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ゴジラ実写ドラマ「モナーク」マット・シャックマン監督単独取材 ─ ゴジラは「恐ろしくて美しい」、東宝スタジオは「アメリカにない魔法が」

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
画像提供 Apple TV+

日本が誇る怪獣王・ゴジラが、いよいよテレビでも大暴れする。ハリウッドが放つ「モンスター・ヴァース」による初めてのドラマシリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」が、2023年11月17日(金)よりApple TV+にて独占配信されるのだ。

第1話・第2話の監督を務め、シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーも担うのは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマ「ワンダヴィジョン」(2021)で絶賛され、映画『ファンタスティック・フォー(原題)』にも就任したマット・シャックマン。じつは幼少期からの『ゴジラ』ファンだという彼に、ゴジラへの思い入れや解釈、日本での撮影秘話などをじっくりと聞いた。

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
画像提供 Apple TV+

「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」マット・シャックマン監督 単独インタビュー

──私はゴジラ映画が大好きで、初めてテレビシリーズでゴジラが描かれることに興奮しています。まずは、あなたとゴジラの出会いからお聞かせください。

僕がゴジラを大好きになったのは、まだとても幼い頃でした。東宝版『ゴジラ』の第1作を父と一緒に観たんです。家の古いテレビで、父とソファに座りながら……そのことは今でもよく覚えています。それ以来、僕はゴジラのファンになり、東宝が手がけた新しいゴジラ映画のファンにもなりました。今は『ゴジラ-1.0』を観るのを楽しみにしているんですよ。

──ちなみに、お気に入りのゴジラ映画は?

えっと……たぶん僕は、自分たちが属するモンスター・ヴァースの映画が大好きだと言うべきだと思うんです。実際に大好きですし(笑)。だけど、本当に正直な答えを言うと『シン・ゴジラ』(2016)。デザインやストーリーが素晴らしく、政治的な複雑さも良くて、圧倒されました。とてもスマートな映画だと思います。

シン・ゴジラ
『シン・ゴジラ』©2016 TOHO CO.,LTD

──「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」を第2話まで拝見し、陰謀スリラー/サスペンスでありながら、確かに怪獣映画であることに驚きました。このバランスはどのように実現されたのでしょうか?

そのバランス感覚は自分の手柄だと言いたいのですが(笑)、実際は、このシリーズを開発したマット・フラクション&クリス・ブラックの功績だと思います。怪獣やモンスターの影響を受けた、何世代にもわたる人間ドラマを描くというアイデアは彼らの発案。素晴らしい着想だと思い、僕もそこに惹かれました。

このシリーズは、人間の視点から怪獣を目撃し、体験する作品です。また、モナークも時間の経過とともに変化していく。モナークがいかにして始まり、どのように変化していくかも、世代を超えた物語に組み込まれているんですよ。

テレビ作品であることを鑑みても、これは実に見事なアイデアだと思います。映画なら2時間という枠組みで、怪獣の戦いが上空で繰り広げられるエキサイティングな時間を過ごしてもらえる。しかしテレビの場合、皆さんに登場人物への愛情を持ってもらい、この作品を毎週見たい、彼らを応援したいと思ってもらう必要があるのです。クリスとマットは、そう思える魅力的なキャラクターを創り出したと思います。

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
画像提供 Apple TV+

──『ゴジラ』の歴史を担うにあたり、ファンとして「これだけはやりたい」というポイントはありましたか?

僕はゴジラ映画を愛し、大きな敬意を抱いています。だから、ゴジラを尊重し、正しく扱う必要があることに大きなプレッシャーを感じていました。監督した第1話には、ゴジラから逃げる人々が東京の街中を走るシーンがあります。大好きな映画から飛び出してきたような、本当に特別な場面なので、正確にやり遂げなければいけないと思いました。

また、僕たちがきちんと描きたかったのは、怪獣が人々にどんな影響を与えたかということ。ケイトはサンフランシスコの橋でゴジラと遭遇したことで、その橋にいた全員と同じく、人生が大きく変わってしまいます。この作品は、その地点から彼女の物語を描きながら、同時に他の人々が怪獣からどんな影響を受けたのかを描いていくのです。

ゴジラは非常に複雑、かつ素晴らしいキャラクター。善でも悪でもなく、両方の要素を少しずつ含んでいます。そういった自然界や世界のバランスを、人間には完全に理解できないかもしれないけれど、ゴジラは理解している……そのように表現したいと考えました。人間の登場人物と同じくらい、ゴジラは複雑なキャラクターだと思います。

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
画像提供 Apple TV+

──ゴジラという存在をいかに解釈するかは、日本でも数々の作り手が挑んできた課題です。監督はどのようなプロセスで自分自身の解釈にたどり着いたのでしょうか?

僕は長年にわたり多くのゴジラ映画を観て、幼い頃はゴジラのオモチャで何年も遊んでいました。プラスチック製の東宝版ゴジラのオモチャは、腕が飛び出したり、炎の舌が口から出たりする仕掛けで、当時のお気に入りだったんです。

ゴジラにはパワーがあり、威厳があります。だからこそ、数々のSFやファンタジーに登場するキャラクターよりも壮大で崇高な存在だと感じられる。また、善にも悪にもなりうるからこそ恐ろしく、そして美しいのです。

私が映画で大好きなのは「センス・オブ・ワンダー」の要素で、「ワンダー」とは、美と恐怖が等しく存在することだと思います。スティーブン・スピルバーグやクリストファー・ノーラン、スタンリー・キューブリックの映画は、僕たちをそんな「ワンダー」の領域に誘ってくれる。ゴジラも同じで、常に畏敬の念を抱き、美しさと恐怖を感じさせてくれます。

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
画像提供 Apple TV+

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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