ホアキン・フェニックス版『バットマン』検討されていた ─ 『ブラック・スワン』監督のアイデア、実現せず

『ジョーカー』(2019)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたホアキン・フェニックスが、その宿敵であるブルース・ウェイン/バットマン役として検討されていたという。『ブラック・スワン』(2010)のダーレン・アロノフスキー監督が、かつてワーナー・ブラザースに企画を提案していたことを明かした。
英Empireによれば、アロノフスキー監督が『バットマン』映画版の企画に関与していたのは2000年代前半のこと。出世作『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)を経て、コミックの新たな解釈に挑もうとしていたのだ。そのとき、主演俳優として希望したのがホアキン・フェニックス。『グラディエーター』(2000)で多くの映画賞に輝いたばかりで、業界でも大きな注目を集めていたことだろう。しかしワーナー側は、ホアキンではなく『ラストサマー』シリーズのフレディ・プリンゼ・Jr.を主演に据えたがったという。
「ああ、僕たちはぜんぜん別のことを考えてるんだな、と思ったのを覚えてますね。本当の話ですよ、そんなこともあったんです。僕が書いた『バットマン』は、最終的に作られた映画とはまったく違う解釈でした。」
“最終的に作られた映画”とは、クリストファー・ノーラン監督『バットマン ビギンズ』(2004)のこと。アロノフスキーの脚本は、同作とおなじく、コミック『バットマン:イヤーワン』に基づいており、解釈はコミックに近かったという。ただし、内容は『狼よさらば』(1974)や『フレンチ・コネクション』(1971)『タクシー・ドライバー』(1976)の影響を受けた、バットマンが生き地獄に直面する物語だった。コミックを手がけたフランク・ミラーも脚本に参加したが、ダークな構想には彼さえも驚いたそうだ。アロノフスキーいわく、「直前の作品が『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)だったので、なんとか土台ごとひっくり返そう、作り直そうとしていました」。
キャスティングゆえか、それともストーリーゆえか、いずれにせよアロノフスキー監督による『バットマン』は実現しなかった。しかし、もしもホアキンのバットマンが実現していたなら、おそらく『ジョーカー』が私たちの知る形で実現することはなかっただろう。その『ジョーカー』は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得し、ホアキンがアカデミー賞を射止め、コミック映画の歴史を変えた。そのことを思えば、ホアキン&アロノフスキー版『バットマン』が叶わなかったことも、もしやひとつの運命だったようにさえ思えてくるではないか。
Source: Empire