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【特集】学園映画大研究ドキュメンタリー『ビヨンド・クルーレス』登場作から、イマドキの若者におすすめの映画3選

世界的に評価されている某有名映画監督が、アカデミー賞で行われたジョン・ヒューズ追悼を猛烈に批判したことがある。『すてきな片想い』(’84)や『ブレックファスト・クラブ』(’85)などの青春映画を監督、製作し、時代を越えて十代の観客の共感を集めるヒューズだが、批評家や同年代の映画作家から支持されたとは言い難がった。前述の某監督のリアクションも予想された範疇で、今も昔も「十代向けの映画なんて通俗的」というのが映画批評における定説なのである。

しかし、そんな先入観を振り払い、公平な目線で青春映画と向き合っている批評家も存在する。イギリスの批評家チャーリー・ラインもその一人だ。ラインが青春映画の愛情と研究成果を詰め込んだドキュメンタリー作品が『ビヨンド・クルーレス』(’14)である。

ビヨンド・クルーレス
(C)2014 Beyond Clueless LLC

「クルーレス」とはもちろん、アリシア・シルヴァーストーン主演の学園映画『クルーレス』(’95)のこと。本作は「『クルーレス』以降」、つまり90年代後半からゼロ年代のアメリカが残してきたハイスクールムービーを五章に分けて解説していく。それぞれテーマは「学園のグループ」「セックス」「自我の分裂」「多様性」、そして「卒業後の人生」。いずれもハイスクールムービーが繰り返し重要なテーマとしてきたものだ。

本作に登場するハイスクールムービーの数は、詳しく解説されるものから、ほんのワンショット登場するものも含めると、なんと200作以上!内訳も『スパイダーマン』(’02)や『シーズ・オール・ザット』(’99)『ファイナル・ディスティネーション』(’01)のように日本でも人気がある名作から、ソフトスルー作品、あるいはソフトですら輸入されなかった作品まで様々だ(ムービーマヨネーズ誌の創刊号に素晴らしい全作品リストが掲載されているので、機会があれば是非)。

ここでは200本の中から、特に現代の若い観客におすすめしたい3作品を紹介したい。本当はかたっぱしから観てほしいけど!

学園映画の基本は『ミーン・ガールズ』に学ぼう!

興行収入1億ドル越えの大ヒット作であり、『ビヨンド・クルーレス』でも特に登場回数が多い『ミーン・ガールズ』(’04)。ポップで王道な内容なので、これからアメリカ学園映画を見始めたいという人にオススメだ。若かりしレイチェル・マクアダムスのセクシーファッションが拝めるという貴重さもある。また、リンジー・ローハンがおぼこいJK役なのがなんとも……。

ストーリーは、アフリカで生まれ育った16歳の少女、ケイディ(ローハン)がアメリカのハイスクールに転校するところから始まる。アメリカの学校生活はジャングル以上の弱肉強食だった。学園の頂点に君臨するのはレジーナ(マクアダムス)をリーダーとする美少女集団「プラスティックス」。ケイディはレジーナの気紛れからプラスティックスに迎えられるが、レジーナに恨みを持つ同級生の指示に従い、集団を崩壊へと導いていく。しかし、レジーナに変わってリーダーになったケイディは、女王の座に酔いしれてしまい…。

本作が学園映画の基本としてうってつけなのは、『ブレックファスト・クラブ』以降の学園映画が描き続けてきたスクールカーストが理解できること。イケてるグループに入りたい女子たちはみんな、女王であるレジーナの機嫌ばかりうかがっている。体育会系(ジョックス)の男子たちもプラスティックスにベタボレ。プラスティックスやジョックスは冴えない生徒たちを人間扱いせず、好き放題だ。しかし、頂点にいる生徒もいつ、立場を追いやられるか不安で仕方ない。そんな生徒たちが不満と後悔を懺悔しあうシーンは、ゼロ年代学園映画屈指の名シーン!  『桐島、部活やめるってよ』にヤラれた人には響くはず。

ガリ勉がポルノ女優に恋しちゃう『ガール・ネクスト・ドア』 

アメリカで10代の観客がどうして大人が薦める深刻な映画ではなく、学園映画を見続けるのか? その理由の一つがセックスを肯定してくれるからである。親も先生も10代の性欲を快くは思っていない。特に、キリスト教的価値観の強い地域では抑圧に変わっているとさえいえる。昔は『エクソシスト』(’73)や『キャリー』(’76)なんてホラー映画が流行ったが、いずれも親が娘の性を否定し続けた結果、暴走を招いてしまう物語である。ちなみに、『エクソシスト』は実話が基らしい。こわ!

