『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は東宝映画のデザインをどう更新するか ─ ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ、そして人間たち

ハリウッド版『ゴジラ』シリーズの第2作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、ギャレス・エドワース監督の前作『GODZILLA ゴジラ』(2014)を継承しつつ、日本のファンがイメージする“怪獣映画”へと回帰する。登場するのはゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ。充実したキャストによる人間サイドのドラマにも注目だ。
本作を手がけるマイケル・ドハティ監督は怪獣と怪獣映画への愛情を熱く語っており、ファンの間ではすでに一目置かれている人物。その長年のビジョンを具現化するうえで欠かせなかったキーパーソンが、プロダクション・デザイナーのスコット・チャンブリス氏だ。米Forbesで、スコット氏は、マイケル監督との共同作業、そして怪獣映画を更新することについて深く語っている。
オリジナルに忠実に、怪獣を現代へと甦らせる
「子どもの頃、監督は教科書にゴジラのスケッチを描いて、それがどんなシーンなのかも書き加えていたそうなんです。彼の怪獣に対する知識と情熱にスタジオが触発されて、この映画が生まれたんでしょう」。スコット氏は、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』や怪獣映画そのものに対する監督の熱意を振り返る。
製作チームに監督が求めていたのは、ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラという怪獣の起源に敬意を払いつつ、きちんと現代に息づかせること。スコット氏は「自分のキャリアにおいて最も面白い仕事のひとつになりました」と語るが、同時に尋常ではないプレッシャーを感じてもいたようだ。
「もちろんストーリーの背景を生み出す仕事なんですが、同時に僕は怪獣そのものをアップデートするため、デザインチームのリーダーとしても雇われていたわけで……とてもエキサイティングでしたね。デザインチームのメンバーは誰ひとり、怪獣たちをぶち壊そうなんて思っていませんでした。」
チームの挑戦は、東宝怪獣映画における怪獣のデザインの核をつかみ取り、監督が求めるように歴史への敬意を払いながら、より現代的なアップデートを加えるというものだ。もちろんその作業は、単純に「今らしさ」をデザインに取り入れるという次元のものではない。
「テクノロジーの面だけでなく、それぞれの怪獣が、キャラクターとしてどんな役割を果たすのかということも含めてアップデートしなくてはいけませんでした。僕たちがデザイン面で注意を払ったのは、直接的にせよ、間接的にせよ、自然環境が怪獣たちにどんな影響を与えているのかということです。彼らのいる場所はどこなのか、そういった自然的要素はビジュアルとしてどう表現されるのかということですね。」
またスコット氏は、怪獣が中心となって展開する場面と、人間の出演者が織りなす場面では「視覚的にもまったく異なるスケールの物語になっている」と強調している。
「怪獣たちは明らかな大スケールですが、僕たち(人間)の日常はそれに比べるとちっぽけなもの。だけど現実世界の現代を舞台にすると決めた以上、山の中や水中の基地といった非現実的な設定も含め、全てを現実的にしなければならないし、細部を作り込まなくてはいけないし、本物だと思えるクオリティに仕上げなくてはいけません。そういったヒューマン・スケールの現実感があってこそ、怪獣たちの巨大なスケールの戦いが映画の中で成立する、より素晴らしく感じられると思うんです。」
マイケル監督は、本作を怪獣映画として撮りつつ、怪獣たちに神話的要素を取り入れること、その上で現実感をもたらすことも大切にしていたという。時には相反するような要素をあらゆるデザインから実現したのは、スコット氏らチームの功績にほかならないのだ。
ところでスコット氏は、デザインチームの女性スタッフが、5歳になる息子を撮影セットに連れてきた際のエピソードも語っている。その時、スタッフたちの現実的な製作アプローチが思わぬ事態を招いてしまったようだ。
「彼はゴジラについてたくさん見聞きしていたので、お母さんの仕事を見るのがすごく楽しみだったんですね。彼女(母親)は息子さんを連れてセットを見て回っていました。怪獣に壊される前のセットと、壊れた後のセットを。そしたら彼が、“すごい、すごい、ゴジラはいつ見られるの?”と言い出して。もう、口を開けて立ち尽くしちゃいましたよね(笑)。どう答えるべきか分からなくて。彼女がゴジラは現実にはいないんだと説明したら、泣き始めちゃったんです。ちょっとだけ涙が顔を伝ってね。すごくかわいかったですね。大きなゴジラのオモチャを渡したら、機嫌を直してくれたんですよ。」
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2019年5月31日(金)全国ロードショー。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』公式サイト:https://godzilla-movie.jp/
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Source: Forbes