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【解説】米ディズニー、21世紀フォックス社と買収交渉 ― スター・ウォーズ、マーベル映画の今後はどうなる

ディズニー

ウォルト・ディズニー・カンパニーが、21世紀フォックス社に対して事業の買収を交渉していたことがわかった。2017年11月6日(現地時間)に米CNBC局が第一報を伝えており、業界には大きな衝撃が走っている。
CNBCによると、ウォルト・ディズニーは過去数週間にわたって21世紀フォックス社との交渉に臨んでおり、現時点で交渉は行われていないという。

21世紀フォックス社といえば、多くの大作映画を世に送り出すスタジオ「20世紀フォックス」や、テレビネットワーク「FOXネットワークス・グループ」を所有する巨大企業である。報道によると、ディズニーは映画事業やテレビ事業の多く、またイギリスやアジアで衛星放送を実施するスター社&スカイ社の買収を見込んでいたということだ。買収の対象でなかったとみられるのは、ニュース&ビジネスチャンネルやスポーツチャンネル、また各地の放送局だという。

CNBCによると、ディズニー&21世紀フォックスの買収交渉は「現在は行われていない」ものの、今後も「断続的に行われる可能性がある」という。ただし米経済誌ブルームバーグが関係者から入手した情報によれば、両社の話し合いは「これ以上行われない」ということだ。どちらが真実なのかは不明であり、状況を引き続き注視するほかない。なお今回の報道を受けて、21世紀フォックスの株価は9.9%、ウォルト・ディズニーの株価は約2%上昇している。

もし実現したら?マーベルや『スター・ウォーズ』の今後

ディズニーがなぜ21世紀フォックスの買収を検討するのか、その金額はいかなるものだったのか、そうした情報は現時点では一切伝えられていない。しかしこうした動きの背景には、AmazonやAppleといった企業が独自作品の製作へと本格的に乗り出し、Netflixが全世界を対象にオリジナル作品を発信し続けるなど、メディアやコンテンツと消費者の関係が劇的に変化していることがあるだろう。

すでにディズニーは独自の映像配信サービスを開始することを明らかにしており、Netflixから自社コンテンツをすべて引き揚げる方針を決定している。ここで21世紀フォックス社のテレビ事業・映画事業を買収することができれば、同社のサービスは大量のコンテンツを一挙に手にすることになり、ディズニー・ファンだけでなくより広い層へとアプローチすることが可能となるわけだ。

https://theriver.jp/us-disney-streaming-service-2019/

その一方で、ディズニーにとって20世紀フォックスという映画スタジオは、自社に関係する有力コンテンツを多数擁している企業でもある。
2009年にディズニーはマーベル・エンターテインメントを買収して自社傘下に置き、その後はマーベル・スタジオによるマーベル・シネマティック・ユニバース作品としてコミックの映画化を進めている。ただし、買収時点で映像化権利が20世紀フォックスに移っていた『X-MEN』や『ファンタスティック・フォー』などについては、その後も20世紀フォックスにて映画化が進められている状況だ。
また2012年、ディズニーは『スター・ウォーズ』シリーズなどを製作するルーカスフィルムも買収している。過去に製作された『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)から『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)の配給権・販売権は20世紀フォックス社が現在保有しているが、『エピソード4/新たなる希望』を除く5作品の権利は2020年5月にディズニーへ移る予定である。

ファンから見ると同じマーベル・コミック映画、同じ『スター・ウォーズ』にもかかわらず、こうして企業をまたいで展開してきたシリーズ/フランチャイズには時折“壁”の存在が見え隠れしていた。
たとえばマーベル映画の場合、『X-MEN』や『ファンタスティック・フォー』のキャラクターは『アベンジャーズ』(2012)をはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバース作品に登場することができない。これについては、ファンの間でも長らく「なんとか対策を!」という声が寄せられてきた(ちなみにマーベル・コミックの重鎮であるスタン・リーは、この買収交渉を指していたのだろうか、全キャラクターの合流を以前から示唆していた)。
一方で『スター・ウォーズ』の場合、ファンにとっての問題は現状生じていないが、ディズニーからすると「確実に儲かるコンテンツがうまく手に入らない」状況であることは間違いないだろう。また2020年以降、『エピソード4/新たなる希望』の権利だけが20世紀フォックス社に残ることで、シリーズ通しての再上映や再ソフト化が難しくなる可能性も高いのである。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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