【レビュー】探偵マーガレット・クアリーがカッコ良すぎる『Honey Don’t!』クリス・エヴァンス共演 ─ イーサン・コーエン新境地ダークコメディ

(カナダ・トロントから現地レポート)『サブスタンス』でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされ、今もっとも注目を集める女優のひとりとなったマーガレット・クアリー。彼女が主演を務める新作ダークコメディ『Honey Don’t!(原題)』が、現地時間8月22日に北米で劇場公開を迎えた。
監督を務めるのは、コーエン兄弟の“弟”として知られるイーサン・コーエン。前作『ドライブアウェイ・ドールズ』(2022)に続く本作は、全3部作を予定している“レズビアンB級映画”の第2作目にあたる。脚本は、コーエンの妻であるトリシア・クックとの共同執筆だ。
クアリーの脇を固めるのは、マーベル・シネマティック・ユニバースのキャプテン・アメリカ役で知られるクリス・エヴァンス、「アガサ・オール・アロング」(2024)のオーブリー・プラザ、『モンスター上司』のチャーリー・デイなど。
主人公は、カリフォルニア・ベーカーズフィールドを拠点に活動する私立探偵のハニー・オドナヒュー(クアリー)。新しい依頼人が、面会予定の前日に謎の交通事故死を遂げたことをきっかけに、ハニーは独自に調査を開始する。その中で、地元の宗教カルト指導者ドリュー・デヴリン牧師(エヴァンス)へとつながっていく。一方、ハニーは地元警察の刑事MG(メアリー・グレース)・ファルコーネ(プラザ)と急速に距離を縮め、恋愛関係へと発展していくのだが……。
マーガレット・クアリーはこれまで『哀れなるものたち』(2023)、『サブスタンス』(2024)などで自然体の美貌を発揮し、その美しさで多くの人を魅了してきた。そんな彼女が本作では、“男前な探偵像”を体現しており、常に冷静さを保ち、出会う人物たちを次々と出し抜いていく強い女性を堂々と演じている。
エヴァンスは、MCUでキャプテン・アメリカを演じ切った後、バラエティ豊かな役どころに挑戦していることが話題となっているが、本作ではとことん自己中心的な牧師を怪演し、新境地を開拓。さらにチャーリー・デイ演じる刑事マーティは、事件解決よりもハニーを口説くことに熱心という滑稽さを披露。コーエン監督らしく、小さなコミュニティの人々をブラックユーモアたっぷりに描き出している。ハニーが真っ赤なハイヒールで殺人現場を訪れる場面や、青いオープンカーを走らせる姿など、フィルム・ノワールや70年代B級映画を思わせる演出も見どころだ。
コーエン監督と妻のクックは米The Hollywood Reporterのインタビューにて、この映画を「未開拓の市場」と表現している。「レズビアンの探偵映画なんて、ほとんど見かけません」「B級ジャンルは、主な映画が“ストレート”です。だから私たちは、少し逆転してみようと考えました。なぜなら、クィア映画、特にレズビアン映画は、時々重たくなりがちだからです。私たちは、楽しくて気楽で、自分を真剣に捉えすぎないものをやりたかったのです」。
クック自身はレズビアンであり、夫婦ともに結婚生活の外に別のパートナーを持つという関係を築いている。そんな自由な発想を持つ二人が共同で執筆した作品には、クイア表現やセクシーなシーン、皮肉や皮肉めいたユーモアが満載。さらには過激な暴力描写も盛り込まれている。
カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングでワールドプレミアを飾り、約6分半のスタンディングオベーションを受けた本作。週末の米国内興行収入ランキングでは、『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』、『ウェポンズ(原題)』、『シャッフル・フライデー』、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』、『バッドガイズ2(原題)』、『Mr.ノーバデイ2』、『スーパーマン』、『The Naked Gun(原題)』に次ぐ 9 位にランクインする結果となった。シリーズ第3作目となる『Go, Beavers!(原題)』はまだ開発初期段階だが、果たしてどんな“レズビアンB級映画”に仕上がるのか、期待が高まる。
『Honey Don’t!』の日本公開は今のところ未定となっている。
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