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『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』に見る女性エンパワーメント、「さりげなさ」に評価

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey
(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BIRDS OF PREY and all related characters and indicia c&TM DC Comics.

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が、2020年3月20日(金)より、ようやく日本でも公開となった。新型コロナウイルスの影響で鬱憤がたまる日常を、鮮やかに吹き飛ばしてくれる痛快作だ。公開初週末の評判も上々で、自粛ムードの最中ながら13万人以上を動員、動員・興収ランキングでは晴れて1位スタートを切っている。

本作は、DC映画シリーズ『スーサイド・スクワッド』(2016)に登場したマーゴット・ロビー版ハーレイ・クインの新作といった扱い。ゴッサム・シティの裏社会を名実ともに支配した最凶ヴィラン、ジョーカーという男に別れを告げ、1人の女性として自立する様子が描かれる。

そんなハーレイが挑んでいくのは、男性優位の裏社会。ハーレイは、ブラック・キャラリー、ハントレス、レニー・モントーヤ、カサンドラ・ケインと即席チーム“バーズ・オブ・プレイ”を結成し、「悪vs悪」の過激な戦いに転じていく。その構図の裏には、「女性vs男性」のテーマが隠れていると言えるだろう。この映画の女性エンパワーメント的な側面について、米メディアはどう見たか。

Voxは本作に登場する女性キャラクターたちについて、「強い女たちであるのに、男に不当な扱いを受けており、あるいは、男にペットのように所有されている」と分析している。ハーレイ・クインについては、「もしも運命が違っていて、彼女がジョーカーに出会っていなかったら、ヴィランにはならなかったのかもしれない」とも考察しているのだ。“バーズ・オブ・プレイ”を追い詰める極悪人ブラック・マスクを演じるユアン・マクレガーはこう話す

「映画に登場する女性差別者は過激だったりしますよね。女性をレイプしたり、殴ったり。そういう人々を描くことは大切ですよ、現実に存在するし、間違いなく最低ですから。けれども『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』の場合、日常的な女性差別が、セリフの中にいつも少しだけ入っているんです。男性が気づかないうちに口にしているマンスプレイニングだとか、そういうものが脚本にさりげなく入っている。見事だと思いました。
※マンスプレイニング:男性が女性を見下しながら何かを解説・助言すること。

とあるシーンでは、エラそうな男に「のろま(dumb)」「アバズレ女(slut)」と罵られ、ハーレイが無邪気にその膝をヘシ折る反撃に出る。「バン!ただの反撃ではない。これぞ21世紀のフェミニストだ」と興奮を隠さない米Varietyは、本作における女性解放思想の姿勢を評している。「『ワンダーウーマン』や『キャプテン・マーベル』は、女性のエンパワーメントを大真面目に描いた女性ヒーロー映画だった。ところが『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』は、その点に全く責任を抱いていない。本作の女性は、これまでのヒロインたちよりもワルで、それはなぜかと言うと、彼女たちがほとんど(女性エンパワーメントといった使命を)全く気にしていないからだ。」

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey
(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BIRDS OF PREY and all related characters and indicia c&TM DC Comics.

この点において、批評家のスコット・メンデルソーン氏は「楽しくも気取らない映画」と評し、Voxはこう書いている。

「『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』は楽しくて弾けるような映画だが、女性解放思想についてもきちんと注意を払っている。[中略] ジョーカーに搾取された女性として知られるハーレイとその仲間たちは、よくある“お綺麗”なヒロインよりも汚れていて、荒々しい。しかし、脚本はハーレイとバーズ・オブ・プレイを、彼女たちが象徴するものから誇張しようとしていない。ここが『ワンダーウーマン』や『キャプテン・マーベル』との違いだ。」

この映画に、男性目線で描かれるシーンはない」とレビューするのは、米Colliderのアメリア・エンバーウィン。アメリアは「彼女は過去、男性目線で描かれた」として、こう指摘している。「『スーサイド・スクワッド』と今作での描かれ方の違いを見ると、“男性目線”というものが良く分かるだろう。今作の衣装もセクシーではあるが、彼女が着たいと思うようなものになっているし、もう“daddy”の文字は見られない。」『スーサイド・スクワッド』でハーレイが着ていたピチピチTシャツには、『Daddy’s lil Monster』=『パパ(ジョーカー)の小さなモンスター』と描かれていた。

劇中では、酒を飲んで酔ったハーレイが、クラブの外で男に連れ去られそうになるシーンがある。後にハーレイと手を組むブラックキャナリーは、この時点でまだ互いに仲を深めていないにも関わらず、彼女を助けるため男たちを蹴散らす。映画がさりげなく捉えた視点の鋭さについて、アメリアはこうも書いている。「女性って、今もまだ性悪に描かれることもある。でも、シスターが危険な目にあっているのを見た時の私たちをナメないで欲しい。」「親友かどうか、宿敵かどうかは関係ない。ほとんどの場合、私たちはそういう状況を見たら、介入する。女性なら分かると思う。

このレビューでアメリアは、そもそも「コミックやコミック原作作品とは、男性のためだけに作られたわけではないのだ」と主張しているが、これはマーゴット・ロビーの考え方にも通じている。「“アクション大好きだしアクション映画も最高。で、私は女子ですけど、好きなものも決められなくちゃいけないワケ?”って私は思う。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey
(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BIRDS OF PREY and all related characters and indicia c&TM DC Comics.

「アクションの世界で、ガール・ギャングの映画っていうのはあまり観たことがないですよね。」「もちろんこのお話は、女性監督じゃなくちゃ。女性監督にとって、大予算の映画を製作するチャンスになりますから」というマーゴットのポリシーもあり、監督にはスーパーヒーロー映画史上初のアジア人女性、キャシー・ヤンを抜擢。『Dead Pigs』で2018年のサンダンス映画祭審査員特別賞を勝ち取った若手だ。脚本は『バンブルビー』(2018)を書いたクリスティーナ・ホドソン。いずれも、若い感性で新時代を切り開く女性クリエイターである。製作の顔ぶれからも、この作品やスタジオが何を大切にしているかが分かるだろう。

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Source:Vox,Variety,Collider

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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