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【最速レビュー】『ドクター・ストレンジ』という合法ドラッグ映画は、ヒーローアクションの定義を永遠に変えた【ネタバレ無し】

このように、マーベル・シネマティック・ユニバースのヒーロー映画は、ただ単に友情、努力、勝利を掲げ、殴って撃って爆発して、という領域を脱出し、もっと違う次元であったり、科学であったりといった世界での戦いを描こうとしている。そして恐ろしいことに、マーベルの連中はそのやり方を熟知しているようだ。彼らは『ユニバース』の概念の強大さをずっと昔からよく知っており、長きに渡って作品のキャラクターたちを守り、ファンがファンでいることを全力で肯定し続けてきた。彼らは、キャラクターとファンらを新しい世界にいざなおうとしている。ドクター・ストレンジ』は、観客を収容したままその高次元へ飛び立った、純エンターテイメント作品としては最初のスペース・シャトルである。そのシャトルの小窓から見下ろす俗世界は、もはや古いモノクロ映画のように色彩を失っているかもしれない。『ドクター・ストレンジ』鑑賞後、あなたはあらゆる自然の摂理に新たな解釈を見出したような気になり、おぼつかない足取りで劇場を出て来るだろう。この映画の後に出てくるエンターテイメント映画は相当なプレッシャーであるに違いない。

ギャグとユーモア

予告編を観ると、『インセプション』や『インターステラー』のようなシリアスな作風を思い浮かべるかもしれない。しかし、そこはマーベル作品らしく、要所要所で肩の力を抜いてくれるギャグ要素も多く見られる。

主人公のスティーブン・ストレンジは傲慢で皮肉屋。どんなときも余裕ぶって冗談を飛ばしている。このキャラはトニー・スターク的でもあるが、ストレンジはもっと英国っぽい。スーツを決込み、高級時計をチラリと光らせて高級スポーツカーを走らせる彼の姿はジェームズ・ボンド的でもある。

周囲の人物もちょっと天然だったり、逆に冗談が通じなかったりする人間性がしっかり描かれており、シュールなギャグシーンもいくつか見られた。

ユーモアのセンスもたっぷりで、たとえば彼が羽織っている紅のマントは、実は『アラジン』の魔法のじゅうたんのように意志を持って動くことができる。表情もなく喋りもしないが、全身を使って感情を表現する様子がかなりキュートだ。

マーベル・シネマティック・ユニバースとして

本作は『アベンジャーズ』などと世界観を共有する『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』の作品であることも見逃せないポイントだろう。MCU作品ではお馴染み、エンディング途中のオマケでは、アベンジャーズからアイツが登場し、今後の展開を予期させる。ちなみに今回はエンディング途中に一回、エンディング後に一回、合計二回のオマケ映像があるので、最後まで劇場内にいるように!

『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』への参戦も内定しているドクター・ストレンジは、MCUに『マルチバース(多元宇宙)』という全く新しい概念をもたらすだろう。つまり、アベンジャーズらがいる世界とは別の平行世界、パラレルワールドが存在するということを認めるものだ。原作コミックにおけるマーベル・ユニバースではこの多元宇宙の概念があり、別世界のヒーローたちとの共演などを実現してきた。

『マルチバース』については、『ドクター・ストレンジ』劇中でもさかんに言及されていた。ストレンジがMCUにマルチバースを持ち込んだらどうなるのか。これは全くもって願望の域を出ないが、たとえば制作・配給会社が異なる20世紀FOXから、ストレンジが「X-MENとかいう別世界のヒーローチームのウルヴァリンってやつを連れてきたよ」なんてことが実現する可能性もゼロではない、ということを語れるようになる(現実的にはやっぱ難しいかな)。少なくとも、このようにMCUの世界軸に豊かな幅を生み出し、これまで様々な事情で実現できなかった表現を、強引に言えば「マルチバースだから」の解釈で実現しうるほどの切り札になりうるのだ。

最も、アベンジャーズらはこれから『インフィニティ・ウォー』にてサノスとかいう全知全能のチートゴリラと戦わなければならない。今のアベンジャーズの軍力ではかすり傷一つ付けられるかも怪しいレベルなので、マルチバースの有効活用が必須になってくるだろう。

以上、『ドクター・ストレンジ』の興奮をお伝えした。試写会は2Dでの上映だったが、それでも何故か3Dで鑑賞したかのような幻想感があった。これがIMAX3Dだったらどうなってしまうのかと思うと、想像しただけで「帰ってこれなくなる」と怖気づくほどだ。

2017年1月27日以降、あなたが購入するのは『ドクター・ストレンジ』映画鑑賞チケットではない。高次元世界へアクセスできる魔法のパスポートなのである。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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