『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は原作小説をいかに継承したか ― 原作者スティーヴン・キングが熱く語る

ホラー映画史上No.1ヒット、2017年の映画シーンを席巻した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のデジタル配信が、2018年1月24日(水)に早くも開始された。ブルーレイ&DVDの発売とレンタルも2月21日(水)より開始される。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が注目を集めたのは、シンプルに怖いホラー作品でありながら、同時にまごうことなき青春映画としての強度を獲得した点にある。その完成度は、原作者スティーヴン・キングからも太鼓判を押されたほどだ。
しかし、そもそも長大な原作小説『IT』(文春文庫刊)が“傑作”と評されている以上、そのストーリーを時間に制約のある長編映画で描くことは困難を極める作業だったはずだ。アンディ・ムスキエティ監督は、長大な物語を2部作に分けた上で、そのテーマや精神性をいかにして継承したのだろうか?

このたび、原作者であるキング自身が、原作者にしかできない語り口でその秘密を明かしてくれた。作品を誰よりも知り尽くした男は、映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に何を見たのか。国内未使用のテキストより、贅沢すぎるインタビューをたっぷりとお届けしよう。

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原作のテーマを「継承」する

キングによる原作小説『IT』が米国にて刊行されたのは1986年のこと。映画版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の主な舞台は1980年代後半だが、実は原作で少年時代として描かれるのは、キング自身が少年だった1950年代なのである。キングがまず賞賛の声を送っているのは、この大胆な時代設定の変更だった。

「『IT』読者の第一世代が激しい反応を示してくれたのは、(作品が)彼らの幼少期の思い出を呼び起こしたからなんです。この小説には、多くの子どもたちが経験してきたことがたくさん詰まっています。1950年代に育った読者は、子どもたちや当時あったことのような出来事に強く反応したんですよ。

今回の映画はすごく独創的なんですが、なかでも特に優れているのは、子どもたちの時代を1980年代にアップデートしたことですよね。続編が作られるなら(編注:すでに製作は決定済み。2019年9月米国公開予定)、彼らが成長した後は現在が舞台になるわけでしょう。
この映画を観る人は、小説にも描いた、普遍的な出来事に共感してもらえると思います。いじめや初恋、それから学校の外に出ることや、少しだけ両親から離れて友達と過ごすことがいかに素晴らしいのか。映画の設定を1980年代にしたことで、幼い頃を思い出してもらえますよね。

 

キング自身、本作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を、「ただのホラー映画じゃない、共感できる作品」だと語っている。彼が注目したのは、アンディ・ムスキエティ監督の演出手腕だ。

「アンディ監督は、子どもたちや彼らの友情についてよく理解しています。1980年代に育った子どもたちのリアリティを捉えていて、そこがいいんですよね。私は当時子どもを育てていたので、感じるものが二倍あるわけです。子どもたちが経験することにも、すごく共感しますしね。」

ちなみにキングは、自身の作品に共通する“信じること”というテーマが、本作できちんと扱われたことにも感慨を覚えたようだ。

「私の小説では、神への信仰を、邪悪なものに対抗する善の力として描いています。『IT』で描いた信仰は、自分の友人に対する信頼、苦難の中での友情です。
映画でも子どもたちの一人が、“あいつ(=ペニーワイズ)は僕たちを狙ってくる。あいつは僕らよりも強い。でも僕らが協力すれば、あいつよりも強い結束になるんだ”というようなことを言いますよね。これが映画の終盤をすごく印象的なものにしているんですよ。」

なおキングは、ルーザーズを演じた子役たちや、ペニーワイズ役を怪演したビル・スカルスガルドにも「素晴らしかった」と惜しみない絶賛を送っている。ちなみにルーザーズの中で特に心を打たれたのは、リッチー・トージア役のフィン・ウルフハードだったとか……。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

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原作の精神性を「継承」する

むろん、長大な原作小説『IT』を、そのまま映画にすることは物理的に不可能だ。そこで製作陣は、原作のテーマを引き継ぎながらストーリーを省略し、独自のシーンを追加して映画化を実現させている。
ではアンディ監督たち製作チームは、原作小説を再構成する上で、そして映像化する上で、原作に流れている精神性をどのように採り入れたのだろうか? キングが強調しているキーワードは“ストーリーテリング”だ。

「アンディはこの映画に、前作『MAMA』(2013)と同様、非常に豊かなビジュアルをもたらしています。しかし、その豊かなビジュアルは、常にストーリーテリングによってコントロールされているんです。いつでも物語が最優先で、一度たりとも横道にそれることがない。きちんと物語を掴んでいるので、すべてがスリリングなんですよ。

最初に見とれてしまったのは、ジョージーが紙のボートを側溝まで追いかけていくオープニング・シークエンスでした。まるで本物の嵐みたいで、いかにもハリウッド的な嵐じゃないんです。雨が激しく降っていて、水面に影や日光の反射が映っていて。不吉な印象のシーンですよね。」

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

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こうして全編にわたって設計された映像の数々は、原作者であるキングの目にも魅力的に映ったようだ。たとえ、それが原作には存在しないシーンだったとしても……。

「もうひとつ恐ろしかったのは、小説にはないんですが、スタンリー・ユーリスがラビのオフィスで女性の肖像画を見る場面です。ピカソのような絵で、女性の頭が歪んでいるんですよ。彼女が出てきた時はゾッとしましたね。画面に出てくると、ほんとに、ほんとに怖くて。アンディは子どもが怖がるものを知ってる、それだけ子どもの頃を覚えてるんだな、と思いましたよ。」

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』原作者スティーヴン・キングすら怖がったシーンとは

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に対して、キングは「本当に感謝しています。映画のストーリーに、そしてエンターテインメントであることに感謝します」と述べている。
本作は傑作小説の映画化に成功した一事例として、原作ファンはもちろんのこと、映画・文学ファンが絶対に見逃せない一本といっていいだろう。しかしながら何よりも大切なのは、本作がそうした堅苦しい言葉を抜きにして、キング自身がいうように、純粋な「エンターテインメント」として完成していることなのだ。

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 』のブルーレイ&DVDは2018年2月21日(水)より発売。デジタル版は、一足早く2018年1月24日(水)より配信を開始した。

(文・翻訳:Takatoshi Inagaki)

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