マーベル『ファンタスティック・フォー』コミック刊行中止と映画版の関係 ─ 有名ライターが苦悩の証言

1961年11月、スタン・リー原作&ジャック・カービー作画によってスタートしたコミック『ファンタスティック・フォー』は、長年にわたって多くの読者から強い支持を集めながら、2015年4月に刊行された「#645」をもって終了した。そして同シリーズに登場したヒーローである、ミスター・ファンタスティックやインヴィジブル・ウーマン、ヒューマン・トーチ、ザ・シングらは、2016年1月に完結した『シークレット・ウォーズ』をもってその物語をいったん終えてしまったのである。
50年以上におよぶ歴史で、ファンタスティック・フォーのコミックが刊行されない、そして今後その予定もない、という事態は初めてのことだった。
もちろん『ファンタスティック・フォー』を愛するファンは現在も世界中にたくさんいる。なぜマーベルはコミックを終了させてしまったのか、なぜ再開されないのか……。
このたび、『ファンタスティック・フォー』や『シークレット・ウォーズ』に携わった有名ライター、ジョナサン・ヒックマンら関係者たちがNewsarama.comの取材に対して実情を証言している。
マーベルサイドの発表、しかし……
2016年1月、『シークレット・ウォーズ』の完結時に、マーベル・エンターテインメントのエグゼクティブ・エディターであるトム・ブリーヴォート氏はこのように語っていた。
「ファンタスティック・フォーは、マーベル・ユニバースにおいて歴史的にとても重要なタイトルでありコンセプトです。ただし今日の読者には、X-MENやアベンジャーズ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと同じように共感できるものではありません。」
すなわちコミック『ファンタスティック・フォー』で描かれているものと時代性、あるいは読者の求めるものが一致しなくなったことがコミック終了の理由である、とマーベルは説明したのである。
しかしヒックマン氏は、マーベル側のこうした発表を「まるでありえない。核となるコンセプトがなぜかうまくいかなくなった、だなんてナンセンスだ」と一蹴している。
「家族、未来、冒険、というコンセプトは時を越えて普遍的なものだ。もちろんノスタルジックにもできるが、そうする必要もない。普遍的なテーマを抱えながら輝いている、初期のマーベル・キャラクターはたくさんいるだろう。
もちろん例外はあるが、マーベル・キャラクターのほぼすべてが柔軟性に長けていて、かんたんに活用することができる。マーベルの本に不可欠な要素は“成功すること”だと思う。ファンタスティック・フォーも例外じゃない。」
「マーベルが『ファンタスティック・フォー』を出さないのは、フォックスとの間に相違があるからだ。これはよく知られていることだと思う。落ち込んだが、完全に納得したよ。彼らは理由もなくそんなことはしないからね。フォックスはよりよい仕事をすべきなんだ。」
また、この意見に完全に同意するのは、マーベルの元編集者で現在はライターとして活動するジョン・バーバー氏である。
「はっきりとは言わないよ。でもダメな映画3本は何にもならないんだ。『ファンタスティック・フォー』シリーズを失ったのは、(人々の)興味が失われてしまった以上に、映画の状態の方に原因があると思う。」
20世紀フォックスによって製作された映画『ファンタスティック・フォー』シリーズは、2005, 2007年に製作された2本と、2015年に製作されたリブート版の合計3作品がある。しかしその評価はいずれも高かったとはいえず、なかでも2015年のリブート版はとりわけ大きな痛手となってしまった。
ただし、マーベルとフォックスが全体的に不和状態にあるという主張にもやや無理があるだろう。なぜなら『X-MEN』『デッドプール』は映画の成功という追い風によって人気を広く定着させており、マーベルもコミックをハイペースで出版しつづけているからだ。問題があるとすれば、それは『ファンタスティック・フォー』だけの話で、再びコミックの世界に彼らを呼び戻すには映画版をヒットさせることが一番の近道となりそうである。
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