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【解説】ガン監督、10年前ツイートなぜ発覚?半日後に解雇の背景 ─ 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』出演者らコメント

ジェームズ・ガン
Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:James_Gunn_(28663744545).jpg

マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督を務め、シリーズを成功に導いたジェームズ・ガン監督が、2008〜2011年ごろに行った不適切なツイートが問題視され、ディズニーより解雇されたという報道が波紋を広げている。日本では2018年7月21日朝、Twitter上で「GOTG」「ガン監督」といったキーワードがトレンド上位で見られた。

なぜ、ガン監督の10年前にも遡る不適切ツイートが突然取り沙汰されたのか。それは、誰が行ったのか。なぜ、ディズニーはガン監督を受け入れる余地もなく、一方的な解雇を言い渡したのか。これを受けて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』出演者らは、どのように反応したのか。

この記事では、ジェームズ・ガン監督降板の詳しい経緯と背景を整理し、出演者らのコメントを紹介したい。

※ジェームズ・ガン監督、ディズニーからのコメントは前記事にて:
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』ジェームズ・ガン監督が降板 ― 過去の発言が問題視される【コメント全文和訳】

Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:James_Gunn_(28663744545).jpg

オルタナ右翼批判が発端

オープンな性格で、政治的な意見をTwitter上で度々表明することの多かったジェームズ・ガン監督は、かねてよりドナルド・トランプ米大統領の人格および政策を非難することがあった。これを目の敵にしたのが親トランプで、いわゆる「オルタナ右翼」と呼ばれる人々。件のツイートを最初に指摘したのは、右翼系ニュースメディア The Daily Callerだった。ここに至るまで、ある政治関係人物をめぐるTwitter上での騒動があった。

発端となったのは、映画監督マーク・デュプラスが、リベラルに向けて保守派の政治コメンテーターであるベン・シャピロ氏を「天才」だとツイートし、フォローを推奨したこと。

このシャピロ氏とはニュースメディアThe Daily Wire編集長で右翼。オバマ前大統領を「哲学的ファシスト」と罵る、トランスジェンダーを「精神病」と呼ぶ、映画『ブラックパンサー』に興奮する黒人をあざ笑うなどの過激な発言を繰り返しており、しばしば論争を起こしている人物である。The New York Times誌は彼を「粋がったガキの哲学者」と書いている。

この人物を称賛したことでデュプラス氏は批判を浴び、謝罪文を発表するに至る。デュプラス氏はここで、「レイシズムや同性愛嫌悪、外国人嫌悪や一切の不寛容を助長したつもりはありませんでした」「僕はときどき、興奮するとすぐに動いてしまったり、充分なリサーチや反芻を怠ってしまうことがある。本当に申し訳ございません」と陳謝している。一方のシャピロ氏は「えっと、この24時間のうちに僕は善良な人間からレイシストで性差別の偏屈者になったんですかね」とコメントしていた。

ここでジェームズ・ガン監督は、デュプラス氏を擁護し、シャピロ氏について「個人的にはベン・シャピロは母親でもフォロー解除すべきだと思う」と非難のツイートを投稿。続けて移民政策を批判し、2016年米大統領選挙におけるロシアの干渉問題など、トランプ大統領への批判コメントを加え、シャピロ氏を「クソ野郎」と言い表していた。

この報復に動いたのが、オルタナ右翼で親トランプ系ニュースサイトのThe Daily Callerだった。ガン監督失脚の直接のきっかけとなったのが、同サイトによる「保守派批判のディズニー映画監督がレイシズム、性差別、児童虐待のツイート」と題した告発記事である。ガン監督が2008年に行っていた問題発言ツイートのスクリーンショットを全10件掲載した同記事は、次のように始まる。

「デュプラス監督が保守派コメンテーターのベン・シャピロ氏を支持し、彼を”天才”と呼んだ批判で、映画監督のジェームズ・ガンがデュプラスを擁護した。ところが、Daily Caller News財団が彼のツイッターアカウントを調査してみると、ガンにはどうやら代えの人物が必要な模様である。」

これが、10年も前のツイートが今になって掘り起こされた経緯である。ここに同じくオルタナ右翼コメンテーターのジャック・ポソビエック氏が加わり、The Daily Callerが掲載した以外の2009〜2011年の問題ツイートを採掘、スクリーンショットとアーカイブURL(=ウェブ魚拓)と共にツイート。彼の一連のツイートが拡散に繋がったのである。ポソビエック氏はディズニー公式アカウントに対して、スクリーンショットと共に「ねえ @Disney!どうしてお宅の従業員 @JamesGunn はこの小児性愛ツイートを削除したのかな?」とメンションも飛ばしていた。

