【考察】続編のまえに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をきちんと復習!キーワードは“家族愛”

男女の恋仲を演出する挿入歌として機能したこの曲ですが、これは本来は母親からの贈り物、先立つ母親から息子へ送るメッセージであったことを忘れてはなりません。つまりこの“Ain’t No High Mountain Enough”という曲は母性愛と異性愛の両面を支えるものとなっています。そして母性愛と異性愛の境目は非常に曖昧です。
また、曲がフェードアウトするかしないかギリギリのところ、宇宙船の中で次は何をする?というピーターの問いかけにガモーラは「あなたに従うわ、スター・ロード」と微笑みながら答えます。今度は“I want you back”が流れ、宇宙船ミラノ号が飛び立ってエンドロール、というラストですが、このシーンでガモーラは母からの手紙の宛名でもあった「スター・ロード」という名前を劇中で初めて口にします。こうしたところからもガモーラとピーターの母親の役割が重なります。このようにピーターはエディプス・コンプレックス的な心理を抱えているのではないでしょうか。
2人の父親
エディプス・コンプレックスとは簡単に説明すれば母親への独占欲から父親に対して嫉妬の念を抱いてしまう心理のことです。フロイトが提唱したもので、幼児期に現れる無意識の欲求とされています。
本記事のタイトルには和やかに「家族愛」と記しましたが、正確には間違いです。ピーターが胸に抱いていたのは社会的・人工的・近代的な「家族愛」ではなくもっと根源的で原始的な「欲求」でした。幼少期から宇宙へ拉致され、宇宙でもアウトローな環境にいたピーターが原始的な欲求に囚われてしまうことは不思議ではありません。では、ピーターの父親は一体どのような人なのでしょうか?
①ヨンドゥ
ピーターの宇宙での育ての親としての役割を担うヨンドゥ。「仲間がお前を食おうとしたのを俺が止めてやった」と事あるごとに語る彼の姿はまるで本当の父親のようです。幼少期のエピソードを何回も何回も聞かされてうんざりする、という“あるある”はアメリカにもどうやらあるらしいですね。
ヨンドゥとピーターは時に敵対しますが、それは立場上仕方なく、といった印象が強いです。以下の記事にかなり詳しく書かれているのでこちらもご参照ください。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』ではヨンドゥがピーターらの仲間に加わっているような場面があります。ピーターの母親との接点がゼロであるからこそ、ヨンドゥにはそうしたことが可能なのではないでしょうか。ヨンドゥは父性愛を与えてくれることはあっても母性愛を奪う危険性がないからです。産みの父親に届けなくてよかった、という言葉を肯定し「父親はマヌケだ」と発言しており本物の父親にはいささかネガティブなイメージを抱いていることもわかります。このあたりの、もやのかかった発言の真意も続編で明らかになることでしょう。
②実の父親
予告の最後にも登場した産みの親(彼の言葉を信用するなら、という括弧付きですが)は、前作の後半でどうやら地球人ではないことが明らかになっています。
正面から向かい合っていることから、どうにもピーターら一行と敵対しているのではないかと予想されますが、仮にそうだとするならば典型的なエディプス・コンプレックスの図式が成立しますね。一体どんな人間なのでしょうか。続編が楽しみです。
https://theriver.jp/ego-revealed/
おわりに
ピーターの父親は敵なのか、味方なのか(個人的には敵っぽいと思いますが)。対立するのか、和解するのか、またはアンビバレントな関係になるのか―――。そういった所にも注目して『リミックス』に臨みたいところです。
ジェームズ・ガン監督の手掛ける『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がとにかく楽しいことは前作で立証済み。筆者は90年代生まれなので使用される楽曲をすべて知っているというわけではなかったのですが、そんなことは何の問題もなく前作を楽しむことが出来ました(脱獄シーンのチームワークの良さについうっかり泣きました)。
大注目の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、是非劇場でチェックしたいですね。
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