ファンタビ2『黒い魔法使いの誕生』ニコラス・フラメルとは何者か ─ 「賢者の石」と実在の伝説を解説

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018)には、『ハリー・ポッター』魔法ワールドからひとりのキーパーソンが登場する。錬金術師、ニコラ・フラメル(別表記:ニコラス・フラメル)だ。
すべての始まりとなった『ハリー・ポッターと賢者の石』にて言及されたニコラは、実在する人物であり、本当に「賢者の石」の精製に成功していたという伝説さえある……。
錬金術師、ニコラ・フラメル
実在した“錬金術師”ニコラ・フラメルは、フランスで出版業を営んでおり、1340年に生まれ、1418年に没したと伝えられている。古より伝わる秘儀書「アブラハムの書(The Book of Abraham the Jew)」を手に入れたフラメルは、巡礼と鍛錬の末に、無数のシンボルや記述から錬金術を体得。これによって生み出した財産によって人々に援助を施したという。
また、フラメルが生み出したといわれる賢者の石は、人々に不老不死の命を授けるものであり、それゆえフラメルは──1418年にこの世を去ったということにはなっているけれども──実は今でもどこかで生き長らえているのだとさえ囁かれている。もっとも後年の研究では、フラメルが錬金術に関与していたことを裏付ける根拠がないことが指摘されており、賢者の石をめぐる伝説にも疑問が投げかけられているのだが……。

『ハリー・ポッター』『ファンタビ』のニコラ・フラメル
『ハリー・ポッター』シリーズの原作者J・K・ローリングは、この錬金術師を物語に引き入れることにした。20代前半でフラメルの人生を知ったというローリングは、小説第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』の執筆に入る数ヶ月前に「フラメルについての夢を見た」と記している。それはまるでルネサンス期の絵画に命が与えられたかのように鮮やかな夢で、目覚めたあとも細部まではっきりと覚えていたという。「フラメルは、金色に輝く、散らかった研究室へ私を連れていってくれました。そこで賢者の石の作り方をすべて見せてくれたんですよ(作り方を覚えていたら良かったんですけど)」。
この体験ののち、ローリングはフラメルを「賢者の石」にまつわる重要人物として登場させている。『ハリー・ポッター』に登場するフラメルは、フランスの魔法学校「ボーバトン魔法アカデミー」に通ったのち、錬金術師として名を馳せ、賢者の石を生み出すことに成功。ここから作り出した「命の水」によって不老不死になったという設定だ。ダンブルドアはフラメルの友人であり、賢者の石の共同研究者という扱いになっている。
賢者の石は『ハリー・ポッターと賢者の石』でヴォルデモートに狙われているが、これはハリー・ポッターらの懸命の抵抗によって防がれている。しかしダンブルドアは事態を重く見て、フラメルと協議し、ついに賢者の石を破壊することを決めた。フラメルは命の水を蓄えていたため、石の破壊後もしばらくは生きていたようだが、どこかの時点で息を引き取っている。

J・K・ローリングにとっても思い入れの深いフラメルは、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でついに姿を見せる。物語の舞台である1927年、フラメルはフランス・パリで暮らしており、ダンブルドアは主人公ニュート・スキャマンダー(演:エディ・レッドメイン)にフラメルの家を紹介するのだ。当時すでに600歳を超えていたフラメルは、ゲラート・グリンデルバルド(演:ジョニー・デップ)率いる集会を水晶玉によって突き止め、物語のクライマックスでも重要な役割を担った。ちなみに演じたのは、巨匠監督アレハンドロ・ホドロフスキーの息子である俳優ブロンティス・ホドロフスキー。
ちなみに、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』には、さらりと賢者の石の実物が登場している。水晶玉の中にグリンデルバルドの姿を見たフラメルは、金庫のような箱からアルバムを取り出しているが、そのわずか数秒間、棚の中に橙色に輝く賢者の石を確認することができるのだ。
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Source: Wizarding World, Warner Bros.,