学園映画であれば、思春期の性を禁忌扱いしない。かといってバカにするわけでもなく、共感を呼ぶ物語として描いてくれる。なぜなら、10代にとって性の問題は大人が思う以上に重要だからだ。 『ガール・ネクスト・ドア』(’04/日本未公開)の主人公マシュー(エミール・ハーシュ)は大統領を目指す秀才で、童貞。かといってプロムやセックスにも興味がなく、ガリ勉の毎日を送っていたが、隣に越してきたセクシー美女、ダニエル(エリシャ・カスバート)に心を奪われる。元ポルノ女優だったダニエルは遊び半分でマシューを誘惑するようになるが、純情なマシューは誘いに乗らない。やがて、ダニエルもマシューに感化されて学校生活をやり直したいと考えるようになる。

これは「セックスより勉強を頑張れ」という教育映画か?違う。ガリ勉にも性欲はあるし、セクシー美女にだって勉強意欲はある、人を見た目で判断するなという話だ。そして、青春時代には何にだってなれる可能性を誰もが秘めている。

少年は部屋を飛び出して大人になる『バブル・ボーイ』

大傑作『はじまりへの旅』(’16)をあなたは見たか? ヴィゴ・モーテンセン演じる父親は、子供たちを学校にも通わせず山奥で独自の教育を受けさせている。高度な学問とサバイバル訓練の成果で子供たちは一般的な同世代よりも遥かに頭脳明晰で健康だ。しかし、外の世界を知らない子供たちは母親の葬式のために出た旅で衝撃を受けることになる。

ユニークなストーリーだが、アメリカにはこの手の逸話が珍しくない。『ムービー43』(’13)にも息子を家の中だけで育てようとするトンデモ親のエピソードが出てくる。ある親は消費社会への抵抗として、ある親は罪の穢れから守るために子供を家に閉じ込める。

『バブル・ボーイ』(’01)も母親のせいで高校生活を奪われた少年の物語である。虚弱体質のジミー(ジェイク・ジレンホール)は、母親によって生まれてからずっと無菌室に閉じ込められている。何不自由ない生活だったが、クロエ(マーリー・シェルトン)に恋をしたことで外の世界へ憧れるようになる。そして、クロエの結婚を知り、翻意させようと部屋を飛び出す決心をする。

ジミーにとっての無菌室とは子宮のメタファーである。心地良く、誰からも攻撃されない空間。しかし、人は他者と関わらなければ大人になれない。『はじまりへの旅』と同じく、ジミーは旅の途中で傷つき、打ちのめされるが、その経験が彼を強くもしてくれるのだ。


他にも『ビヨンド・クルーレス』には傑作映画がたくさん紹介されているので、映画ガイド映画(ややこしい)として鑑賞してみるのもいいだろう。 しかし、いずれの作品にも今をときめくハリウッドスターが大勢出演していることに驚かされる。学園映画とはスターの登竜門であり、エマ・ストーン、ヒラリー・スワンク、ブリー・ラーソンといったオスカー女優も学園映画で印象的な演技を残して注目された。学園映画とは観客の思い出になるだけでなく、キャストにとっても二度と戻れない時を刻んだ玉手箱なのだ。そこにはどんな映画批評でも語りつくせない輝きがある。

映画『ビヨンド・クルーレス』はオンライン上の映画館「デジタルスクリーン」にて上映中

【デジタルスクリーン】ウェブサイトはこちら

【ビヨンド・クルーレス】上映ページはこちら

※デジタルスクリーンは現在パソコンでのみ視聴可能です

(C)2014 Beyond Clueless LLC

Writer

石塚 就一
石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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