「コケた」訳じゃない!『ブレードランナー』のように時代を経て評価された映画&人物ランキング

『ブレードランナー』(1982)の続編『ブレードランナー2049』がついに全米で公開となった。リドリー・スコット監督の代表作である『ブレードランナー』はSF映画史に残る金字塔として現在では高い評価を得ている。しかし、公開当時は動員が芳しくなく、批評家受けも良くなかった。難解な内容について映画ファンたちが繰り返し議論しているうち、カルトムービーとして知名度を挙げていったのだ。

ブレードランナー

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そこで、今回は『ブレードランナー』のように、リアルタイムから時間をかけて評価を得た作品、クリエイター、俳優を独自にランキング化して発表する。

注意


この記事で発表するランキングはライターの評価によるものであり、THE RIVERを代表するものではございません。

 10位 市民ケーン(1941)

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映画ファンに「史上最高の映画は?」と聞くのは一番の難問だが、「史上最高とされている映画は?」と尋ねれば、ほとんどのファンが『市民ケーン』の名を挙げるだろう。名匠、オーソン・ウェルズの処女長編にして、巧みな編集、練りに練られた脚本、素晴らしい演技の三拍子そろった非の打ち所がない大傑作だ。今でも批評家を対象に「史上最高の映画アンケート」をとれば常にベスト10入りは固いだろう。

しかし、公開当時は批評、興行ともに散々な結果に。主人公のモデルとなった新聞王のウィリアム・ランドルフ・ハーストが圧力をかけたからだといわれている。雑音がなくなった後世で正当な評価を得た映画なのだ。 

9位 デヴィッド・キャラダイン

lukeford.net

仕事がなくなっていたスター俳優にオイシイ役どころを与え、「俳優再生工場」ともいえる功績を残してきたクエンティン・タランティーノ。ハーヴェイ・カイテル、ジョン・トラヴォルタなどもタランティーノの恩恵にあずかってきた。『デス・レース2000年』(1975)のフランケンシュタイン役のデヴィッド・キャラダインに『キル・ビル』シリーズで久しぶりの大役をプレゼントしたのが感動的だった。

『デス・レース2000年』共演者ではシルベスター・スタローンの出世ぶりに目を奪われがちだが、『ロッキー』以前の評価はまるで逆。キャラダインこそがスターであり、映画ファンの憧れだったのだ。ようやく再評価がされてきた2009年の急死は本当に残念。

8位 ジョン・ヒューズ

『すてきな片想い』(1984)『ブレックファスト・クラブ』(1985)などの青春映画の監督、プロデューサーとして80年代に作品を量産したが、いずれも大ヒットにはいたらず。90年代以降は『ホーム・アローン』(1990)や『ベートーベン』(1992)などのファミリームービーの脚本家として知られるようになる。

しかし、リチャード・リンクレイターやケヴィン・ウィリアムソンたち次世代のクエイリターたちがヒューズの青春映画に影響された作品群を発表。時代が経つにつれその功績は大きくなるばかりだ。

7位 ショーシャンクの空に(1994)

批評家にとっての最高の映画が『市民ケーン』なら、映画ファンにとっての最高の映画は『ショーシャンクの空に』ではないだろうか。しかし、発表当時は大ヒットとまでいかず、賞レースでは『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)の後塵を拝むばかり。その後、ソフト化された後で人気が爆発。現代では『フォレスト・ガンプ』との評価は完全に入れ替わったといえるだろう。

本作の良さはストーリーが普遍的で、時代を選ばずに感動できること。また、モーガン・フリーマンをはじめとする助演俳優たちの演技も素晴らしい。シンプルな魅力は気づかれにくいが、発見されれば深く心に刻まれるのだ。

6位 ジャン・ヴィゴ

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1905年生まれのフランス人映画作家で、わずか29歳で病死するまでに4本の映画作品しか残せなかった悲劇の人。しかも、自作はことごとく興行的に振るわなかったばかりか、検閲に引っかかり上映すら許されなかったものもあった

しかし死後、その才能が認められリバイバル上映などで評価されるようになる。彼がいなければヌーヴェルヴァーグもアメリカン・ニューシネマもなかったかもしれないのだ。

5位 ブルース・ダーン

Gage Skidmore https://www.flickr.com/people/22007612@N05

1960年代から西部劇やアクション映画を中心に活動し始める。強面ゆえにヒーロー役は滅多に演じられなかったものの、確かな演技力で画面を引き締める「映画業界に愛された俳優」

1982年にベルリン国際映画祭銀熊賞を獲得したくらいで目立った表彰もされてこなかったが、近年ではクエンティン・タランティーノ、アレクサンダー・ペイン、フランシス・フォード・コッポラなどアメリカを代表する映画監督の作品でメイン級の役を演じている。

4位 ハワード・ホークス

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徹底的な商業主義を貫いたハリウッド黄金時代を象徴する映画監督。間違いなく名匠には違いないが、監督作のジャンルがバラバラだったこと(西部劇、フィルムノワール、コメディ、戦争映画…)、映画作家の主義主張を軽視し観客に奉仕し続けたことなどから、長い間評論の対象にされてこなかった。

しかし、いかなる題材も料理してしまう演出力のすさまじさは一貫して同業者から圧倒的に支持されてきた。現代では映画史上最重要の監督の一人だと認識されている。「作家性=テーマ性」ではないのだと教えてくれる貴重な映画監督だ。

3位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(1984)

マカロニ・ウェスタンの巨匠として知られるセルジオ・レオーネ監督の遺作。そして、最高傑作。しかし、公開当時の評価は散々たるものだった。突発的な暴力の連鎖に必然性がまったくないと思われたからである。それもそのはず、アメリカでの劇場公開バージョンはレオーネの意志とは関係なく、スタジオが勝手に編集した短縮版だったのだ。

レオーネの希望に沿った4時間近い「完全版」が公開されて、ようやく本作は絶賛の嵐を巻き起こすことになる。

2位 アルフレッド・ヒッチコック

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いわずと知れたサスペンス映画の巨匠。『めまい』(1958)『サイコ』(1960)などの作品は歴史的傑作として語り継がれているが、そもそもキャリアを通じてほとんど駄作を撮っていないのが驚異的。ただし、彼のイギリス時代に撮った初期作品は決して高く評価されてきたわけではない。「通俗的」などのネガティブな評価を受け、批評家からは無視されていたのである。

風向きが変わったのは1940年代に入ってハリウッドに渡ったこと、カイエ・デュ・シネマなどの映画誌が正当な評価を始めたことなどがきっかけだ。ヒッチコックの演出術は現在でも多くの学者や映画作家に研究され続けている。

 

1位 2001年宇宙の旅(1968)

Matthew J. Cotter https://www.flickr.com/people/51304282@N02

1968年アカデミー賞では脚本賞にノミネートされ、特殊効果賞を受賞したのみ。説明的なナレーションや台詞を一切排除し、映像だけで「人類の起源と未来」という難解なテーマに挑んだ本作は、公開当時に大きな支持を得られなかった。

しかし、研究が進むにつれて本作に含まれている情報量の多さ、ストーリー性が解読されていき人気が再燃。現在ではSFジャンルだけでなく映画史に残る一本として記憶されている。特に新たな進化の椅子をかけて、人工知能と人間が最終決戦に挑む展開は、公開から半世紀をむかえようとしている現代こそ見られてしかるべきだろう。

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About the author

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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