ディズニーCEO、巨匠監督のマーベル映画批判に反論「困惑しています」 ─ ベネディクト・カンバーバッチ、MCU映画に改めて賛辞送る

マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ケン・ローチといった巨匠監督たちが、マーベル映画への批判的なコメントを相次いで投げかけているなか、ウォルト・ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOが公の場で反論の言葉を述べた。
一連の発端となったのは、スコセッシがマーベル映画について「あれは映画じゃない」「最も近いのは、良くできたテーマパーク」「人間が他者の感情や心に訴えかけようとする映画ではありません」と述べたこと。『ゴッドファーザー』3部作や『地獄の黙示録』(1979)などのコッポラは、マーベル映画を“despicable(浅ましい、卑劣)”だと言い、『麦の穂をゆらす風』(2006)『わたしはダニエル、ブレイク』(2016)のローチも「ハンバーガーのようなもので、商品として作られている」「映画という芸術には無関係」だと述べたのである。
2019年10月22日(米国時間)、アイガー氏は米Wall Street Journal主催のカンファレンス・イベントに登場。スコセッシとコッポラの発言には「困惑しています」とコメント。「お二人が作ってきた映画のことを思うと、私自身も彼らの映画が好きですし、私たちはみんな彼らの作品を観てきたわけで、非常に尊敬しています」と前置きしつつ、大勢の作り手をプロジェクトに抱えるディズニーのトップとして、クリエイターを守る姿勢を示している。
「フランシスが、私たちの映画に“despicable(浅ましい、卑劣な)”という言葉を使ったことについて言えば、それは大量殺人を犯したような人間にふさわしい言葉だと思います。[中略]彼らの批判を私が理解できないのは、私たちは人々が非常に楽しんで観ている映画を作っていて、彼らもまたずっと同じことをしてきたから。映画について文句を言いたいのなら、それは確かに正当なことです。けれども、作品に関わる全員に対しては非常に失礼だとは思います。(マーベル映画に関わる人々も)彼らの映画に関わっている人々と同じく、一生懸命に仕事をしているし、クリエイティブの魂を注ぎ込んでいますよ。」
またアイガー氏は、ヒーロー映画のみならず、ハリウッドにおける大作映画のひとつの分岐点となった感すらある『ブラックパンサー』(2018)を例に挙げながら、こんな言葉も口にしている。
「『ブラックパンサー』を作ったライアン・クーグラーの仕事が、マーティン・スコセッシやフランシス・フォード・コッポラがそれぞれの映画でやってきたことよりも劣っているって言うんですか? ウソでしょ?」
一方、マーベル・シネマティック・ユニバースでドクター・ストレンジ役を演じているベネディクト・カンバーバッチも、米Sirius XMのラジオ番組にて登場し、「素晴らしいフィルムメーカーたちが最近議論しているのは知っていますよ」と本件に言及した。なお、カンバーバッチは自ら進んでこの話題に触れている。
「(マーベル映画の)フランチャイズがすべてを乗っ取ってしまう、というんですよね。だけど僕たち俳優にとって、両極端な予算の映画にいろいろ出られるのは幸運なこと。もちろん僕も(スコセッシの意見には)賛成です。一人の王がすべてを支配し、独占するようなことは望んでいない。けれども、幸いそのようにはなっていないし、我々フィルムメーカーが、あらゆるレベルで仕事を続けていることについてしっかりと考えるべきだと思いますね。」
またカンバーバッチは、アイアンマン役を務めてきたロバート・ダウニー・Jr.の演技に賛辞を述べてから、コメディやシリアス、アクションといったさまざまな方向性を見事に成立させるマーベルの映画づくりにも「素晴らしい」と賞賛の言葉を贈った。
「これも芸術のひとつの形ですよ。過小評価する方もいるけれども、非常に高いレベルの技術だけでなく、どんなことを描くのかといったことが(作品には)求められるし、人々に語りかけられるだけの人気も必要なんです。」
Sources: Fast Company, Sirius XM, Comicbook.com