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【ネタバレ】『キャプテン・マーベル』結末を完全解説 ─ スクラル人の設定からラストシーン秘話、今後の展開まで

キャプテン・マーベル
© 2019 MARVEL Supplied by LMK 写真:ゼータイメージ

映画『キャプテン・マーベル』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の11年間を締めくくる『アベンジャーズ/エンドゲーム』の直前作であり、新ヒーローのキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベルを世界中の観客に紹介する作品であり、これまでに仕掛けられたMCUの謎を解く物語であり、そして『エンドゲーム』後のMCUを予感させる一本だ。

このように整理してみると「いくらなんでも情報量が多すぎる」わけだが、求められるハードルを超えながら、作品の独立性をきちんとキープしてみせるマーベル・スタジオのストーリーテリングは本作でも健在。そこで本記事では、鮮やかに織り上げられた『キャプテン・マーベル』という作品の役割について、ラストシーンやエンディングの意味を通して読み解いていくことにしよう。

この記事には、映画『キャプテン・マーベル』のネタバレが含まれています。

キャプテン・マーベル
ⒸMarvel Studios 2018

スクラル人のどんでん返し、思わぬ結末

『キャプテン・マーベル』のストーリーには、後半で一種の“どんでん返し”が仕掛けられている。作品冒頭からキャロル・ダンヴァースが敵だと思って戦っていたスクラル人が、実は世界を征服しようとたくらむ種族ではなく、住み処を追われて行き場を失った“難民”だったことが明かされるのだ。スクラル人を追い込んでいたのは、キャロルが自分の味方だと信じていたクリー人たち。特殊部隊スターフォースを率いるキャロルの師ヨン・ロッグ、クリー帝国を統治するAIのスプリーム・インテリジェンスは、「スクラル人は世界征服をもくろむ凶悪な種族」だとキャロルに信じ込ませ、その身に宿されたスーパーパワーを利用していたのである。

キャプテン・マーベル
ⒸMarvel Studios 2018

この展開は、これまでコミックを愛読してきたファンにとっては特に大きなサプライズとなっただろう。1962年にコミックに登場した「スクラル人」は、別人に変身する能力をもつ緑色のエイリアンで、ヒーローやクリー人とことあるごとに衝突してきた(映画のモチーフとなっている「クリー/スクラル戦争」もコミックの有名エピソードだ)。2008年のストーリー「シークレット・インベージョン」では、スクラル人がヒーローに成り代わって地球侵略を進めていたという驚愕の展開が描かれたことも記憶に新しいゆえ、「スクラル人=悪役」という印象はコミックファンこそ強かったにちがいない。

映画の後半、キャロルはクリー人の思惑を知り、スクラル人のタロスと手を組むことになる。キャロルはマー=ベルのラボに隠れていたタロスの家族や仲間を逃がすと、ヨン・ロッグやロナンらクリー人を地球から追い払い、最後にはスクラル人の「新たな家」を見つけるべく宇宙へと旅立っていくのである。

タロスという存在に込められたテーマ

『キャプテン・マーベル』のアンナ・ボーデン&ライアン・フレック監督は、なぜコミックでおなじみのスクラル人の設定を変更したのか。その理由としてアンナ監督は、本作が「キャロル・ダンヴァースが自分自身の人間らしさを知るまでの」物語だからと説明している。

(自分自身の人間らしさを知るということは)誰かの中にある人間らしさを認めるということでもあります。それが、自分の予想しなかった人物であっても。キャロルが自分の過ちに気づき、その事実と向き合わなければならなくなることは、非常に説得力があると思いましたね。観客のみなさんがひとつの予測を立て、それが裏切られるという、(キャロルと)同じ経験を作り出すことができれば、さらに大きな説得力になるだろうと思いました。」

マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、スクラル人を新たな解釈で描いたのは、「耳のとがった緑色のエイリアンについての予想を裏切る」ため、そして「ベン・メンデルソーンは悪役を演じるだろうという予想を裏切る」ためだったと述べている。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)や『レディ・プレイヤー1』(2017)などで悪役を演じてきたベンは、タロスというキャラクターを前半はヴィランとしての魅力たっぷりに、後半は穏やかで温かみのある人物として、キャロルの人間味をふくらませるきっかけとなる二面性を丁寧に演じ分けている。

ベン・メンデルソーン
ベン・メンデルソーン Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35387096893/

オーストラリア出身のベンは、タロスを演じる際にオーストラリア訛りをせりふに取り入れた。アンナ監督によると、これはタロスとケラー(ニック・フューリーの上司)を区別するためのものであり、同時にタロスというキャラクターをよりエモーショナルに見せつつ、ベンの求める人物像に近づけるための決断だったとのこと。ちなみに余談だが、劇中で猫のグースに怯える演技を見せていたベンは、カメラが回っていない時には誰よりも猫をかわいがっていたそうだ。

ネコチャン

「シークレット・インベージョン」実現の可能性は

『キャプテン・マーベル』における真のヴィランがクリー人であり、スクラル人は故郷を失った難民だったという設定は、今後のマーベル・シネマティック・ユニバースにも大きな影響を与えることになりそうだ。『キャプテン・マーベル』でクリー/スクラル戦争が描かれると判明した時点でコミックファンが予想した「シークレット・インベージョン」の実現、スクラル人が変身して地球を侵略するというストーリーの映画化は行われるのだろうか?

