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『ダークナイト』ジョーカー役ヒース・レジャー、尋問シーンでクリスチャン・ベールと初共演だった ─ なぜヒースは出演を引き受けたのか

ダークナイト
©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

いまや伝説のコミック映画として語られる、クリストファー・ノーラン監督作品『ダークナイト』(2008)。DCコミックス屈指のヒーロー&ヴィラン、バットマンとジョーカーがスクリーンで対決した本作では、クリスチャン・ベールとヒース・レジャーという2大俳優が文字通り演技の激突を見せる。驚くべきことに、クリスチャンとヒースが撮影現場で初めて共演したのは、劇中でも特に激しい直接対決が繰り広げられる尋問シーンだった

The Hollywood Reporterでは、2008年の公開当時、クリスチャンがインタビューで語ったエピソードが明らかにされている。

クリスチャン:「初めて一緒に撮ったのは取調室のシーンで、(ヒースを)ものすごい俳優だと思いましたよ。まるごと役柄に身を捧げているし、クリス(クリストファー・ノーラン)が作りたいトーンをしっかり理解している。[中略]バットマンはジョーカーを攻撃し始めて、“こいつは普通の敵じゃないぞ”と気づきます。殴れば殴るほど、彼は面白がるし、また楽しんでいるんです。

ヒースも(ジョーカーに)そっくりでしたね、僕のことをけしかけてきて。“本当に殴る必要はないよね、殴らなくてもそう見えるから”と言うと、彼は“殴れよ、殴れ、殴れ…”って。ヒースは自分を痛めつけていました。セットにあったタイルの壁が割れたりへこんだりしていたのは、彼が自分の身体を壁に叩きつけていたから。彼の献身ぶりは完璧でしたよ。」

ヒースは本作の完成を待たず、2008年1月にこの世を去った。したがってヒース自身による『ダークナイト』やジョーカーへのコメントは少ないが、2007年、撮影終了後のヒースがジョーカーについて振り返っているインタビューは存在する。そこでヒースは、「出演のオファーがあった5秒後には、どう演じるべきなのか分かっていた」と述べ、出演を引き受けた理由を話しているのだ。

ヒース:「『バットマン ビギンズ』がすごく面白かったし、(出演を)断るには、ジョーカーという役が良すぎました。だけど、もしもティム・バートンが監督だったら引き受けなかったでしょうね。ティム・バートンの世界(編注:1989年『バットマン』のこと)でジャック・ニコルソンが演じたものに挑もうとか、ましてや太刀打ちしようとするなんて犯罪ですよ。

それで、クリス(ノーラン)と会った時に彼の考えが分かりました。彼は僕のために世界を用意してくれていたんです。(『バットマン ビギンズ』で)観た世界は、僕が入る世界なんだって。新鮮な解釈もしていいんだと分かったんです。僕がこっそり考えていたことも、クリスが求めていたことと同じでした。アイデアを話し合ったら、2人とも同じことを考えていたんです。」

ヒースは当時のインタビューで、ジョーカーについて「今までで一番楽しかった役だし、今後もずっと一番楽しい役でありつづけると思う」と語った。バットマンとして対峙したクリスチャンは、ヒースと共演しての印象も回想している。

クリスチャン:「僕たちは、役者が“正常じゃない役柄を大げさに演じるのは楽しい”と言うのは好きじゃない。だから今回もシリアスなドラマとして取り組み、役に入ったらそのままでした。そうすることが好きだし、合理的じゃないから楽しい。そして、そのことを非常にシリアスに捉える。ヒースもまさにそういう人で、メイクをして衣裳を着たら、ずっとその役のまま。だけどそうじゃない時は、とても楽しい友人でしたよ。」

ダークナイト
©2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

“ずっと役のままだった”というヒースの演技について、ノーラン監督は、特殊メイクの難点すら役柄に取り込む技術に称賛を贈った。ヒースは下唇に特殊メイクを施していたが、このメイクが時々はがれることがあり、ヒースは舌でメイクを貼り直したり押さえたりしていたというのだ。撮影が始まって数週間後、監督は「ヒースがそれを役に取り入れていることに気づいた」という。特に驚いたのは、メイクの事情で始まった動きさえ、すべてジョーカーという役から生まれたように見えること。「俳優の事情ではなく、リアルな人間を演じているからこそだと思えるんです」

ちなみにバットマン役のクリスチャンは、「ヒースに食われてしまうという怖さはなかったですか?」との質問に、「いやいや、まったく」と答えている。それどころか、「僕はそれこそがバットマン映画の問題だと思っていますから」とまで述べているのだ。

クリスチャン:「コミックを読んだ後でさえ、僕は(バットマンを)まったく魅力的に思ったことがないんです。コミックでは史上最も魅力的な男として描かれていますけどね。『バットマン ビギンズ』では、彼をただの実業家に引き戻したように思います。だから、彼が別のキャラクターと競り合うことには何の問題もない。むしろ、魅力的なキャラクターと同じシーンに登場することが、映画をよりよくする唯一の方法だと思うんです。」

映画『ダークナイト』ブルーレイ&DVDは発売中。

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Source: THR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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