【解説】ヘンリー・カヴィル、スーパーマン卒業報道で生じた謎 ― 完全否定なし、DC映画の奇妙な人事、後任者起用の可能性

DCコミックス原作映画『マン・オブ・スティール』(2013)や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)でスーパーマン役を演じたヘンリー・カヴィルが、ワーナー・ブラザースとの契約破綻のためスーパーマンを卒業する……。

2018年9月13日(日本時間)未明にインターネットを突如駆け巡ったこの報道は、米国はもちろん世界中のファンを戸惑わせた。その後、ヘンリーのマネージャーであるダニー・ガルシア氏やワーナーが相次いで声明を発表、ヘンリー本人がInstagramに映像を投稿しているが、一連の動きには一定の疑問が残る。本記事では報道を読み解きながら、情報をひとつひとつ整理していきたい。


ヘンリー・カヴィル、スーパーマン役を卒業か ─ 米報道、マネージャー、ワーナー、ヘンリーは否定の意思表明

スーパーマン卒業報道、完全否定されず

ヘンリーのスーパーマン卒業報道を最初に伝えたのは、米The Hollywood Reporterだった。同誌はヘンリーとワーナーの契約が破綻したことを伝え、その背景にはワーナーがスーパーガールの映画化を進めていること、今後数年間にスーパーマンの単独映画を制作する予定がないこと、そしてヘンリーのスケジュールの問題があると記している。

この報道にすぐさま追随したのが、DeadlineVarietyというハリウッドの大手メディアだ。Deadlineは「ワーナーによるDC映画でヘンリーがスーパーマンを再演することはないだろう」、Varietyは「スーパーマンとしてのヘンリー・カヴィルの将来に暗雲」と記している。ひとまず留意したいのは、The Hollywood ReporterとDeadlineが“ヘンリー卒業”、Varietyが“今後が不透明”という論調になっており、それぞれの結論は若干異なることだろう。のちにマネージャーとワーナーが声明を発表してもなお、各メディアは声明内容を付記することはあっても、自社の報道をまったく訂正していない

それもそのはず、マネージャーとワーナーによる声明文は、少なくとも現時点では各報道を完全に否定するものではなかったのだ。
マネージャーのダニー・ガルシア氏は、ヘンリーの今後については「(スーパーマンの)マントは今も彼のクローゼットにありますよ」、ワーナーとの関係については「DCユニバースを発展させる限り、これまでも、これからも私たちのパートナー」だと抽象的な表現にとどめた。さらにワーナーの場合、「スーパーマン映画の今後の予定は現在ございません」と報道内容を一部認めているほか、ヘンリーに対しては「多大な敬意と素晴らしい関係性がございます。それは変わらず続くものです」と友好関係を強調しながらもスーパーマンとしての今後には一切言及していない。
すなわち、ヘンリーのマネージャーもワーナーも、ともに「ヘンリーが今後もスーパーマンを演じる」とはひとことも明言していないのである。

映画『マン・オブ・スティール』のスーパーマン

『マン・オブ・スティール』 ©2013 Warner Bros. Ent. Inc. All Rights Reserved. MAN OF STEEL and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.

DC映画をめぐる複雑な人事

思えばワーナー・ブラザースとDCコミックスは、ここしばらく複雑な人事を見せ続けている。「ヘンリー・カヴィルがスーパーマンを卒業する」との報道に「それはないだろう」と言いがたいのは、そうした動きの多くが、いまだはっきりとした解決や結果を導き出していないためでもある。

これまでで最大の人事は、2018年1月に発表されたDC映画ユニバースを指揮するプロデューサーの交代だろう。『ジャスティス・リーグ』(2017)までを統括したジョン・バーグ氏が離脱、後任者には『死霊館』シリーズや『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)などのウォルター・ハマダ氏が就任し、新たな方向性でユニバースは仕切り直しの最中だとされる。

また同じく大きな話題となっているのは、『バットマン vs スーパーマン』『ジャスティス・リーグ』などでバットマンを演じたベン・アフレックの今後だ。単独映画『ザ・バットマン(邦題未定、原題:The Batman)』で監督・脚本・主演を兼任する予定だったが、監督・脚本を降板し、2018年9月現在は出演するかどうかも定かでない。後任者として監督・脚本を務めるマット・リーヴスは若きブルース・ウェインを描く意向ともいわれており、「アフレックの再登板はない」との見込みも強い状況だ。

さらにいえば、『ジャスティス・リーグ』のザック・スナイダー監督が、今となってはやや不可解な形で同作を離脱していたことも記憶に新しい。愛娘の死を受けて企画を離脱したザック監督は、実際には発表以前に企画を降りていたとの情報があるほか、なぜかジョス・ウェドンが仕上げた映画の完成版を一度も観ていない。ファンが求めている『ジャスティス・リーグ』の「スナイダー・カット(ザック監督による編集版)」の有無についても、諸説あるが真相は不明のままだ。

 

こうした経緯を踏まえれば、今回の「ヘンリー・カヴィル、スーパーマン卒業報道」は、同じく真相こそ不明ながら、ベン・アフレックと同じく今後の登板が不透明になったことを示すものとしては十分だろう。現にワーナーは、スーパーマンの単独映画を予定していないことを認めているのだ。

スーパーマン後任者、マイケル・B・ジョーダン登板説

そんな中、Deadlineは気になる情報を伝えてもいる。ワーナーはスーパーマンというキャラクターを新たな方向性で展開させることを以前から希望しており、新キャストとして『ブラックパンサー』(2018)のエリック・キルモンガー役で知られるマイケル・B・ジョーダンを起用することを検討しているというのだ。これが事実だとすると、実現すれば史上初の黒人スーパーマンが誕生することになる。

これまた「それはないだろう」と言いがたいのは、すでにワーナーとDCは、ヘンリーを正式に卒業させることなく新たなスーパーマンを登場させられるシステムを開発しているためである。
現在、ワーナー&DCは『マン・オブ・スティール』から始まったDC映画ユニバースとは異なる新ブランドを準備しており、第1弾としてホアキン・フェニックス主演『ジョーカー(邦題未定、原題:Joker)』を進行中。この作品はDC映画ユニバースとは世界観を共有しないため、ホアキン演じる“狂気の犯罪王子”ジョーカーは、『スーサイド・スクワッド』(2016)のジャレッド・レト版ジョーカーとは別人なのだ。
この方法を利用すれば、ヘンリー演じるスーパーマンではない新たなスーパーマンをスクリーンに登場させることも可能だろう。ただしワーナーは「スーパーマンの映画の予定はない」と明言しているため、仮にそうした動きがあるにせよ、それはすぐの話ではなさそうだが……。

なお一連の報道と声明発表ののち、ヘンリー本人はInstagramにて“無言のメッセージ映像”を投稿している。この映像が報道を否定するものなのか、はたまた無言による肯定を意味するものかはわからない

Sources: THR, Variety, Deadline

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THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすくお伝えしたいと思っています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp へ。

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