【インタビュー】『ザ・スイッチ』には『ハッピー・デス・デイ』との共通点アリ ─ 監督に聞いたウラ情報

自分が死ぬ日を繰り返すというユニークな設定で人気をあつめた『ハッピー・デス・デイ』シリーズの監督が新たに手掛けるのは、女子高生と連続殺人鬼の身体が入れ替わってしまう(ボディスワップ)という、奇想天外なホラーとコメディの融合作『ザ・スイッチ』だ。女子高生(中身は連続殺人鬼)役を『名探偵ピカチュウ』(2019)のキャスリン・ニュートンが、連続殺人鬼(中身は女子高生)役を『ウェディング・クラッシャーズ』(2005)のヴィンス・ヴォーンがコミカルに演じている。2021年4月9日より日本公開となる。
残された時間内に身体を取り戻さなければ、永遠にこの姿のまま?『ハッピー・デス・デイ』よりもホラーもスプラッターもコメディ要素もパワーアップした『ザ・スイッチ』を放ったクリストファー・ランドン監督が、THE RIVERのインタビューに登場。劇中に潜んだ小ネタや、撮影舞台裏について教えてくれた。

『ザ・スイッチ』監督が語るウラ情報
──『ザ・スイッチ』では、さまざまなホラー映画へのオマージュと愛をたっぷり感じました。ホラーに対する理念やこだわりを教えて下さい。
キャラクターの感情が中心にあるということです。観客が、特にメイン・キャラクターにつながりを感じて共感できるように。そうすれば、映画の満足度が上がるものと考えています。
──監督の前作『ハッピー・デス・デイ』よりも、バイオレンスを増していますね。過激なスプラッター演出は楽しかったですか?
イエス!『ハッピー・デス・デイ』の時は、R指定にしなくてもいいなと思っていました。今作のテーマはボディスワップですが、通常ならキュートでスウィートな雰囲気になると思います。だから、ここにスプラッターやバイオレンスとのコントラストをがっつり入れちゃおうということで。死亡シーンを撮るのはとっても楽しかったです。たぶん僕、人を殺す方法を思いつく才能があるんですよね。ハッハッ(笑)。

──そんなグロシーンでも、ユーモアの交え方が絶妙でした。
全編通じて、バランスは心がけました。どんなシーンでも、恐怖感とジョークがどうつながるか、あるいはつながらないか、ということを常に意識しています。今作で一番難しかったのは、ユーモアとホラーのバランスよりも、ユーモアと感情のバランスでした。映画の中盤で、(ヴィンス・ヴォーンに入れ替わった)ミリーが試着室で◯◯◯◯シーンがあります(編注:ネタバレを考慮して具体的なシーン説明は割愛)。実はここが難しいシーンで、お笑いでスタートして、エモーショナルになって、そしてまたお笑いに戻る。この絶妙なバランス取りには苦労しましたね。僕が本作で一番複雑だったと思うシーンです。
──主人公のミリーは、朝、奇妙なアラームで目覚めますが、これは『ハッピー・デス・デイ』へのセルフ・オマージュでしょうか?
ハッハッハ!(笑)実は『ハッピー・デス・デイ』とはいくつか共通点があるんです。アラーム時計もそのひとつなんですよ。2作とも「時間」が大きなテーマになっていますよね。だから時計台も共に登場します。『ハッピー・デス・デイ』と『ザ・スイッチ』には、視覚的なリンクがいくつか紛れているんですよ。
──共通点といえば、『ハッピー・デス・デイ』も『ザ・スイッチ』も、機能不全な家族との関係が物語の鍵になっています。ホラーの中に必ず家族の物語を入れるのは意図的ですか?
はい、かなり意図して入れています。家族との関係に悩むというのは、誰しもが経験するものだと思います。特に死に関わる場合は、複雑で難しい。家族との物語は、映画に意義や感情的なパワーを与えてくれると考えて、個人的な共感を引き出すことができます。
80年代の伝統的なスラッシャー映画といえば、 ──90年代もそうかもしれないですけど── キャラクターにパーソナルな物語がないですよね。彼らのことを気にする余地がない。こういったものを現代化したいという思いもありました。ただ叫んで走り回って殺されるだけじゃないものを作りたかった。特に僕の映画に登場する女性は、ツリー(『ハッピー・デス・デイ』主人公)であれミリーであれ、自分自身について学んでいき、新たな一面を見つけ、そして自分自身を救いもする。自力で対処できるから、他の誰かに助けてもらうということはないんです。

