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【レビュー】『ゴジラxコング 新たなる帝国』はヤンキーバトル漫画を怪獣映画でやっている感じ

『ゴジラxコング 新たなる帝国』
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基本的に、『ゴジラxコング 新たなる帝国』は、ヤンキーバトル漫画である。主人公のコングは正義感強い熱血漢。前作で一匹狼の喧嘩最強番長、ゴジラ先輩と拳を交えて認められた。以来、コングは新しい街に移り住んだが、そこで地方の容赦なきボス、喧嘩無敗のスカーキングに出会う。

スカーキングは地元の連中を暴力と恐怖で支配している。過去にはゴジラ先輩とも因縁を抱えており、その縄張りを広げようとしていた。一人では勝てない強敵。ゴジラ先輩、もう一度アンタの力が必要だ!コングは、ひょこひょこ付いてくる困り顔の舎弟、スコ(ベビー・コング)と共に、怪獣界喧嘩最強を決める戦いに挑む……。

ゴジラへの畏怖と共に作られた日本の『ゴジラ -1.0』(2023)とは気持ちが良いほど真逆の作風で、ヤンキー漫画ノリを怪獣映画のスケールで展開。人間キャラはもはや説明要員に成り下がり、コングやゴジラたちがひたすら『クローズZERO』(2007)などの高橋ヒロシ作品のバイブスを体現している。そりゃあゴジラも爆走するわけだぜ。

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前作『ゴジラvsコング』(2021)の後、コングは地底空洞世界に移り住んでおり、ゴジラは地表のどこかでおとなしくしている。前作の激突では地上にも甚大な被害を及ぼした彼らだが、地底と地上に分かれて暮らすことで、人類社会にはひとまずの均衡が保たれていた。

しかしある時、未確認生物特殊機関モナークは異常なシグナルを察知。やがてゴジラが、何やら未知の何かに備えるようにしてエネルギーを蓄え始めたのだ。一方、地底空洞世界のコングは、自分のような存在は他にもいることを知る……。

前評判通り、怪獣たちのバトル要素にステータスを大幅に振ってパワーアップした最新作。人間キャラクターたちはモンスター・ヴァース史上最も脇に追いやられており、一応の主役であるアイリーン(レベッカ・ホール)は進行説明に徹しているほどだ。怪獣たちが登場しないシーンでは、ブライアン・タイリー・ヘンリー演じるバーニーがコメディ・リリーフとして繋いでくれる。

むしろコングやスコといったCGのモンスターたちの方がよほど感情豊かだ。彼らは雄叫びや鳴き声しかあげないにも関わらず、何を言っているのか、何を感じているのかが明瞭に伝わってくる。コングは間違いなく、「お前だけはぜってぇ許せねぇ!」と叫んでいる。

正義感に溢れていて喧嘩も強いコングくんが映画の主体だが、ゴジラ先輩も番長として存在感抜群。予告編の爆走シーンから予想できるように、荒唐無稽でコミカルな部分もあるが、『ゴジラ -1.0』から影響を受けたというアダム・ウィンガード監督の言葉にも納得できるような場面も。作品全体を支配するハイテンションなトーンに合わせられてはいるが、ゴジラとしての由緒正しい威厳を見せてくれるシーンも用意されている。日本の東宝も監修に入っているということだ。

ヴィランであるスカーキングは、『猿の惑星』の退屈なパロディになってしまうかと思いきや、そんなことはなく、キャッチーなキャラクター造形がうまくなされている。彼の子分たちは、スカーキングさんがキレたらマジヤバいっすよ……と怯えている。手足が長く、アクロバティックで、「池袋ウエストゲートパーク」の窪塚洋介をとことん狡猾にしたような存在感だ。この映画について語る時、真っ先にヤンキー作品が浮かんでしまうことをどうか許してほしい。

それから、何と言ってもスコである。ベビー・コングとも呼ばれるこの弟分キャラは、生存競争の厳しい地下空洞世界を生き抜く子どもで、警戒心が強く好戦的。コングに出会ってからは、初めのうちは攻撃的に歯向かってくるのだが、コングさんに「本当の強さ」を見出し、いつしか憎めない舎弟キャラとなる。この映画の中で一番表情豊かで、すこだ。

ダイナミックでサイケデリックに仕上がった、デカさで全てを圧倒する怪獣BREAKING DOWNが開幕だ。笑ってしまうほど荒唐無稽なエンタメに、一切のためらいなく突っ走った米レジェンダリーにあっぱれ。同じユニバース「モンスター・ヴァース」のドラマ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」新シーズンとスピンオフが計画されているというが、この作品の後、一体どうやってあのシリアス顔に戻ろうというのか。豪快なバトルエンタメ路線で、これからも迫力の劇場体験を更新してほしい。

『ゴジラxコング 新たなる帝国』は2024年4月26日、日本公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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