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実は怖くね?ガッカリ邦題シリーズ『素晴らしきかな、人生』が、「意味がわかるとミステリー」である3つの理由

まず、この映画を語るに際しては、素晴らしきかな、人生』という邦題と日本人好みに装飾されたビジュアル・イメージの話題を避けて通ることはできない。

何と言っても今作は、キラキラ女子のフェイバリット・ムービー、『プラダを着た悪魔』のデヴィット・フランケル監督作。そして、アクション映画のほかにも『幸せのちから』とか『最後の恋のはじめ方』とか『7つの贈り物』とか、言っちゃあ悪いけど、まあ無難に感動できる「置きに行ったヒューマンドラマ系」によく出てる印象も強いウィル・スミス主演というだけあって、今作は原題の「コラテラル・ビューティー(Collateral Beauty)」から『素晴らしきかな、人生』という、これまた「だいぶ置きに行ったな」と思わせる邦題が与えられる。

おまけに、解釈の余地を許すかのような、白を基調として含みを持たせる本国イメージ・ビジュアルから一転、日本では「この冬、愛が見つかるギフトをあなたに」という、JAバンク冬のキャンペーンみたいなコピーと一緒に、作品には一切関係のない謎の赤いリボンでゴテゴテにラッピングされている。ウィル・スミスの身体には登場人物らがコラージュで配列されていて、ことさら『ラブ・アクチュアリー』のような「ホリデーシーズンのほっこりラブロマンス」をあえて想起させるように仕上げられている。(元のポスターでは、ウィル・スミスの立ち姿を四角形で細分化したデザインになっているが、日本人ではそこにドリーミーな背景を付け加えたため、ウィル・スミスの耳がエルフ族のように切れて光り輝いているのも面白い。)

http://www.imdb.com/title/tt4682786/mediaviewer/rm3414950656
http://www.imdb.com/title/tt4682786/mediaviewer/rm3414950656
jinsei

さらに本邦題は、1946年の名作『素晴らしき哉、人生!(原題:It’s a Wonderful Life)』をコスりに行ったため、映画愛好家の反感を買うことになってしまった。同作はアメリカ映画史上に残る名作として今なお語り継がれており、「たまたま被った」では済まされない事案とされる。両作ともホリデー・シーズンのニューヨークを舞台にしていることから、リメイクかと勘違いする人も多いほど、意図的であることは明らかだ。ね、悲しいよね。

やっぱり、原題ではいけないんでしょうか

もちろん、原題ママの「コラテラル・ビューティー」では何のこっちゃわからず、「素晴らしきかな、人生」という邦題ではじめて作品のイメージを持ってくれる観客もたくさんいるはずだ。でも、本当に原題ではいけなかったのだろうか。

そもそも、”コラテラル(Collateral)”には、“付帯的な、二次的な”という意味を持つ。”Collateral Beauty”には、“美徳”や”すばらしいもの”が、あることを起点に周囲に二次的に広がっていく、という意味が込められている。作品に登場するドミノ倒しはその暗示だろう。ちなみに原題”Collateral Beauty”は劇中でもセリフとして登場するが、字幕では「幸せのオマケ」として訳されていた。

邦題『素晴らしきかな、人生』は、永遠に英語が苦手な僕たち日本人にとって馴染みのない英単語”コラテラル”に配慮してかとも推測できる。だが、戦闘における“副次”被害を描いたアーノルド・シュワルツェネッガーの『コラテラル・ダメージ』(2002年)や、善良なタクシー・ドライバー(ジェイミー・フォックス)が殺し屋(トム・クルーズ)の“巻き添え”で暗殺稼業に加担させられる『コラテラル』(2004年)は原題通りに日本公開されている。それでも、やっぱり『コラテラル・ビューティー』では訴求力に欠けるだろうか…。これ以上は好みの問題なので、何も言うまい。

それにしても、『素晴らしきかな、人生』の邦題と、『ラブ・アクチュアリー』じみた、ほっこりホリデー・ラブロマンス風のビジュアルイメージは、ある一定の観客…とりわけ男性客を遠ざけているように思う。事実筆者も、「あぁ、またウィル・スミスが置きに来たか」「『この冬、愛が見つかるギフトをあなたに』…また愛とかギフトとかそういうやつなんだね」と、スルーを決め込んでいた。公開しばらくが経って、ネットでのレビューを確認する限り悪くなさそうだったので鑑賞に出掛けた所、この作品はビジネスマンやお父さんにこそ観て欲しい内容となっていた。そして、「いい映画だなぁとしみじみ半分、狐につままれたような気持ち半分」の鑑賞感の、不思議な映画であることがわかった。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューさせていただきました。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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