現在、ケヴィン社長は「シークレット・インベージョン」映画化の可能性をまったく否定していない。

すべての人間が悪人ではないのと同じで、すべての人間が善人というわけではありません。スクラル人の中にも、さまざまな倫理観があると思います。彼らが自分たちにできることを実行すれば、それは非常に魅力的な出来事となるでしょう。(スクラル人の)コンセプトを紹介するのは楽しかったですよ、これからどうなるんでしょうね。」

その一方、『キャプテン・マーベル』の結末の時点では、クリー人の“その後”も不明瞭だ。ヨン・ロッグはどこへ行ったのか、彼らが再び戻ってくることはあるのか。いずれにせよ『アベンジャーズ/エンドゲーム』のあと、クリー/スクラルのさらなる物語が描かれることはおおよそ間違いないだろう。そしてもちろん、キャロル・ダンヴァース自身の物語も。

「最後(ポストクレジットシーン)で見たように、彼女は(『アベンジャーズ/エンドゲーム』で)現在の私たちと同じ状況にあります。ですが、タロスと一緒に飛び去ってからフューリーの呼び出しに応えるまでの年月には、さらなるストーリーテリングの可能性がたくさんありますよ。」

ポストクレジットシーンの解説はこちら

エンディングに追加されたシーン

ところで『キャプテン・マーベル』の編集を担当したデビー・バーマン氏によれば、「キャロルがタロスたちスクラル人の家を探すため彼方へ飛び去る」というエンディングは、そのものが映像として描かれていたわけではなかったようだ。エンディングについていくつか提案したというデビー氏は、当初検討されていたラストについて説明している。

「キャロルが一人で宇宙へ飛び去っていく結末でした。ちょっと妙だな、と思いましたね。つまり、彼女はどこへ行ったのか、何をしていたのか、ってことなんです。私たちは、キャロルがいなくなり、非常に長いあいだ姿を見せなかったことについて、きちんと説明できる強いビジュアルが必要だと思いました。そこで、タロスと彼の家族が宇宙船に乗って彼女を待っているという場面を追加したんです。そして、みんなで一緒に飛び去っていく。」

おそらく当初のラストは、キャロルとマリア・ランボー、その娘モニカが言葉を交わしたあと、空へとキャロルが消える場面で終わっていたものとみられる。しかし宇宙でタロスたち一家と再会したことで、キャロルのミッションはより具体的に示されることになった。

「(シーンを足したことで)キャロルにも目的がはっきり与えられたし、彼女が自分の新しい生活を、ある特別な任務のために地球に置いていったことがわかりやすくなりました。キャロルには気にかけていた友人が(地球に)いたわけですしね。彼女の最後のシーンは、より心に響くもの、より映画を締めくくるものになったと思います。」

ニック・フューリーとアベンジャーズ計画

1995年にキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベルと出会ったニック・フューリーは、キャロルが地球を去ったあと、S.H.I.E.L.D.の自室に戻っている。片目が見えなくなってしまった理由はあまりにあっけなかったが、“犯人”のグースとはどこか仲睦まじい様子だ。しかしキャロルの圧倒的な能力を目の当たりにし、クリー人/スクラル人に出会い、さらにグース/フラーケンというエイリアンまで飼いはじめてしまったフューリーは、もはやかつての彼ではない。

地球に危機が迫っていることを察知したフューリーは、フィル・コールソンに、キャロルと同じようなスーパーパワーの持ち主を集めるというアイデアを明かす。その計画には、キャロルの空軍時代のコールサインである「アベンジャー」をもじって「アベンジャーズ計画(The Avengers Initiative)」という名が付けられた……。

キャプテン・マーベル
MARVEL/PLANET PHOTOS 写真:ゼータ イメージ

MCUの前日譚として、見事な“導入部”を物語に付け加えたラストシーンのアイデアは、脚本の初期段階から欠かせないものとして存在したという。ライアン・フレック監督によれば、ケヴィン社長ほかマーベルの製作チームは「キャロルにはニック・フューリーがアベンジャーズを作るきっかけとなってほしい」という意向だったそう。アンナ監督は、その要望とキャロルのストーリーを結び付けた発想を説明している。

「キャロルが戦争を終える助けとなり、そしてスクラル人の家を見つけることを、実際に彼女がどこかの惑星に降り立ち、文明を築く様子を見せることなく描きたかったんです。そんな大きな任務を成功させられるのか…ということに、私たちの想像力を使えると思いました。そこでキャプテン・マーベル本人のことは横に置きつつも、彼女がアベンジャーズや私たちの知る世界、長年マーベル・ファンが愛してきた世界を触発したのだという存在感を示したかった。それがストーリーにとってふさわしいと思ったんです。ある意味で(物語そのものの結末は)キャロルに託して、映画の最後では彼女がつくった未来を描こう、と。」

映画『キャプテン・マーベル』は2019年3月15日(金)より全国公開中。

『キャプテン・マーベル』公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-marvel.html

Source: Comicbook.com, /Film, Empire(1, 2), ET

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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