『ローグ・ワン』“あの人物”はいかに復活したか?CGチームが最新技術の全貌を解説
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、おそらく映画史に残る作品だ。それは本作が、名だたる『スター・ウォーズ』シリーズの一部だからではない。もちろん『スター・ウォーズ』は映画史に残るシリーズであり、『ローグ・ワン』もその一部として映画史に刻まれることには違いないが、それよりもこの作品は、明らかに革新的な技術を実用した映画として歴史に残るはずなのだ。
これ以上は本編の重要なネタバレを含むため、本作が劇場公開中である以上、この時点で多くを語ることはできない。本記事は、『ローグ・ワン』における“ある人物の復活”と、そのために達成された血の滲むような努力の全貌を解説するものである。
【注意】
この記事には、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。
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『ローグ・ワン』における最大のサプライズ、それはウィルハフ・ターキン総督とレイア・オーガナの登場だった。それも、多くの映画がやるような、代役を立てるという方法によってではない。最新技術を駆使することにより、1977年公開『エピソード4/新たなる希望』のビジュアルに限りなく近い姿で、ふたりはスクリーンへの復活を果たしたのである。
今回、『ローグ・ワン』でCGを手がけたILM(インダストリアル・ライト&マジック)社のCGチームが、ABCニュースの番組「ナイトライン」で、この“復活劇”の秘密を語った。
超困難な復活劇
ILM社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーにして、『ローグ・ワン』では原案・製作総指揮・視覚効果スーパーバイザーの三役を務めたジョン・ノール氏は、レイアとターキンが『ローグ・ワン』には欠かせなかったと語っている。
「この映画の本質は『エピソード4』にきちんと繋がることだ。だから(デス・スターの)設計図を手にしたレイアで映画が終わることが重要だった。ターキンも『エピソード4』やデス・スター計画の重要人物だ。しかもこの映画では、デス・スターの恐ろしさとその意味、また反乱同盟軍がその脅威にどう反応するかが描かれている。ターキンがその一部であることは大切なことだったのさ」
しかし『新たなる希望』でターキン総督を演じたピーター・カッシングは1994年に病没しており、本人がターキンを再演することはできなかった。そこで製作チームが選んだのが、“CGでカッシングを蘇らせる”という方法だったのである。むろん、この方法は一筋縄でいかないことは当初から分かっていた。ノール氏はインタビューでこう語っている。
「すごいプレッシャーだった。つまりデジタル・ヒューマンだ、コンピュータ・グラフィックでは最も難しいことだよ」
頭部はCG、身体は人間
さきほど「代役を立てるという方法ではない」と書いたが、厳密にいえばこれは間違いだ。製作陣が採用したのは、実際の役柄を俳優に演じてもらい、その頭部をCGに作り直すという方法だった。すなわち頭部はピーター・カッシングや19歳当時のキャリー・フィッシャーだが、身体は生身の人間なのだ。
『ローグ・ワン』でターキン役に抜擢されたのは、イギリスで活躍する俳優ガイ・ヘンリーだった。
故ピーター・カッシングとヘンリーには、体格がよく似ている以外にも共通点があった。ギャレス・エドワーズ監督は、キャスティングのためにヘンリーの映像を観た感想をこう語っている。
「彼(ヘンリー)はとにかくピーター・カッシングに似ていた。ヘンリーは、若きシャーロック・ホームズ役をイギリスで演じたことからテレビでのキャリアをスタートさせている。その時、役柄を理解するために、彼はカッシングが演じたシャーロック・ホームズ(1965年)をすべて観ていたんだ。[中略]それから年月を経ても、彼の中にはカッシングがいた。映像を観て、すぐに(プロデューサーと)顔を見合わせたよ。“見つけた”と思った」
かつてシャーロック・ホームズという同じキャラクターを演じた二人の俳優は、こうして『スター・ウォーズ』で再会することとなった。ターキン役を演じるにあたって、ヘンリーは『新たなる希望』のカッシングを何度も観て研究したという。どんな声を出すのか、どんな身ぶりなのか……。
ちなみにヘンリーと製作チームは、どこかで見たことのあるシーンをテストとして撮影したようだ。
もはやCGを使わなくても十分にターキンなわけだが、ピーター・カッシング演じるターキンの復活は、こうしてヘンリーがターキンを演じるところから始まった。彼はターキンの衣装を身につけ、ヘッドマウント・カメラと呼ばれる機材を頭部にセットして、撮影に臨んでいる。