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【インタビュー】ジェイク・ギレンホールはなぜ主演最新作『コヴェナント/約束の救出』を観て自分で泣いたのか?

コヴェナント/約束の救出
© 2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『シャーロック・ホームズ』シリーズや『オペレーション・フォーチュン』のガイ・リッチー監督最新作『コヴェナント/約束の救出』が、2024年2月23日より日本公開となる。

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で長編映画監督デビュー後、『スナッチ』、『コードネーム U.N.C.L.E.』、『アラジン』、『ジェントルメン』など、これまで数々の痛快なアクション・エンターテインメントを世に送り出し、大ヒットを記録してきたイギリスを代表するガイ・リッチー監督。本作『コヴェナント/約束の救出』では、今なお続くアフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリーから着想を得て、今までのフィルモグラフィーとは対照的な、リアルで緊迫感に満ちた壮大な社会派ヒューマンドラマに初めて挑んだ。

主人公のジョン・キンリーには、『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞、『ナイトクローラー』でゴールデン・グローブ賞にそれぞれノミネートされたジェイク・ギレンホール。これまで数多の作品に出演してきた名優が、本作で初めてガイ・リッチーとタッグを組んだ。

2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍のジョン・キンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)は、アフガン人通訳として非常に優秀だが簡単には人の指図を受けないアーメッド(ダール・サリム)を雇う。通訳には報酬としてアメリカへの移住ビザが約束されていた。部隊は爆発物製造工場を突き止めるが、タリバンの司令官に大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全員殺される。キンリーも腕と足に銃弾を受け瀕死の状態となるが、身を潜めていたアーメッドに救出される。アーメッドはキンリーを運びながら、ひたすら山の中を100キロ進み続け、遂に米軍の偵察隊に遭遇する。7週間後、回復したキンリーは妻子の待つアメリカへ帰るが、アーメッドと家族の渡米が叶わないばかりか、タリバンに狙われ行方不明だと知って愕然とする。アーメッドを助けると決意したキンリーは、自力でアフガニスタンへ戻る──。

THE RIVERでは、主演のジェイク・ギレンホールに単独インタビュー。ニューヨークにいるギレンホールとつなぎ、本作の裏話や思い、自身で鑑賞して涙したというその理由、そして役者としての心構えをじっくり聞いた。

『コヴェナント/約束の救出』ジェイク・ギレンホール 単独インタビュー

──『コヴェナント/約束の救出』は、ガイ・リッチー監督作の中でも特にシリアスな作風で、初のミリタリー・アクションとなりました。鑑賞してみて、本質的には友情や絆、約束についての物語であることに感動しました。ジョン・キンリーは完璧主義者のようなところがあり、仲間を失ってストレスを表したり、任務の中で結果を出せずに苛立ったりと、生々しい姿を見せます。そんな彼が、通訳のアーメッドとの出会いを通じて変化していきますね。あなたが演じたジョン・キンリーについて、どういうところが面白いと思いましたか?

確かに、本作は助け合いについての物語です。僕がこの映画で良いなと思ったのは、この二人の人間について、感傷的になることを避けていた点です。この二人は、実はお互いのことに好感を持ち合っているわけでもない。二人はある考え方に縛られているだけで、それはあなたが言ったように、“約束”です。僕は、個々の関係性よりも約束の方が大切なことだと思うし、それは美しいことだと思います。

ジョン・キンリーについて付け加えると、彼は常に善の行いをしようとしているが、しかしそうは見えない人物です。とても人間臭くて、そんなところに僕は感動したんです。この役を演じて本当に良かったと思うのは、ヒーロー像みたいなものを演じる必要がなかったこと。彼は複雑な人間であるという、ただそれだけなのです。

コヴェナント/約束の救出
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──あなたは本作のラストシーンを見て、泣いたそうです。なぜ泣いたのだと思いますか?

