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米Netflix『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』製作会社を買収か ― 2018年夏までに契約の可能性、仏報道

ヴァレリアン 千の惑星の救世主
© 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

リュック・ベッソン監督作品『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2018)をはじめ、数々の映画を製作してきた仏ヨーロッパ・コープ社が米Netflixによって買収される可能性が浮上している。フランスの経済紙Les Echosが報じた。

『TAXi』『トランスポーター』『96時間』など、リュック・ベッソンが設立した製作会社ヨーロッパ・コープは、大作アクション映画から『女神の見えざる手』(2016)や『ザ・サークル』(2017)などにも携わっている。
しかしベッソン監督自身による『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』が、巨額の製作費に対して米国などで低調な成績を示すなど、同社は経営的に厳しい状況的に置かれていた。すでに資金調達・コスト削減のため、フランスのテレビ製作部門を売却したり、社内の人員削減を行ったと報じられていたのである。

Les Echos紙が入手した情報によれば、Netflixはヨーロッパ・コープ再建のため、ベッソンや株主との交渉を進めてきたという。2018年2月の時点で両社の合意はほぼ達されており、今後は条件面の調整が行われることになるようだ。関係者によれば、契約は夏までの完了が目指されているという。なお同紙は買収発表の機会として、2018年5月に実施されるカンヌ映画祭が有力だと記した。

2018年2月、ヨーロッパ・コープは複数の企業とパートナー交渉に入っていることを発表していた。同社のリリースには、将来のパートナーがヨーロッパ・コープを完全に独占することはないという旨が記されており、このたびLes Echos紙は、買収完了後はNetflixが経営権を握るものの、クリエイティブ面の自由はベッソンに委ねられると伝えている。

なおNetflixとヨーロッパ・コープの関係が報じられたのは今回が初めてではない。2018年1月末、米Variety誌はヨーロッパ・コープとNetflixが共同で映画製作にあたる交渉に入ったと伝えたのだ。この時は、ベッソンが今後数年にわたって3000万ドル規模の映画を監督・製作する、また同社の過去作品と株式をNetflixへ売却する可能性があるとされていた。その後、経営再建のため、両社の話し合いは買収という形へ発展したとみられる。

米国での興収・評価はさておき、日本公開されたばかりの『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は、ベッソン監督によるイマジネーションが炸裂した映像世界と、シンプルかつストレートな物語で観客の心をつかんでいる。大スクリーンでこそ映える演出がリュック・ベッソン作品の大きな特徴といっていいわけだが、もしNetflixによる買収が完了したのち、今後ヨーロッパ・コープはどのような戦略で動いていくことになるのだろうか。一部で大きな話題を呼んだ、『LUCY/ルーシー』(2014)の続編製作はどうなるのだろう……。

またオリジナル映画の製作に注力しているNetflixにとっても、今回の買収が成立した場合、映画会社を傘下に収める初めてのケースとなる。映画業界とストリーミング・サービスの関係性に、新たな局面が切り開かれる可能性もありそうだ。

映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は2018年3月30日より全国の映画館にて公開中

Sources: Les Echos, Capital, The Playlist
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。