ポソビエック氏の主張

拡散主要人物であるポソビエック氏は、自身のツイッターにて解雇報道後も逐一とアップデートを繰り返しており、後述のデイヴ・バウティスタ含む著名人らが納得しかねる様子でツイートすれば、「あなたは児童レイプを推奨するのですか」と指摘。解雇報道が伝えられるとすぐにライブ配信を行っており、動画の中で「ディズニーは正しい判断」「なぜハリウッドはこの男を何年も野放しにしていたのだ」などの主張と共に、「ジェームズ・ガンのような人物がハリウッドで自由に働き、公然に現れ、Twitterアカウントを運営していていいものか」「誰が彼なぞを子供も観るような映画シリーズに起用したんだ」「これをきっかけに、何人もの著名人がTwitterを退会するだろうよ」と語っている。

「”あの時はどうかしていた、そんなことを言ってたかもしれないけど、過去は過去だし”とか言ってるけど、それは謝罪じゃないだろう。謝罪というのは”申し訳ございませんでした”と言うことだ。」「昔の冗談だ、という問題じゃない。彼は1,000ものツイートを削除したんだぞ。普通はそんな冗談を1,000回もツイートしないだろう。」

解雇の背景

ガン監督の過去のツイートが擁護しきれない内容であった以上、ポソビエック氏の主張はあくまでも間違いではない。しかし、酌量の余地を感じさせる点として、ガン監督は(ポソビエック氏の謝罪の定義は別として)これまでも過去の問題発言を認め、懺悔を行ってきているのである。同時に、ガン監督の発言はハーヴェイ・ワインスタイン問題などとは性質が異なり、事実上の被害者が存在しないという点も配慮すべきだったように思われる。

それでもディズニーがガン監督を解雇せざるを得なかった背景には、やはり時流がある。

まず、直近の前例として2018年5月末、ディズニーは傘下であるABC局放送の人気コメディドラマ「ロザンヌ」を主演女優による人種差別ツイートを理由に打ち切っているこのドラマは高い視聴率を誇っており、すでに第2シーズンの製作も決定した上での打ち切りだった。放送開始からわずか3ヶ月目の出来事だった。

他社事例ながら同業界においては、2018年7月19日にパラマウント・ネットワークのエイミー・パウエル社長が人種差別的な不適切発言を告発され解雇されている就任5年、人気ドラマ「13の理由」などを成功させてなお、懲戒の余地はなかった。

ポリティカル・コレクトネスに過敏になる昨今の時流に加え、ディズニーは現在21世紀フォックス社との事業統合などで特に敏感な時期なのかもしれない。人種や政治がらみのトラブルにより、ブランド・イメージに傷がつきかねない事態は断固として許されないのであろう。

告発記事からわずか半日の解雇

少々驚かされたのは、ディズニーがガン解雇を下すまでのスピード感だ。発端となったThe Daily Caller記事が掲載されたのは2018年7月20日午前1時56分Deadlineからガン解雇報道の第一報が登場したのは同日午後12時15分である(共に現地時間)。つまり、件の記事が掲載され、SNS上で話題になりはじめてからわずか半日での解雇通知が下ったということになる。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
写真:ゼータ イメージ

ジェームズ・ガン監督は、それまで知名度の低かったヒーロー・チーム『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』映画シリーズを全世界累計16億ドルの大ヒットに導いた。さらに『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)プロデューサーにも加わっており、同様に次回作『アベンジャーズ4(タイトル未定)』製作にも携わっている。2020年公開予定とされた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3(邦題未定)』も決定済、既にガン監督によって同作の脚本が執筆されており、今後のマーベル・シネマティック・ユニバースに無くてはならない人物のはずであった。

わずか半日で解雇が言い渡されたところから察するに、マーベル・スタジオもこの決定は「寝耳に水」となっただろう。関係者の多くにも、ニュースで知ったという人物が多数存在するはずである。マーベル・スタジオ製作社長ケヴィン・ファイギは、以前ディズニーとフォックスによる事業統合について尋ねられた際、「皆さんと同じで、私もニュース記事で読みました」「私の給与等級よりずっと上層部の話です」と言い表している。この度の解雇劇も、ファイギすら知りえない遙か天空で下されたものと推測される。

