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故スティーブ・ジョブズ、『アイアンマン2』を気に入らず ─ ディズニーCEO、マーベル買収とジョブズの秘話明かす

[左]CC0 Creative Commons [右]Photo by Ben Stanfield https://www.flickr.com/photos/acaben/541326656/ Remixed by THE RIVER

米Apple(アップル)の創業者兼元CEOである故スティーブ・ジョブズは、『トイ・ストーリー』シリーズなどでおなじみピクサーの元CEOでもある。ジョブズは自らピクサーの株を約50%保有しており、したがって2006年にウォルト・ディズニー・カンパニーがピクサーを買収したのち、ディズニー全体の株を約7%保有する筆頭株主となった。その後2011年に病没するまで、ジョブズはディズニーの取締役を務めたのである。

そんなジョブズは、実はディズニー傘下のマーベル・スタジオが2010年に発表した『アイアンマン2』を気に入っていなかったようだ。ディズニーのボブ・アイガーCEOが、回顧録『The Ride of a Lifetime: Lessons Learned from 15 Years as CEO of the Walt Disney Company(原題)』にて明かした。

「『アイアンマン2』が公開された際、スティーブは息子さんを連れて映画を観に行ってくれました。次の日に電話がかかってきて、“昨日の夜、リード(編注:息子の名前)を『アイアンマン2』に連れていきましたよ”と言うんです。“最低だった”と。

むろん『アイアンマン2』の評価は人それぞれ異なるだろうが、当時のジョブズにとって、『アイアンマン2』を観ることには特別な意味があったのかもしれない。というのも、『アイアンマン2』は、ディズニーがマーベルを2009年に買収したあと初めてマーベル・スタジオから発表された作品だったからだ。ディズニー取締役のジョブズからすれば、新たに加わったスタジオがどんな作品を発表するのか視察する意味合いもあったわけである。

アイアンマン2
『アイアンマン2』(c) 2010 Marvel

Vanity Fairでは、ディズニーがマーベルの買収を検討する際、アイガー氏がジョブズに相談を持ちかけていたことが明かされている。ピクサーの買収後、2人は親友同士になったそうだ。

「ピクサーの買収が非常にうまくいった後から、私たちはマーベルの買収に興味を抱いていました。なのでスティーブと会ってビジネスを話をしたんです。彼は人生でコミックを一度も読んだことがないというので、私はマーベルのキャラクター事典を持ってきて、彼にユニバースの説明をして、どんなものを買いたいと思っているのかを見せました。彼は10秒くらい見ると、事典を横に置いて、“これはあなたにとって大切なもの?本当に欲しいんですか?次のピクサーになりますか?”と聞いたんです。」

こうしたやり取りを経たあと、映画について「最低だった」と言われたアイガー氏の心境はいかばかりかと思われるが、ともあれ『アイアンマン2』は全世界興行収入およそ6億2,400万ドルという成功を収めた。また、マーベル・シネマティック・ユニバースのその後の躍進ぶりは言うまでもない。アイガー氏は回顧録の中で、ジョブズの意見に敬意を払いつつ、『アイアンマン2』の成績については「彼も自分がいつも正しいとは思えなかったかもしれませんね」とも記している。

何も言わないで

Sources: SR, Vanity Fair

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。