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【インタビュー】『ザ・フォーリナー/復讐者』マーティン・キャンベル監督 ─「誰も観たことのないアクション」を求めて

ザ・フォーリナー/復讐者
© 2017 SPARKLE ROLL MEDIA CORPORATION STX FINANCING, LLC WANDA MEDIA CO., LTD.SPARKLE ROLL CULTURE & ENTERTAINMENT DEVELOPMENT LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

香港アクション映画界のスター、ジャッキー・チェン『007』5代目ジェームズ・ボンド役で知られるピアース・ブロスナン
『ザ・フォーリナー/復讐者』は、映画界の2大スターによる競演が見どころのスタイリッシュ・アクションだ。ジャッキーが演じるのは、愛娘を失って復讐をもくろむ元特殊部隊の男。ピアースが演じるのは、自身の問題を背負いながら思惑を遂げようとする北アイルランドの副首相だ。二人は無差別テロ事件をめぐって火花を散らしながら、それぞれの真相と過去に迫っていく……。

いわゆる「ジャッキー映画」のイメージを覆す、シリアスなポリティカル・スリラーでもある本作を手がけたのは、傑作『007 ゴールデンアイ』(1995)『007 カジノ・ロワイヤル』(2004)のマーティン・キャンベル監督。THE RIVERでは、2人のスターの仕事ぶりや、監督こだわりのアクション演出、そして現代のアクション映画に思うことをたっぷりと訊いた。

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ふたりのプロフェッショナル

俳優ジャッキー・チェン

“こんなジャッキー・チェン、観たことがない”。香港発のアクション・コメディでジャッキーを知り、彼にユーモラスなイメージを抱いている観客ほど、『ザ・フォーリナー』のジャッキーには驚かされるだろう。劇中のジャッキーは実年齢以上の老けメイクを施し、ほとんど笑顔を見せず、復讐に対する執念の炎を燃やし続けるのだ。

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知られざるジャッキーの一面を引き出すことに成功したマーティン監督は、本作でジャッキーとは初タッグ。まずは率直な印象を尋ねてみたところ、「素晴らしい人ですよ、プロフェッショナルですね」との答えが返ってきた。

「ジャッキーは常に準備が整っているんです。いつも集中していて、誠実に仕事に向き合うし、ベストを尽くしてくださるし、寛大で、いつも雰囲気が良くて。もちろん時間はきちんと守るし、撮影現場には最後まで――照明が消えるくらいまで――残っている。ネガティブなことなんて全く思いつかない、本当に素敵な方ですよ。」

まさにパブリックイメージ通りといった印象だが、劇中のジャッキーは、そんな観客の想像を次々に裏切っていく。ベテラン俳優の新境地開拓にあたって、監督に特別な戦略はあったのだろうか。

「いつも、主演俳優とはきちんと事前に話し合うようにしています。脚本を基にして、役柄にどんなことを求めているのか、主人公自身のストーリーをどう考えているのか、物語の中で人物はどのように変化していくのか。お互いにどう感じているのか、どう考えているのかって、意見交換をするんです。

ジャッキーは“ジャッキーらしい”演技や役柄で知られていますが、本当に素晴らしい俳優で、コメディやアクション以外も実に見事。きちんと経験を積んでいる俳優なんです。ですから、(ジャッキー・チェンとしてではなく)他の出演者と同じように、一人の俳優として見ていました。」

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マーティン監督はジャッキーとのディスカッションを通じて、あることに気づかされたという。それは、ジャッキー本人が「普段の映画とはまったく違うことをやりたがっていた」ということ。役柄について考える時点で、ジャッキーは「すでに準備万端だった」のだそうだ。「脚本の内容や映画のトーン、話し合い、ジャッキーの思い、そういった全てが融合して、今回の役柄は生まれていったんだと思います」

ピアース・ブロスナンへの信頼

本気のジャッキーを迎え撃ったのは、マーティン監督とは『007 ゴールデンアイ』以来、20年以上を経ての再タッグとなったピアース・ブロスナンだ。本作ではピアースも、“こんなピアース・ブロスナン、観たことがない”と思えるほど複雑な役柄を真摯に演じている。監督は「当時から良い俳優でしたが、いまや桁外れの俳優になりましたね」と述べ、ピアースに対する信頼を明かした。

「ジャッキーとのシーンを観てもらえれば、いかに彼が素晴らしい俳優になったかがわかると思います。献身的に仕事に向き合うプロフェッショナルで、人柄もすごくいい。僕たちはとても気が合うんです。仕事をしていると、時々すごく気の合う仲間と出会えることがある。僕にとってピアースは特別な存在ですね。」

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マーティン監督は、ジャッキーとピアースという2人の俳優について語る時、ともに「プロフェッショナル」という言葉を使った。2人は人間として、俳優として、とてもよく似た存在なのだという。

「2人は最高の仕事相手です。まずは人柄がいい。高いプロ意識の持ち主で、非常に才能豊かで仕事もしやすいし、自分の仕事に力を注ぐ。撮影現場では常に準備が整っているし、何度でもテイクを重ねることも快く受け入れてくれる。雰囲気もそっくりだし、ユーモアのセンスもある。本当によく似ています。こういうことはあまり言いたくないんですが、片方が中国出身、もう片方がアイルランド出身という以外に違いはありません(笑)。」

1970年代から業界で活躍するマーティン監督は、さまざまな現場を経験してきた大ベテランだ。かつての経験を思い出してか、監督は思わずこんなことも口にしている。「今までには俳優同士が衝突するような難しい仕事もありましたが、そんな緊張感はなかったですね」。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。