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ハリウッド、新型ウイルスによる損失額が2兆円に及ぶおそれ ─ 公開延期&撮影中断相次ぐ、NY・LAで全映画館閉鎖、専門機関がイベントの8週間延期を推奨

Photo by Martin Jernberg on Unsplash

新型コロナウイルスの影響により、ハリウッドで発生する損失が200億ドル(約2.1兆円)に達する可能性が浮上している。米The Hollywood Reporterが報じた。

ウイルスの感染拡大を受けて、ハリウッドの大手スタジオは、映画の公開延期や、映画・テレビドラマの製作中断を相次いで決定している。テレビ局も一部番組の制作を中止した。またブロードウェイの劇場が閉鎖されたことに続き、各地の映画館も閉鎖され始めている。ニューヨーク市とロサンゼルス市は、すべての映画館を3月17日(現地時間)午前9時から閉鎖することを決定。ロサンゼルスにおいて、閉鎖は3月31日の深夜まで続く見込みだ。天候以外の理由で、映画館がまとめて閉鎖されるのは歴史上初めてだという。

この決定に先がけ、3月13日には、ハリウッドが新型コロナウイルスの影響で被る損失額は100億ドル台に達するとの初期予測が発表されている。同日時点で、世界興収には少なくとも70億ドルの影響が生じており、5月までの動きを含めれば、損失額はさらに100億ドル増加。累計額は170億ドルとなり、影響がその後にも及べば、損失はさらに膨らむ見込みだ。映画スタジオのみならず、テレビ局や映画館、関連企業や周辺の店舗まで含めれば、損失の大きさは、もはやそうした域にはとどまらないだろう。

現在、世界規模で公開延期となった大作映画には『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『ムーラン』『クワイエット・プレイス PART II』『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』がある。既報によれば、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を手がける米MGMには、プロモーションやグッズ展開のため、すでに3,000〜5,000万ドルの損失が発生。ただし予定通りの公開に踏み切った場合、興行への影響から、3億ドル以上が失われる可能性もあったという。なお、米国公開直前で延期が決定された『ムーラン』『クワイエット・プレイス PART II』にも大きな損失が発生しているとみられる。

スタジオ各社は、撮影中断を余儀なくされた作品について、新たなコストが発生する問題にも直面している。ディズニーは実写映画『リトル・マーメイド(原題)』や、マーベル・スタジオ作品『シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス(原題)』の撮影を中断したが、両作のような規模であれば、中断期間も1日あたり30~35万ドルの費用が発生するとのこと。作品規模を鑑みれば、ユニバーサル・ピクチャーズ『ジュラシック・ワールド/ドミニオン(原題)』、ワーナー・ブラザース『ザ・バットマン(原題)』なども同様のコストを支払うものとみられる。またテレビドラマの場合、製作中断となった作品も放送は継続され、シーズンの終了が迫ってくる。撮影再開後、非常にタイトなスケジュールでの制作、あるいは大幅なコスト削減が求められるシリーズが出てくる可能性も低くはない。

今後、新型コロナウイルスがハリウッドに与える影響の度合いは予測できず、あらゆる局面において、状況は予断を許さない。3月15日(米国時間)、米国疾病予防管理センターは、50人以上が参加する大規模なイベント・集会を8週間にわたって延期することを推奨する方針を発表した。マーベル作品『ブラック・ウィドウ』をはじめ、いまだ米国公開の延期が発表されていない作品に関する動きにも注視が必要だ。

Sources: The Hollywood Reporter, Variety, IndieWire, Deadline

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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