【解説】ガン監督、10年前ツイートなぜ発覚?半日後に解雇の背景 ─ 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』出演者らコメント

マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督を務め、シリーズを成功に導いたジェームズ・ガン監督が、2008〜2011年ごろに行った不適切なツイートが問題視され、ディズニーより解雇されたという報道が波紋を広げている。日本では2018年7月21日朝、Twitter上で「GOTG」「ガン監督」といったキーワードがトレンド上位で見られた。
なぜ、ガン監督の10年前にも遡る不適切ツイートが突然取り沙汰されたのか。それは、誰が行ったのか。なぜ、ディズニーはガン監督を受け入れる余地もなく、一方的な解雇を言い渡したのか。これを受けて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』出演者らは、どのように反応したのか。
この記事では、ジェームズ・ガン監督降板の詳しい経緯と背景を整理し、出演者らのコメントを紹介したい。
※ジェームズ・ガン監督、ディズニーからのコメントは前記事にて:
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』ジェームズ・ガン監督が降板 ― 過去の発言が問題視される【コメント全文和訳】

オルタナ右翼批判が発端
オープンな性格で、政治的な意見をTwitter上で度々表明することの多かったジェームズ・ガン監督は、かねてよりドナルド・トランプ米大統領の人格および政策を非難することがあった。これを目の敵にしたのが親トランプで、いわゆる「オルタナ右翼」と呼ばれる人々。件のツイートを最初に指摘したのは、右翼系ニュースメディア The Daily Callerだった。ここに至るまで、ある政治関係人物をめぐるTwitter上での騒動があった。
発端となったのは、映画監督マーク・デュプラスが、リベラルに向けて保守派の政治コメンテーターであるベン・シャピロ氏を「天才」だとツイートし、フォローを推奨したこと。
このシャピロ氏とはニュースメディアThe Daily Wire編集長で右翼。オバマ前大統領を「哲学的ファシスト」と罵る、トランスジェンダーを「精神病」と呼ぶ、映画『ブラックパンサー』に興奮する黒人をあざ笑うなどの過激な発言を繰り返しており、しばしば論争を起こしている人物である。The New York Times誌は彼を「粋がったガキの哲学者」と書いている。
この人物を称賛したことでデュプラス氏は批判を浴び、謝罪文を発表するに至る。デュプラス氏はここで、「レイシズムや同性愛嫌悪、外国人嫌悪や一切の不寛容を助長したつもりはありませんでした」「僕はときどき、興奮するとすぐに動いてしまったり、充分なリサーチや反芻を怠ってしまうことがある。本当に申し訳ございません」と陳謝している。一方のシャピロ氏は「えっと、この24時間のうちに僕は善良な人間からレイシストで性差別の偏屈者になったんですかね」とコメントしていた。
ここでジェームズ・ガン監督は、デュプラス氏を擁護し、シャピロ氏について「個人的にはベン・シャピロは母親でもフォロー解除すべきだと思う」と非難のツイートを投稿。続けて移民政策を批判し、2016年米大統領選挙におけるロシアの干渉問題など、トランプ大統領への批判コメントを加え、シャピロ氏を「クソ野郎」と言い表していた。
この報復に動いたのが、オルタナ右翼で親トランプ系ニュースサイトのThe Daily Callerだった。ガン監督失脚の直接のきっかけとなったのが、同サイトによる「保守派批判のディズニー映画監督がレイシズム、性差別、児童虐待のツイート」と題した告発記事である。ガン監督が2008年に行っていた問題発言ツイートのスクリーンショットを全10件掲載した同記事は、次のように始まる。
「デュプラス監督が保守派コメンテーターのベン・シャピロ氏を支持し、彼を”天才”と呼んだ批判で、映画監督のジェームズ・ガンがデュプラスを擁護した。ところが、Daily Caller News財団が彼のツイッターアカウントを調査してみると、ガンにはどうやら代えの人物が必要な模様である。」
これが、10年も前のツイートが今になって掘り起こされた経緯である。ここに同じくオルタナ右翼コメンテーターのジャック・ポソビエック氏が加わり、The Daily Callerが掲載した以外の2009〜2011年の問題ツイートを採掘、スクリーンショットとアーカイブURL(=ウェブ魚拓)と共にツイート。彼の一連のツイートが拡散に繋がったのである。ポソビエック氏はディズニー公式アカウントに対して、スクリーンショットと共に「ねえ @Disney!どうしてお宅の従業員 @JamesGunn はこの小児性愛ツイートを削除したのかな?」とメンションも飛ばしていた。