブレードランナー2049』のレイチェルは、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)のブライアン・オコナーや『ローグ・ワンスター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のターキン提督やレイア姫と同様のデジタル蘇生が施された。オリジナル版でレイチェルを演じたショーン・ヤングは健在だが、実際の撮影では別の女優が代役を演じ、後にデジタルで若きレイチェルの表情を緻密にペインティングしている。本作で視覚効果監督を務めたジョン・ネルソン氏は、Entertainment Weekly誌のインタビューにその舞台裏の一部を語っており、米IDG社運営のメディアDigitalArtsでは蘇生の裏側プロセスの一部始終を明かしている。それぞれのWebページでは、代役が務めたレイチェルがいかにして若きショーン・ヤング姿に変遷したかが画像でも紹介されているので、各自の目で確かめて欲しい。ジョン・ネルソンは語る。

「デジタル・ヒューマンは聖杯のようなもので、非常に困難でした。私のキャリア史上最困難な仕事になるだろうとは思っていました。この映画では様々なチャレンジを行っていますが、これが一番難しかった。」

困難を極めたこの仕事を担当したのは、イギリスのVFX制作会社のMPC(ムービング・ピクチャー・カンパニー)だ。まずMPCは、オリジナル版のレイチェルを演じたショーン・ヤングの頭部をスキャニングした。彼女の表情には、前作から経過した35年分の加齢が表れているものの、頭蓋骨の形や構造は変わらない。MPCのモデレーターは、スキャニングで得たショーン・ヤングの頭蓋骨のデータを元に、レイチェルの鼻の高さや頬骨、顎の位置を緻密に算出していった。

続いて、前作『ブレードランナー』より、レイチェルの皮膚や表情の細かな情報を抽出していく。ところが、前作のレイチェルといえば暗闇での登場がほとんどだったため、MPCではモデレーターとアーティストは苦労が強いられた。

ブレードランナー

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デジタルの”代役”が「不気味の谷」を超えてうまくシーンに馴染むかどうか、MPCはオリジナル版『ブレードランナー』より3シーンのレイチェルをデジタル版に差し替えて”カメラテスト”を行った。これにクリアすると、いよいよボディ・ダブルを用いた本番の撮影に挑むこととなる。ネルソンが「撮影は極秘で行われました。何があっても絶対に話してはいけない秘密だったのです」と語るレイチェルの登場は、秘密を徹底すべく役名を“リタ(Rita)”のコードネームにすり替えていたという。

レイチェルのボディ・ダブルを務めたのは、イギリスの女優ローレン・ペータ。撮影では、当時のレイチェル風のヘアスタイルとメイクを施し、ハリソン・フォード、ジャレッド・レト、シルヴィア・フークスと場面を共にした。現場には、オリジナル版でレイチェルを演じたショーン・ヤングもアドバイザーとして参加し、自身も各シーンを演じた。その際の表情は、特殊なカメラ(DI4D)で3Dデータとして撮影される。ちなみに、奇妙なめぐり合わせか、ショーンの息子さんも本作には製作アシスタントとして携わっていたという。

ローレンは、現在ではさほど珍しくもなくなったモーションキャプチャー用のドットマークを顔面に施し、レイチェルを演じた。ショーン・ヤングとローレン・ペータの2人は、別日にブタペストにてそれぞれ資料用のフェイシャル・キャプチャー撮影も行った。この映像に、デジタル技術による”メイクアップ”が施される。

『ローグ・ワン』ターキン提督を超えるために

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がひとつのベンチマークとしたもの…それはやはり『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のターキン提督だった。もっとも監督は、レイチェルは『スター・ウォーズ』ターキン監督の蘇生を超えねばならないと考えていたようだ。GameSpotでは、ドゥニ監督のコメントを紹介している。

「作業の進行中、私は『ローグ・ワン』を観直して、編集ルームに戻ってみんなに言いました。“全然好気に入らないな”ってね。『ローグ・ワン』の監督はもの凄く尊敬していますし、あの映画は素晴らしかったと思う。けれども(ターキン提督の登場シーンは)映画から気を逸らされてしまったんですよね。」

『ローグ・ワン』“あの人物”はいかに復活したか?CGチームが最新技術の全貌を解説

では、ドゥニ監督が目指したレイチェルのデジタル復活の在り方はいかなるものだったか。その基準は実にユニークなものだった。

「母親に観せても、“あら、すごい似てる人を見つけてきたのね!”と言わせるようなものにしたいんです。合成だと思われないようなものにしたくて。」

この難題はネルソン氏とMPCのチームに投げられることとなる。「こんなにもメイクの勉強をするなんて思いもしませんでしたよ」と振り返るネルソン氏は、わずかな頭の傾きからまぶたのシワの数まで、細心の注意を払いながらレイチェルを再現していく。特に自信を見せるのは、リアルな髪の再現だ。

「デジタルでつくられた髪の毛はすごく綺麗ですけど、時々やり過ぎなことがあるんですよね。だから我々はより本物らしく見せるため、毛のハネ(※原語:Flyaway Hair、毛束からフワフワと浮き出した毛のこと。アホ毛とも言える。)を再現したんです。」

デジタルの役者が、人間には出来ない演技を再現し始めている。既に『ローグ・ワン』で実現しているように、故人の蘇生さえ成功している。この魔法のようなテクノロジーは、『ブレードランナー』におけるレプリカントのように、本物の役者の仕事を奪う恐れはないだろうか──。ネルソン氏は否定する。

「デジタル・ヒューマンを創るのは信じられないくらいに大変。とてつもない時間がかかるんです。だから本物の役者さんたちは、しばらくは安心だと思いますよ。」

『ブレードランナー』レイチェルは何処へ消えた?悲運の女優ショーン・ヤングの半生と現在【はじめてのブレードランナー3】

Source:http://www.digitalartsonline.co.uk/news/motion-graphics/how-mpc-recreated-rachael-for-blade-runner-2049/
http://ew.com/movies/blade-runner-2049-rachael-sean-young-cameo/the-original-rachael-from-blade-runner-sean-young
http://ew.com/movies/2017/10/08/blade-runner-2049-ending-explained/
https://www.gamespot.com/articles/how-blade-runner-2049-resurrected-that-character-f/1100-6453912/
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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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