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【ネタバレ】映画『ブラック・ウィドウ』で考えるナターシャの「◯◯問題」 ─ 『アベンジャーズ/エンドゲーム』時に話題

ブラック・ウィドウ
(c)Marvel Studios 2021

この記事には、映画『ブラック・ウィドウ』のネタバレが含まれています。

ブラック・ウィドウ
(c)Marvel Studios 2021

ブラック・ウィドウの登場前作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)では、サノス戦で命を落としたアイアンマン/トニー・スタークのささやかな葬儀のためにあらゆるヒーローや関連キャラクターが集結していた。しかし、トニーと同じく究極の犠牲を払ったナターシャ・ロマノフの葬儀は行われていない。

これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開当時、「葬儀問題」としてファンの間で物議を醸していたものだ。なぜトニーは感動的に送り出したのに、ナターシャの死を悲しむ時間を設けることができなかったのか?

『エンドゲーム』公開当時、同作脚本家のスティーブン・マクフィーリーは「みなさんが(ナターシャの死を)きちんと悲しむ時間がないことを心配していました。それが一番つらかった」と認める一方、同脚本家クリストファー・マルクスは「トニーには葬儀のシーンがありますが、ナターシャにはありません。ある側面でいえば、それはトニーが極めて著名な人物だから、ナターシャが常に影の世界を生きていたからでもあります。葬儀を描くことが、必ずしもキャラクターにとって誠実なこととは限らないのです」と説明していた。同作ジョー・ルッソ監督も「おそらく彼女の葬儀も行われたのでしょうが、この映画では描かれていません。今後の映画に登場するのかもしれませんね」と後続作に任せていたが、結局のところ『ブラック・ウィドウ』でも決定的な葬儀シーンは登場していない。

同役を10年にわたって演じ続け、ナターシャのことを誰よりも知るスカーレット・ヨハンソンは、『ブラック・ウィドウ』ケイト・ショートランド監督に「ナターシャは、きっと公的な葬儀を嫌ったでしょう」と伝えたそうだ。映画のポスト・クレジット・シーンでは、“妹分”のエレーナがナターシャの墓地を訪れている。「彼女がプライベートな場所、どこかの田舎に葬られていたら完璧だと考えました」と、ショートランド監督はその意図を米Varietyに明かしている。

はたして、ナターシャの葬儀は“親族”のみで執り行われていたのだろうか?その様子を想像すると、あまりに切ないものがある。ナターシャは惑星ヴォーミアで崖から身を投げて死亡しており、クリント・バートンは彼女の遺体を回収できていないはずだ。となると葬儀は、遺体も遺骨もない状態で行われなければならない。エレーナが訪れていたナターシャの墓も言わば形式的なものであり、おそらく埋葬されているものは遺品なのだろう。

その葬儀に、“父”アレクセイや“母”メリーナは訪れたのだろうか?人知れず英雄的な死を遂げたかつての“娘”に、家族はどんな言葉を贈ったのだろう?

ところで『ブラック・ウィドウ』のポスト・クレジット・シーンでは、ナターシャの墓石のもとでエレーナが姉妹の証である口笛を優しく吹く。実はここで、ナターシャが何らかの形で応答する(ように感じさせる)演出が検討されていたそうだ。おそらく、どこかから同じ口笛が聞こえるとか、そこまで直接ではなくとも、そよ風が吹くとか、小鳥がさえずるとか、そういった具合だろう。これは、ずっと影で生き、苦しい戦いを続けたナターシャが、ついに現世の重圧から解き放たれ、穏やかに見守っていることを感じさせるような演出になっていたはずだ。

しかし、実際の導入は見送られている。「私にも口笛は聞こえました。取り入れてはいませんが、そういう話はありました」と、ショートランド監督は明かしている。もしもこのエモーショナルな演出を採用していたら、きっと“ヴァル”のデリカシーのない登場とも噛み合わなくなっていたことだろう。

『ブラック・ウィドウ』は2021年7月8日(木)映画館 & 7月9日(金)ディズニープラス プレミア アクセス公開。※プレミア アクセスは追加支払いが必要です。

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Source:Variety

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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