【ネタバレ】『フォードvsフェラーリ』が加えた、事実と異なるドラマチックな演出とは

この記事には、『フォードvsフェラーリ』のネタバレが含まれています。
『フォードvsフェラーリ』が史実と決定的に異なるのは、宿敵フェラーリの会長エンツォ・フェラーリに関するもの。映画のクライマックスとなる1966年のル・マン24時間レースに、実際のフェラーリ会長は出席していなかったというのだ。
劇中でのフェラーリ会長は、サーキットの2階席よりレースを見渡し、自社ドライバーの状況に一喜一憂する姿を見せていた。ところが、ヘンリー・フォード2世を演じたトレイシー・レッツが米Uproxxに証言したところによれば、フェラーリ会長の観戦はジェームズ・マンゴールド監督が用意した架空の設定だったという。
「(実際の)フェラーリ氏はレースにいなかったんです。そうなんです。フェラーリ氏はレースに行っていなかったんですよ。それでね、彼がレース観戦に行かなかった理由は、本当かどうかは分からないんですけど、自分のドライバーがあまりにもコース上で死にまくっていたからなんですって。そういうわけで、レースに行かなかったのかもしれませんね。」
劇中では、フェラーリの期待ドライバーがレース中に大クラッシュを起こし、フォード側のクルーもが仰天するシーンもあった。ちなみに1955年のル・マンでは、メルセデスとオースチン・ヒーレーの車体がピットイン地点で激突、車体が観客席に飛び込み、ドライバー含む観客83名が死亡する事件も起こっている。
ヘンリー・フォード2世がレース中にヘリで夕食に出かけたという逸話は事実とのこと。フェラーリ会長の観戦はフィクションなので、フォードがヘリで飛び去ったと知って口にした皮肉も創作上のものだ。
劇中のフェラーリ会長はレース終了後、不条理な理由で2着に降格させられたケン・マイルズを称賛するようなメッセージをさりげなく贈っていた。これも、製作陣が用意したせめてもの救いの演出だったということだろう。
映画『フォードvsフェラーリ』は2020年1月10日(金)より全国公開中。
Source:Uproxx