単独映画『ジョーカー』は原作コミックと異なる物語に ─ 「ファンは怒るかもしれない」

DCコミックス屈指の人気を誇る“狂気の犯罪王子”を描く単独映画『ジョーカー』は、これまで数多く刊行されている原作コミックとは一線を画し、独自の物語を描くという。監督のトッド・フィリップスが英Empireに語った。
「コミックは意識しませんでした。ファンは怒るかもしれませんけど。我々は、ジョーカーがどのように出来上がったのか、自分たちのバージョンで書きました。これが面白いところで、ジョーカーをやるのではなく、この男がジョーカーになる物語をやるんです。」
この発言は、出演者ブライアン・タイラー・ヘンリーが2019年6月に語っていた「今回はまさしくオリジン・ストーリー」という発言とも合致する。ブライアンによれば『ジョーカー』は、「いかに彼が幸せな人間だったか、というところから始まります」というのだ。
ジョーカーが登場する作品は数多い。一方でそのオリジンが明確に描かれることは珍しく、アラン・ムーアがライターを、ブライアン・ボランドがアートを手がけた「バットマン:キリングジョーク」はその1作だ。もっとも、このコミックでのジョーカーはもともと貧乏生活にあえいでいた売れないコメディアン。今回の映画についてブライアンが言う「いかに彼が幸せな人間だったか」という説明とはやはり一致しない。

ともあれ、作品ごとに様々な解釈が楽しめるのがアメコミ作品の醍醐味とも言えるから、コミックを踏襲しないという選択も妥当だ。確かにコミックでは、既にジョーカーであるこの狂人のおぞましき犯罪劇や、バットマンとの対決を描くものが多い。本作では、その狂気が出来上がるまでのオリジンを描くということである。その影響として、巨匠マーティン・スコセッシが手がけた傑作カルト・コメディ映画『キング・オブ・コメディ』(1982)があるという。
コミックとの比較もさることながら、批評家らは、過去の実写版ジョーカー、とりわけ『ダークナイト』(2008)のヒース・レジャー版との比較を盛んに行うことだろう。本作でジョーカーを演じるのは、『ザ・マスター』(2012)『her/世界でひとつの彼女』(2013)などのホアキン・フェニックス。『ダークナイト』ヒース・レジャーや、『スーサイド・スクワッド』(2016)ジャレッド・レトが同役を演じることになった当時は、公開前の時点から様々な意見が噴出し、反対的な声も少なくなかった。一方ホアキン版に対しては、現時点にて好意的な期待の声が比較的多い印象だ。
出演者には他に、トーク番組の司会者役で名優ロバート・デ・ニーロ、シングルマザー役で『デッドプール2』(2018)のザジー・ビーツ、アーサーの母親役でドラマ「シックス・フィート・アンダー」(2001-2005)のフランセス・コンロイがある。
脚本・監督を務めるのは『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップス。共同脚本は『8マイル』(2002)『ザ・ファイター』(2010)のスコット・シルバーが担当した。
映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)日米同日、全国ロードショー。
『ジョーカー』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/