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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』あの重要キャラ、俳優不在のまま制作されていた ─ VFXスタッフが創作の裏側明かす

いまやハリウッドの映像技術は、映画というものの作り方を大きく変えてしまった。大作映画として映像表現の更新に取り組みつづけるマーベル・スタジオは、観客の目には直接見えない創作の舞台裏でも技術の進歩の恩恵にあずかっている。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)では、サノス役のジョシュ・ブローリンとドクター・ストレンジ役のベネディクト・カンバーバッチが、スケジュールの都合で一度も対面しないまま共演シーンを撮影した。サノスの手下プロキシマ・ミッドナイトは2日間の撮影で「誰とも一緒に演技をしなかった」という。そして今回、また別の登場人物が独立して製作されていたことが明らかになった。“ソウル・ストーンの番人”である。

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のネタバレが含まれています。

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

レッドスカルは「俳優不在」のまま作られていた

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、惑星ヴォーミアでソウル・ストーンの番人として有名ヴィランが登場する。キャプテン・アメリカの宿敵で、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)に登場したレッドスカルだ。演じたのは同作のヒューゴ・ウィービングではなく、「ウォーキング・デッド」(2010-)などで知られる俳優ロス・マーカンド。スター俳優のモノマネを特技としており、その才能が買われての出演となった(ロス本人が語る出演秘話はこちらの記事にて)。

しかし、ロスはレッドスカルのモーションキャプチャーを務めたわけではなかったという。レッドスカル登場のカギを握った米国のVFX制作会社Digital Domainのケリー・ポート氏は、米IGNの取材で「ロスは後から声を入れてくださいました。レッドスカルが歩いたりするシーンの撮影現場では、代役の方が演技をしていたんです」と語っている。レッドスカルはヒューゴでもロスでもなく、いうなれば“俳優不在”の状態で生み出されていたのだ。

「(制作が始まった時点では)レッドスカルがどんな見た目になるのか、デザインの可能性は本当に幅広かったですね。たとえば、ヒューゴがあの(『ザ・ファースト・アベンジャー』当時の)メイクで戻ってくる、その方向でやってみたらどうなるのか、とか。ただしレッドスカルはテッセラクトでヴォーミアに転送されてしまった、だから今回は別世界風のデザインだったんです。」

コンセプトアートの段階では、テッセラクトがレッドスカルに大きな影響を与えたために、見た目がさらに骸骨に近づいているという案もあったという。ただしケリー氏によれば、今回は「その中間に決めた」とのこと。テッセラクトがレッドスカルに影響を与えた部分、またソウル・ストーンの番人であることをレッドスカルが自ら選んだ部分の両方を示せるデザインが採用されたのだ。

また、実際にCGでレッドスカルが描かれるにあたっては、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の制作時に使用された素材も参考にされている。ケリー氏いわく「マーベルが素晴らしいのは、どんなキャラクターにも巨大なライブラリが用意されていること」なのだそうだ。

「もし初代のアイアンマンが必要ならば当時のアーマーを見ることができますし、『ザ・ファースト・アベンジャー』だったらメイク姿のヒューゴのスキャン・データが手に入ります。キャラクターの作業をする時は、いつでも私たちは写真を撮ってスキャンしておくんですよ。だから作業のスタート地点で、そのポイントから仕事を始められる。この映画のレッドスカルが完成する以前は、基本的には(レッドスカルの)見た目を修正していたんですよ。」

ちなみにケリー氏によれば、意外にも、レッドスカルの撮影にロス本人がいなかったのは「良かったことでもある」という。

「レッドスカルの、この世ならざる雰囲気というものが偶然にわかったんです。彼はその場にいるようであり、いないようでもあり……。」

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』MovieNEXは発売中。続編『アベンジャーズ/エンドゲーム』は2019年4月26日(金)全国ロードショー。

Source: IGN

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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