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【インタビュー】『グリーンブック』監督、アカデミー賞「実感湧かない」 ─ なぜ車の色はエメラルドグリーンなのか

グリーンブック
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

第91回(2019年)アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、脚本賞の3冠に輝いた映画グリーンブックの監督を務めたのは、『ジム・キャリーはMr.ダマー』(1994)や『メリーに首ったけ』(1998)などコメディ/ラブコメ出身のピーター・ファレリー監督だ。

オスカーに輝いた今、ピーター・ファレリー監督は何を思うか。THE RIVERでは、初来日を果たしたファレリー監督にインタビューを行った。ゆったりとした垂れ目が印象的なファレリー監督は、自らの旅路を振り返りながら、映画製作者としての「誇り」を新たにしていた──。

『グリーンブック』ピーター・ファレリー監督
『グリーンブック』ピーター・ファレリー監督

誰にでも短所はある

──アカデミー賞の受賞、おめでとうございます。まずは率直に、今のお気持ちは。

ありがとうございます。正直なところ、今も衝撃から覚めません。未だに実感が湧かないというか、信じられない気持ちです。

──アカデミー賞授賞式のスピーチでは、「私たちは、みな同じ人間だ」と仰っていました。監督が作品の中でこうしたテーマを大切にする理由はなんですか?

私は、ただ人が好きなんです。物語を綴る時は、──それが誰であれ── キャラクターを好きになったほうが良いと思っています。

私は、贖罪の余地があるキャラクターを作りたい。どこかで共感できるような人物です。キャラクターを好きになれないような物語は面白くならない。本作は、主人公が黒人が使ったグラスをゴミ箱に捨てるところから始まる。ここが本作の出発点です。人には誰でも短所がある。トニーの短所はそこ(差別意識)だった。でも、たとえ短所があったって、長所もあるはずですよね。

グリーンブック
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『グリーンブック』タイトル、変更の危機あった

──『グリーンブック』は、トニー・リップとドクター・シャーリーの友情劇が描かれます。実在した2人のエピソードの中で、映画には入れられなかったものはありますか?

沢山あります。2人の旅は1年に及ぶものでしたが、映画で描かれていたのは、クリスマスまでの2ヶ月だけですから。映画では、その旅の中で起こった出来事を、脚本に合わせて順序を入れ替えながら取り入れているんです。映画の中で一度、喧嘩のシーンがありましたが、実際には3回もバーで喧嘩トラブルに見舞われていたんですよ。

それから、ちょうど旅の終盤にジョン・F・ケネディが暗殺されて、2人が葬儀に参列していたんです。当初の脚本にもその展開を入れていたんですが、後になって映画のトーンの妨げになっていると気づきました。(本作にはロバート・ケネディも登場するため)ケネディや市民権運動の要素が出すぎてしまう。この映画は、(トニーとシャーリーの)2人の物語ですからね。

──本作には、エクゼクティブ・プロデューサーとして『ドリーム』(2017)や『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)のオクタヴィア・スペンサーが参加していますよね。彼女からはどんな影響を受けましたか?

製作陣の中でも最強のプロデューサーでしたよ。実は一度、スタジオ側が『グリーンブック』というタイトルを変えたいと申し出たことがあったんです。アメリカでは”グリーンブック”の意味なんてほとんど知られていないし、何のことか分からないんじゃないかと懸念されていました。だから、『ルール・オブ・ザ・ロード(Rules Of The Road)』というタイトルに変えたいっていうんです。パッとしない響きでしょう。

でも”グリーンブック”は映画のテーマとしても大切なものだから、このタイトルをどうしても守りたかった。こうした大きな議論が起こったとき、私はいつも彼女を頼りました。だって、彼女に歯向かえる人はいなかったんですよ。オクタヴィアは本当に賢くて、議論に強かった。説得力がすごかったですね。絶対に口で負けない。いつも落ち着いてて、聡明で。彼女と話していると、彼女の言っていることが正しいように思わされる(笑)。

車のカラーリングの理由

──ロード・ムービーでもある本作は、必然的に車の移動シーンが多くなりますよね。でも狭い車内ではショットのアングルが限られてしまい、同じ画が続いて退屈しかねません。撮影時にこだわったことはありますか?

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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