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【ネタバレ】なぜ『アベンジャーズ/エンドゲーム』は物語を◯◯◯にしたのか ─ ◯◯◯のヒーローたちは「◯◯◯」の◯

アベンジャーズ/エンドゲーム
ⒸMarvel Studios 2019

なぜ『アベンジャーズ/エンドゲーム』は物語を「5年後」にしたのか

『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、サノスへのリベンジに挑んだキャプテン・アメリカ、ソー、ナターシャ、ウォーマシン、ブルース・バナー、ロケット、ネビュラ、そして新たに加わったキャプテン・マーベルが隠遁の帝王を早々に追い詰める。しかし、肝心要のインフィニティ・ストーンはわずか2日前にサノスによって破壊されてしまっていた。行き場のない感情をストームブレイカーに込めたソーはついにサノスの首を切り落とすが、これでは何ひとつ解決しない。結局、世界は何一つ取り戻せないまま時が進むのを許すほかなかった。「5年後」──、そのテロップは、重くのしかかるように示される。

意外にも思われる展開となったが、脚本家らによれば、これは『インフィニティ・ウォー』のラスト、つまりサノスが世界の半分を消し去るという衝撃の展開によって考案されたものだという。マルクス曰く、「ナターシャやトニー、スティーブの結末は、彼らがあの時間(5年間)に行っていたことを知っておかなければ成り立たない。

敗北者たちが過ごしたそれぞれの5年

敗れたヒーローたちは、それぞれ異なる5年間の人生を歩んでいた。冷徹なスパイとして育てられたナターシャにとって、アベンジャーズは唯一の家族と呼べる存在になっていた。彼女はメンバーが世界中に散った後もアベンジャーズ基地に居残り、活動を牽引する。かつて二重スパイとしても暗躍したナターシャに、一貫して守りたいものが出来たのだ。この変遷は、自己犠牲を伴うソウルストーンの場面に繋がっていく。

スティーブは5年の間もリーダーとアイコンであろうと努め、グループセラピーも開いて人々を励まし続けた。もはや戻らぬ世界を受け入れざるを得なかった”キャプテン”として、「前に進む」というメッセージを自分自身に言い聞かせるように発し続けたスティーブであったが、一方でスコットが「タイム泥棒」を発案すると、これでやり直せるかもしれないとトニーに熱心に説いている。

やがて戦いが終わると過去に戻り、ひとりの人間として人生を送る選択をする。過去に留まる決断をしたわけであるが、これこそが彼にとって「前に進む」選択、つまり汗と重責にまみれた超人のスーツを脱ぎ捨て、人間スティーブ・ロジャースに生まれ変わるということだった。

トニーは、長年連れ添ったペッパーと結婚、愛娘モーガンをもうけて子煩悩ぶりを見せていた。郊外に建てたログハウスにはハイテクのセキュリティ設備もなく、木製の扉ひとつ隔てただけで開かれた自然を迎え入れることができる。かつてミュージアムのようにディスプレイしていたスーツも、娘はガレージから拾ってきてオモチャにするほどで、スティーブのシールドすらソリ遊びに使われかねないという。

トニーはタイムトラベルに挑む際にすら、手に入れた家族との平穏は守りたいと切願した。家庭を持った父親としての人生を歩んでいたトニーだからこそ、その死は英雄以上に英雄的なものとして深く刺さる。

マルクスら脚本家にとって大切だったことは、物語を「リアルにする」こと。5年の間にそれぞれが実に人間臭い時間を過ごしていたからこそ、彼らの「終わり」に一層の意義が生まれるのだ。

物語を突然5年経過させるアイデアについて、脚本家らはいくつかの人気ドラマを参考にしたという。ひとつはサスペンス作品の「FARGO/ファーゴ」。MCUキャストからは『ブラックパンサー』(2018)のマーティン・フリーマンも登場するこのドラマは、シーズン1のある時点で物語が突然1年後に飛ぶという展開を迎える。「えぇぇ?」という反応に期待したというマクフィーリー。

一方マルクスは、J.J.エイブラムス製作の「LOST」を挙げた。こちらも物語の中で異なる年の出来事が入れ替わり描かれている。マルクスも同じく、観客に「どういうこと?」と驚かせたかったという。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。