出演者らも続々コメント

監督と最も直接的な関係にあった人物の中から、いち早くコメントをツイートしたのがドラックス役のデイヴ・バウティスタだ。WWEのプロレスラー出身のバウティスタは、ガン監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でブレイク。『007 スペクター』(2015)や『ブレードランナー 2049』(2017)に出演するほどになった。バウティスタにとって、ガン監督は言わば恩人とも呼べる。

「言いたいことは沢山ある。でも、今はこれだけ言わせて欲しい。
ジェームズ・ガンはこれまで僕が会った中でも、最も愛すべき、慈愛に満ちた、善良な人間だ。彼は他人や動物たちに対しても穏やかで優しく、深い思いやりを持っている。彼は間違いを犯したのかもしれない。でも、誰だって間違いは犯すじゃないか。彼に起こったこと、僕は全くもって受け入れられない。」

また、『アントマン』(2015)でカート役を演じたデヴィッド・ダストマルチャンも、以下のコメントと共にガン監督との写真を投稿している。

「もう何年も言っているじゃないか!ジェームズ・ガンは仕事面でも、個人面においても、知りうる限り最も素晴らしい人間のひとりだ。ジェームズの才能と人徳がピタリと重なった魅力のおかげで出会うことが出来た人々が沢山いる。(そして、彼の人生の最高の伴侶、ジェニファー・ホランドも。)あなたの家族の一員に迎え入れてくれありがとう、相棒。」

ラヴェジャーズのリーダー、ヨンドゥ役のマイケル・ルーカーは、「ジェームズ・ガンは知っている。それが全てだ」と短いコメントを発表した

ジェームズ・ガン監督の実弟であり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズではロケットのモーションキャプチャーほか、ラヴェジャーズのメンバー、クラグリン役も演じるショーン・ガンは、兄とファンを想った文章を発表

最後に弟ショーンによるコメントを翻訳して、本稿を終えたい。

マイケル・ルーカー、ショーン・ガン(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)インタビュー
左:ショーン・ガン、右:マイケル・ルーカー。筆者撮影。©THE RIVER

「僕が兄のジェームズを愛し、支持していることは言うまでもありませんよね。彼は友人であれ家族であれ仕事仲間であれ、ファンであれ、赤の他人に対しても親切で、寛大で、思いやりを持っている。僕はそんなところが誇らしい。

子供の頃から、彼は将来アーティストとなり、ストーリーを語り、コミックや映画、バンドを通じて自分の声を届けたいという情熱がありました(きっと運命でした)。その声を届けることに、時には不器用で、間違っていて、バカをやってしまって苦しむこともありました。時には、ワンダフルで、感動的で、陽気なこともありました。

彼が自分の全人生を映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とMCUに費やすようになったのが6年前。映画の仕事を通じて、人にショックを与えるような人間がどんどん変わっていくのを、僕は見ていました。

僕は、大衆に向けて”角が取れて丸くなる”ことを懸念していた彼が変わっていくのを直接見ていました。”角”って、思っていたほど便利なものじゃなかったんだと気付いていったのです。こうして彼のストーリーテリングは、より良くなっていきました。僕は、不快で攻撃的なジョークで人を怒らせてばかりだった男が、心を開いていく様を見ていました。

多くの点で、彼に訪れた変化は、ガーディアンズに訪れた変化として反映されました。彼は、よくこう言っていました。ピーター・クイルがチームのみんなを”これは俺たちがやってのけるチャンスだ”と鼓舞するのは、自分自身に言い聞かせていたんだよ、って。

これは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のキャストたちが報われる経験のひとつでした。僕も含めてね。僕達は、大予算のスーパーヒーロー映画に加わっていましたが、あの映画の真髄は極めてパーソナルなものでした。授かり物のようでした。それこそ、あの映画が素晴らしい理由です。

まぁ、これは新しい情報ではないですね。ジェームズがこれまで何度も、インタビューでもっと詳しく雄弁に答えていたことです。新たな解釈ではないですね。常に物語の中にあったものです。

僕は、ファンの皆さんにはこれからも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観て、楽しんでいただきたいと思います。製作者がかつて馬鹿野郎だったということは事実ですし、その事実を理由として。どこまでいってもこの映画は、自分自身の長所を見出す物語なのです。

この映画を通じて、兄はより良い人間に成長しました。僕自身も成長させてくれました。それが誇りです。」

Source:The Daily Caller,Deadline(1,2) , Jack Posobiec,The Guardian,Dave Bautista,David Dastmalchian,Sean Gunn
Eyecatch Image:Gage Skidmore

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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