『ジャスティス・リーグ』新脚本家、本編の33%以上を修正か ― 「脚本」クレジットの複雑な事情

DCエクステンデッド・ユニバース作品『ジャスティス・リーグ』で、製作を降板したザック・スナイダー監督に代わって指揮を務めているジョス・ウェドンが「脚本」としてクレジットされていることが先日判明した。これを受けて米国メディアや業界関係者は、“実際のところジョス・ウェドンはどこまで関与しているのか”という疑問への分析を始めている。
結論からいって、おそらくジョスは『ジャスティス・リーグ』本編の33%以上を再執筆した可能性が高い。その背景には全米脚本家組合の制定したルールがあるのだが……その複雑な事情を本記事では解説していきたい。
全米脚本家組合の定めたルール
愛娘の死によって降板したザック・スナイダーに代わって、現在ジョス・ウェドンは『ジャスティス・リーグ』の再撮影や編集といったポスト・プロダクションを担当している。再撮影・再編集は大規模なものになっているようで、ジョスは作風を明るくしているとも、エンディングを変更しているとも報じられているのだ。あくまで作業はザックの指針に沿って進行しているという声もあるが、ジョスが事実上の“新監督”として本作に携わっていることは間違いない。
ただし結果として、ジョスは脚本家としてクリス・テリオと連名でクレジットされるにとどまった。これはいったい何を示しているのか……『48時間』(1982)や『コマンドー』(1985)、『ダイ・ハード』(1989)などの脚本を執筆したスティーヴン・E・デ・スーザ氏はTwitterである指摘をしている。
As per WGA rules, this means he rewrote at least 1/3 of the script https://t.co/SMphjO8wFj
? Steven E. de Souza (@StevenEdeSouza) 2017年8月30日
「WGA(全米脚本家組合)のルールによれば、これは彼が脚本を3分の1以上再執筆したことを意味する。」
たしかに全米脚本家組合には、脚本家を「脚本」としてクレジットするためのルールが存在する。いわく「脚本の33%以上への貢献を示した脚本家は“脚本”にクレジットされるべき」だというのだ。ちなみに原作の一切存在しない「オリジナル脚本」の場合は、作家の貢献度が最終稿の50%以上であることがクレジットの条件になるという。
「33%」どうやって判断する?
しかしながら全米脚本家組合は、定められたルールである「33%」という数字を非常に数値化しづらい基準で判断している。セリフの量や執筆したページ数ではなく、提供された資料や情報から以下の要素を考慮したうえで決定を下すというのだ。
- 劇の構造(dramatic construction)
- 原型のシーン、および変更されたシーン(original and different scenes)
- 登場人物の性格描写、人物の関係性など(characterization or character relationships; and)
- セリフ(dialogue)
こうしたジャッジの難しさは、実はジョス・ウェドン自身が20年以上に経験していることだ。キアヌ・リーヴス主演『スピード』(1994)に参加したジョスは、同作に脚本家としてクレジットされたグレアム・ヨストいわく「セリフの98.9%を書いていた」にもかかわらず脚本家としてクレジットされなかったのである。
のちにジョスは『スピード』について、「組合のルールには従わないといけません。[中略]セリフをすべて書き直してもクレジットされなかった。彼ら(組合)は私がプロットを十分に変更したとは思わなかったんです」と話している。
同作のコリン・トレボロウ監督は、製作の初期段階で脚本をリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァーに依頼。二人は初稿をきちんと執筆したのだが、監督とデレク・コノリー(脚本家)はリック&アマンダによる初稿をすべて書き直して二人のクレジットを削除してしまった。これにリック&アマンダが抗議したことから調査が行われた結果、組合は「再執筆後の脚本は(クレジットを削除するほど)元の脚本から大きく異なるものではない」と判断。結果としてリック&アマンダの名前は「脚本」にクレジットされている。
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