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『エターナルズ』MCU初、聴覚障害者のヒーローが意味するもの ─ 俳優ローレン・リドロフ、アンジェリーナ・ジョリーのサポートを語る

ローレン・リドロフ
Photo by The Walt Disney Company/Image Group LA https://www.flickr.com/photos/disneyabc/48613159011

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画『エターナルズ』では、世界各国から集まった豪華キャストが、ハリウッドがいま最も大切にしているテーマのひとつである“多様性”を象徴している。ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、クメイル・ナンジアニ、マ・ドンソク、サルマ・ハエック、アンジェリーナ・ジョリーという顔ぶれを見るだけでも、そのことは明らかだろう。

「ウォーキング・デッド」や『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(2019)のローレン・リドロフは、MCUに初めて登場する聴覚障害者のスーパーヒーロー、マッカリ役を演じている。コミックでは白人男性のキャラクターだが、大幅に設定を変更。自らも聴覚障害者であるリドロフは、撮影現場でアンジェリーナ・ジョリーのサポートを受けたこと、新しい発見があったことを明かしている。

米The New York Timesにて、リドロフは「(撮影では)問題に直面するシーンもありました」と語っている。たとえば、耳の聞こえないリドロフに対し、どうやってカメラが回ったことを伝えればいいのか。この問題を解決したのが、マッカリと同じくエターナルズのセナ役を演じたジョリーだった。

「撮影の次の日に、ホリデー・パーティーで、アンジーに私の不満を打ち明けたことがあったんです。彼女はすぐ、“レーザーペンを使えばいいんじゃない? CGで簡単に消せるし”と提案してくれて。ああ、そうか、と。通訳者がレーザーペンで壁に円を描いている時は、“カメラが回った”ということ。円が消えたら“アクション!”です。」

『エターナルズ』の撮影現場にて、当初リドロフは「聴覚障害者として、私が普通に仕事をしているところを示さなければという固定観念がありました。とても弱い存在だと思われることを心配していた」と語る。しかし共演者との作業を通じて、その考え方にも変化が生じたようだ。「誰もが自分自身の挑戦をしていることに気づいたんです。私が考えるべきは、一人の俳優として何を伝えるか、ということだと思いました」

エターナルズ
(c)Marvel Studios 2021

超大作である『エターナルズ』にリドロフが参加したことは、多様性の表現という観点から見ても小さからぬ一歩だろう。リドロフは「ハリウッドはようやく、なぜレプリゼンテーション(象徴)が重要なのかを理解し、今では“どう表現するか”がより重要になっています。さらに難しい部分です」と分析。そのため、今後は聴覚障害者の脚本家などが企画の初期段階から関与し、スタッフにも多く雇用されるべきだと述べている。「そうすれば、よりリアリティのある表現が生まれると思います」。

幼い頃、リドロフは俳優になろうと思っていなかった。映画に聴覚障害者が登場するところも見たことがなかったそうで、少女時代は「聴覚障害者はこの世界に数人しかいないのではないか」とさえ思っていたというのだ。「だけど大人になって、少なくとも4億6,600万人の聴覚障害者や、耳が聞こえにくい人々がいることがわかりました。私は一人じゃない。それが“聴覚障害者のスーパーヒーロー”の意義だと思います。より多くの人が、たくさんの可能性を知ることができる」

映画『エターナルズ』は2021年11月5日(金)全国公開。

Source: The New York Times

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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