揺れる音程を持つ女性の歌うことへの情熱が思わぬ奇跡を起こす『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』レビュー

アカデミー賞に19度ノミネートされ、そのうち1979年の『クレイマー、クレイマー』、1982年の『ソフィーの選択』、2011年の『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で3度受賞した名女優メリル・ストリープ。そんな輝かしい受賞歴を誇る彼女が、1944年10月25日にニューヨークのカーネギーホールで“奇跡”のリサイタルを開いた実在の人物、フローレンス・フォスター・ジェンキンスを演じたのが最新作『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』だ。

監督は『クイーン』、『あなたを抱きしめる日まで』のスティーブン・フリアーズ。共演は『ラブ・アクチュアリー』や『ノッティングヒルの恋人』などでロマンティックコメディーの帝王と言われたヒュー・グラント。大ヒットTVシリーズ『ビッグバン★セオリー ギーグなボクらの恋愛法則』のサイモン・ヘルバーグ。

ストリープ演じるニューヨーク社交界のトップ、マダム・フローレンスの尽きない愛と財産は、グラント演じる夫のシンクレアと音楽に捧げられていた。ソプラノ歌手になる夢を追い続ける彼女だが、自分の歌唱力に欠陥があることに気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、シンクレアはヘルバーグ演じるお人好しのピアニスト・コズメを伴奏者として雇い、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回る。ある日、フローレンスは世界的に権威のあるカーネギーホールで歌うと言い出す。

フローレンスの揺れる音程を細部まで再現し、最初は嘲笑されるが次第に人々を惹きつけていく彼女をチャーミングかつ貫禄たっぷりに演じたストリープはさすがの素晴らしさ。だが、彼女の情熱に次第に信頼を置くようになるコズメ役のキンバーグ、夢を実現させるために奔走するシンクレア役のグラントと、脇を固める役者の好演がキラリと光る。

イギリスで再現されたニューヨークの街並、アレクサンドル・デスプラが担当したジャズ風な音楽、コメディーで展開させつつも、ウェルメイドな人間ドラマとして作り上げたフリアーズ監督のベテランらしい手腕にも舌を巻く。フローレンスのある秘密がわかってから後のクライマックスにかけての展開には感動させられるはずだ。 ストリープの演技に笑って泣いて、音楽の持つ力の素晴らしさに驚かされる。まさに“極上の人間ドラマ”にぜひ酔いしれていただきたい。

About the author

小学館のテレビ雑誌『テレパル』の映画担当を経て映画・海外ドラマライターに。小さなころから映画好き。素晴らしい映画との出会いを求めて、マスコミ試写に足しげく通い、海外ドラマ(アメリカ、韓国ほか)も主にCSやBS放送で数多くチェックしています。

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