──ところで『ハッピー・デス・デイ』は、『Happy Death Day To Us』という仮タイトルでシリーズ第3作を構想しているそうですね。ファンは期待して待っていますが、今のご状況は?(編注:このインタビューは2020年10月に行われた。)
『ハッピー・デス・デイ』の続編は本当に作りたいです。アイデアもありますし、物語も書いていますし、やる気満々です。でも今は具体的な計画がありません。ユニバーサル次第ですね。
──『ハッピー・デス・デイ』と『ザ・スイッチ』をクロスオーバーさせる、というアイデアはどうでしょう?
可能性としては否定しません。この2作にはトーンや精神的なところでつながりが感じられると思いますし、ツリーとミリーが共演したらきっと楽しいと思います。でも、具体的な構想はしていません。今は『ザ・スイッチ』での皆さんの反応を待っているところです。(編注:このインタビューからひと月後、監督は2作が「同じ精神的ユニバース」に「100%」同居していると認めている。)
──ヴィンス・ヴォーンが女子高生の身体に入れ替わった役を演じています。『ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)でもジャック・ブラックが女子高生に入れ替わった役を演じていましたが、『ザ・スイッチ』はさらに強烈なキャラクターでしたね!ヴィンスも女子高生役の撮影を楽しんでいましたか?
楽しんで演じていましたよ!準備もたっぷり行いました。まず始めにキャスリン・ニュートンが役になりきって、ビデオ日記を作成したんです。ヴィンスはそれを観て、彼女の動きのクセ、たとえば爪を噛んだり、髪をいじったりするところを学んでいった。本番の撮影を始める前にも、キャスリンとヴィンスをあわせてリハーサルと情報共有を念入りにやりました。そのおかげで、キャラクター作りがしっかりできたと思います。

──あなたは父マイケル・ランドンから影響を受けていますか?(編注:『大草原の小さな家』シリーズなどで知られる映画俳優・監督。)
間違いなくありますね。父に連れられて撮影現場で育ちましたから。父の仕事姿からは大きな影響を受けています。父はホラー好きで、小さい頃はよく一緒にホラー映画を観ていました。映画監督を目指すようになったのは、父からの影響が非常に大きいです。
──人生を変えたホラー映画はなんですか?
たくさんあるんですが……。『ハロウィン』(1978)、『遊星からの物体X』(1982)、『死霊のはらわた』(1981)、それから『エクソシスト』はもちろん、『ポルターガイスト』(1982)。『ポルターガイスト』は大きいですね。映画館で観ましたし、それこそ家族同士の葛藤がテーマになっていますから。笑えて、怖くて、ワクワクして、それでいてエモーショナル。映画館で観て、泣いたのを覚えています。恐怖映画でもエモーショナルになれるんだと、驚きましたね。
──製作にはジェイソン・ブラムが入っています。クリエイターに委ねてくれる人物として知られていますが、彼からアドバイスを与えられたことはありますか?
ありません。それがジェイソンのいいトコロ(笑)。彼はクリエイターに対して干渉してこないんです。100%信頼してくださるんですね。もちろん、ブラムハウスやユニバーサルの方々からのインプットは心がけました。意見をもらって、脚本を書き換えることもありました。でも、ブラムハウスは”望まない変更はしない”という主義です。
──『フェリスはある朝突然に』(1986)でキャメロン・フライ役だったアラン・ラックが教師役で登場しますが、これは『フェリスはある朝突然に』へのオマージュでしょうか?
その通りです。僕はジョン・ヒューズ監督の大ファンで、僕の作品にはさまざまな影響が見られると思います。まず、アラン・ラックのことはとても尊敬していて、彼が出ているドラマ「サクセッション」(2018-)も大好きです。それに、(『フェリスはある朝突然に』)のキャメロン役が非常に印象的ですよね。キャメロン役のアイデアを拝借して、あの酷い人間を作りました(笑)。とても楽しかったですし、アラン・ラックともご一緒できて光栄でした。
『ザ・スイッチ』は2021年4月9日、日本公開。