泣いた理由はいくつかあると思います。まず、そもそも僕は本作のストーリーに最初から感動していました。本作は、善人であれという陳腐なテーマの作品ではありません。二人の男が、お互いのために本当は頑張りたくないと思いつつも、善いことを行おうとして、複雑な関係性になるという話です。非常に人間的だと思いました。

僕は、「あなたは完璧である必要はないんだよ」という考えが好きなんです。人間は、とても複雑でいてもいいわけだし、失敗を犯してもいいわけです。それでも、善い行いをしようとするものなのだと。僕は本作の、そんなところに感激したんです。

それからもう一つ。ガイ・リッチー監督とは今では良き友人となることができましたが、彼がこれまでの過去作とは違う、新しいタイプの映画を本作で作ったんだということにも、とても感動したんです。良い映画を作るというのは、とても難しいこと。でも彼は、それを成功させましたよね。

僕はラストシーンを見て、“幸運だ”と感じたんです。僕はこれまで、たくさんの映画に携わってきました。それでね、ある映画がうまくいった時、自分でもそれが何故なのか、完全にわからないこともある。あるいは、これは絶対にうまくいくぞと最初から感じていたのに、うまくいかなかったということもある。そして本作で感激したのは、ガイが自身の慣れ親しんだ領域から抜け出して、映画作りに体当たりで挑んだという事実。そのことに、僕は彼のいち友人として感動してしまって。だから僕は泣いたんですね。

──あなたが軍人役を演じた映画『ジャーヘッド』(2005)から約20年が経ちますが、今も軍人としての動きを身体で覚えていましたか?

(もう20年近く経つのかと、目をグルリとさせてから)『ジャーヘッド』以降も、『エンド・オブ・ウォッチ』(2012)では軍人出身の警察官を演じました。その後も、キャリアを通じて様々な役を演じてきました。なので、軍人を演じることは、不慣れというわけではありませんでした。素晴らしい方達にも指導をしていただきましたし。これまでの知識を、本作のために総動員した感じですね。

コヴェナント/約束の救出
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──トラウマを抱えた役を演じることも多いと思います。例えば『サウスポー』(2015)や『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(2015)などがありましたね。こうした役を演じるときに、意識することや注意することはありますか?

僕は複雑さのあるキャラクターを演じるのが好きなんです。人間とは、誰だって複雑なものです。だから、僕が俳優としてすべきことは、自分が感動した物語に向かって突き進むだけだと思います。それこそがキャラクターよりも大切なことだと思います。でも、確かに僕はこれまで、不名誉な立場で苦労している役をたくさん演じてきましたね。そのほうがドラマチックでしょう?

──あなたがマーベル映画で演じたミステリオがすごく好きで、また再登場したらいいなと思っていたんですが、どうやら本当に死んだっぽいので……。

アハハ(笑)。本当に死んだ(笑)。

──マルチバースがどう働くかはわからないですが(笑)。何か、他のフランチャイズに出てみたいというのはありますか?例えばスター・ウォーズやDCユニバース、ワイルド・スピード、ジュラシック・ワールドなど、新作がたくさんありますが。

それが『ロードハウス/孤独の街』(※ギレンホールの出演次作)になるといいな。

──『ロードハウス/孤独の街』はフランチャイズや続編ができるタイプの映画になりそうですか?

どうなるか、様子見ですね(笑)。

──ガイ・リッチーの映画では、何がお好きでしたか?

『ロック・ストック・トゥー&スモーキング・バレルズ』(1998)ですね。

──ガイ・リッチーとの仕事や、彼の姿勢について、刺激を受けたことはなんですか?

柔軟性があるということですね。彼は自分で脚本も書くし、監督もやる。常にクリエイティブなアイデアにオープンでいるんです。すごくユニークで楽しかった。彼にアイデアを提案すると、きちんと話を聞いてくれて、議論してくれます。彼のいる現場は本当に楽しくて、そんなことは稀ですね。

──あなたが出演作を選ぶときの基準はなんですか?

とてもシンプルです。映画制作とは、しばしば監督が主体となるものです。だから、まず第一に監督が誰か。二つ目は、ストーリーに心を動かされるかどうか。そして三つ目はキャラクターです。キャラクターがストーリーの中にどうフィットしているか。僕はその順番で考えています。

コヴェナント/約束の救出
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──『コヴェナント/約束の救出』の劇中では、「俺の中に残っているものがある(There is a hook in me…)」という象徴的なセリフが登場します。本作の撮影を通じて、良い意味であなたの心に残ったものはなんでしたか?

ガイと友情。それが心の中に残っています。オフの日にも一緒に出かけましたね。

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『コヴェナント/約束の救出』は2024年2月23日、日本公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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