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米メディアでAIが執筆した『スター・ウォーズ』まとめ記事に誤情報

スター・ウォーズ

AIが生成した『スター・ウォーズ』のまとめ記事に誤情報が含まれていたため、サイトが訂正作業や原因究明に追われるという出来事があった。このAI記事が掲載されたのは、テクノロジー系メディアGizmodo内のio9。『A Chronological List of Star Wars Movies & TV Shows(スター・ウォーズ映画&テレビドラマの年表)』というタイトルのもので、『スター・ウォーズ』全作品が劇中の時系列順に並んで紹介されているものだ。

この記事ではタイトルに「テレビドラマ」と含まれているにも関わらず、ディズニープラスで配信されているドラマ群「キャシアン・アンドー」「オビ=ワン・ケノービ」「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」への言及が丸々抜けていた。ほか、アニメシリーズ「クローン・ウォーズ」が、『スカイウォーカーの夜明け』後の出来事として、誤って紹介されていたという(現在は人の手によって正しい情報に修正されている)。

io9副編集長のジェームズ・ウィットブルックは、io9の編集メンバーはこのAI記事の作成に関与していないとツイート。同記事の存在について、ウィットブルック自身もこうツイートする10分前に知ったばかりだったという。

ウィットブルックは声明文の中で、同記事について「粗悪に書かれたもので、基本的なミスに満ちている」「私たちの読者に対しても、ここで働く人たちに対しても、恥ずべきものであり、公開できるものでもなく、無礼なものである」と述べ、「私たちチームが、この容認し難いミスがなぜ公開されてしまったのかを明らかにするため、実務からひどく離れた時間を費やさなくてはならなかったのも恥ずべきこと」と記した。

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AI記事 登場経緯と考察

io9運営のG/O Mediaは2023年6月29日付で、AIボットによる記事生成の試験運用を開始すると発表していた。これに対し、東部全米脚本家組合に所属するGizmodoグループの労働組合GMG Unionは抗議文を突きつけている。生身のライターの価値を蔑ろにし、何十年もかけて築き上げたジャーナリストとしての信頼を損ね、ブランドを傷つけ、仕事を脅かすものだと主張するとともに、AI記事生成計画を中止して「本物のジャーナリストによる本物のジャーナリズムに投資するよう強く求める」と訴えていた。

それにも関わらず、誤情報を含んだ『スター・ウォーズ』まとめ記事が掲載されてしまったことで、組合は「我々の声明文は無視され、AI生成記事の掲載が推し進められてしまった。これは非倫理的で、容認できません。署名に“Bot”とついている記事はクリックしないで」と非難。AI活用方針は、2023年1月に新たに就任したCEOや編集ディレクターらによって推進されていたものだったと明かしている

従来、記事の作成は数時間〜数日を要するものだが、これをAIがものの数秒で仕上げてくれるのなら、メディアの経営陣にとって収益性改善のための魅力的な手段となることは間違いない。AIは強力な創造ツールだが、しかし情報の正誤を扱い、そこに信頼を委ねるという場合には、まだ完全には実用的でない。

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今回の記事でG/O MediaがどのようなAI生成ツールを用いたかは明らかにされていないが、代表的なものであるChat GPTは、現時点で2019年までの情報しか搭載されていない。初出時に記述が抜けていた「キャシアン・アンドー」「オビ=ワン・ケノービ」「ボバ・フェット」は、いずれも2021年以降の作品だ。

この騒動でメディアの運営者たちは、現時点で記事作成におけるAIはあくまでもツールに過ぎないということを学んだことだろう。ツールとは使用者の腕や感性によって利器とも鈍器ともなりうる。そもそも『スター・ウォーズ』の作品順を簡易紹介するだけの記事に、果たしてコンテンツ上の価値が今更あるのだろうかという点も、ツールの使用者は熟慮すべきだったはずだ。

Source:io9,Variety

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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