クリス・エヴァンス、キャプテン・アメリカ役のオファーを2度断っていた ─ マーベル側も最初は躊躇、役柄への葛藤を振り返る

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にてスティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ役を演じているクリス・エヴァンスは、かつて役柄のオファーを2度にわたって断っていた。
米The Hollywood Reporterのロングインタビューでは、エヴァンスがキャプテン・アメリカ役に就任するまでの経緯、そして当時の心境が、エヴァンス本人や関係者の証言から紐解かれている。

マーベル、エヴァンスの起用をためらっていた
キャプテン・アメリカ役のキャスティング作業が始まったのは2010年前半のこと。エヴァンスが役柄を射止めるまでには紆余曲折あり、かつてはマーベル・スタジオもエヴァンスの起用に消極的だったという。当初の候補者リストにエヴァンスの名前が入っていなかったのは、エヴァンスが『ファンタスティック・フォー』シリーズでヒューマン・トーチ役を演じていたためだった。
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、エヴァンスの起用を決意した理由をこう語っている。
「(最初は)“エヴァンスはあの役柄を演じてるし、候補者を探し続けましょう”と言っていました。そのあと最初のリストに戻ってきたころに、クリスの名前が再び出てきたんです。その時、パトリック・スチュワートはジャン・リュック=ピカード(スター・トレック)とチャールズ・エグゼビア(X-MEN)だし、ハリソン・フォードはハン・ソロ(スター・ウォーズ)とインディ・ジョーンズを演じてるよな、と思って。(役柄の重複は)誰も気にしないんじゃないかと。」

ところが出演オファーを受けたエヴァンス本人は「ちょっとしたパニックになった」と明かしている。大作映画のプロモーションでインタビューなどに登場するたび、当時の彼は「まるで裁かれているよう」だと感じ、「自分が何者なのか見失いかけていた」というのだ。少年時代はアニメーターになるのが夢だったというエヴァンスは、自分は仕事を間違えたのではないかと考え始めていた。
したがって、エヴァンスはキャプテン・アメリカ役のオファーを魅力的に感じながらも、出演を断ることを決意。当初、マーベルがエヴァンスに提示したのは映画9本の出演契約。エヴァンスが一度断るとスタジオは6本の契約を再提示してきたというが、彼は再びオファーを断っている。その後、招待を受けてスタジオを訪れたエヴァンスは、作品のアートや衣裳を見せてもらったというが、それでも意志を変える気はなかった。
もっとも、エヴァンスがかたくなに首を縦に振らない一方で、マーベルもエヴァンスの獲得に必死だった。いっこうに折れないマーベルを相手に、エヴァンスは親友や恩師との話し合いを重ね、さらにはアイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.から激励の電話を受けて、ようやくオファーを引き受けているのだ。当時、エヴァンスは大人になって初めてセラピーに駆け込んだという。
キャプテン・アメリカには「闇がない」?
実際のところ、エヴァンスは出演を引き受けるまで、キャプテン・アメリカのコミックを一度も読んだことがなかったそう。「もしも読んでいたら、引き受けるのをさらにためらったかも」とエヴァンスは語っている。第二次世界大戦のさなか、日本による真珠湾攻撃の直前に生まれたキャプテン・アメリカは、かつてのアメリカが抱いていた正義と理想を体現する、いうなれば現代に蘇らせることが非常に難しいヒーローだったのだ。
スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカについて、当時のエヴァンスは「まったく闇のない」キャラクターだと考えていたという。「観客が見たがる人物にするにはどうすればいいのかなって。ジョークは言わないし、ウルヴァリンじゃないし、バットマンみたいに両親が死んでいるわけでもないですから」。

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