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【ネタバレ】『ジョーカー』トーマス・ウェインの過去、ある事実が判明 ─ 俳優ブレット・カレン、語られざる裏設定を明かす

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

この記事には、映画『ジョーカー』の重大なネタバレが含まれています。必ず映画のご鑑賞後にお読みください。

トーマス・ウェインが語らなかった事実

『ジョーカー』の主人公アーサー・フレックは、母親ペニーの介護をしながら、綺麗とは言えないアパートで暮らし、ピエロとして働いている。経済的に苦しい生活を送る2人にとって――とりわけ母親ペニーにとっての――大きな希望は、大富豪の実業家トーマス・ウェインによる援助だ。かつてウェイン家の屋敷で働いていたペニーを、必ずトーマスは支えてくれるだろう。ペニーはそう信じ、トーマス宛ての手紙を書いている。事実、ウェインの下で働いていた男たちが殺された時、トーマスはメディアに対して「社員は家族だ」と言ったのだ。それならばペニーや、その息子のアーサーだって……。

ところが、事態は思わぬ展開を見せることになる。ペニーの書いた手紙を読んだアーサーは、そこに自分がトーマスの息子であるとの文言を発見するのだ。激高したアーサーが問い詰めると、母は、かつてトーマスと男女関係になった、そこで生まれたのがアーサーだと語った。そしてアーサーは、激しいデモの現場をくぐり抜け、ついにトーマスと対面する。しかしトーマスは、ペニーはただの使用人にすぎず、屋敷で働いている間に養子を迎えていた、彼女は精神を病んでいたのだとアーサーの言葉を真っ向から否定。母を侮辱され、病からくる笑いを抑えられなくなったアーサーは、トーマスに受け入れられるどころか、顔を思い切り殴られてしまう。

結局のところ、アーサーの父親が誰なのかは分からない。ペニーの言うとおり、本当にトーマスの息子だったのか。それともアーカム州立病院の記録にあったように、アーサーはペニーが迎えた養子なのか。それならば、若き日のペニーの写真に記されていた「君の笑顔が好きだよ TW」というサインは何なのか。あれはトーマスのイニシャルなのか、それともまた別人のものか。

ジョーカー
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

フィリップス監督は『ジョーカー』の脚本を執筆する際、“真実はこうである”との設定をあらかじめ固めていたという。しかし劇中では、アーサーが信頼できない語り手である以上、その視点から語られる物語を100%信頼することはできない。フィリップス監督や主演のホアキン・フェニックス、ソフィー役のザジー・ビーツは、物語をいかようにも解釈できることが本作の魅力だと口をそろえているのだ。

それでは、アーサーではなく、トーマス・ウェインという人間を探ってみることにしよう。劇中では描かれていないが、果たしてトーマスにはどんな過去があったのか。米The Hollywood Reporterでは、トーマス役のブレット・カレンが監督から聞き出した“真実”が明かされている。

「トーマスはどれくらいアーサーの母親について知っていたのかと、トッドに尋ねました。すると物語の背景としては、アーサーの母親はトーマスのために、彼の屋敷で働いていたという。美しい女性である彼女に、トーマスは惹かれていき、そして肉体関係を持ったんです。後になって、彼女は精神病院に出たり入ったりしていますが、僕が思うに、トーマスが彼女をそこ(病院)に入れたんでしょう。」

ここでカレンは、若い日のトーマスとペニーの間に肉体関係があったのは確かだと明かしている。ということは、少なくとも、トーマスがアーサーに伝えた“ペニーはただの使用人にすぎなかった”との言葉は嘘になる。しかし、だからと言ってアーサーがトーマスの息子だとは限らない。ペニーの写真に書かれたメッセージも、またアーカム州立病院の資料も、どちらもアーサーしか見ておらず、それが妄想でないとは言い切れないからだ。肝心の部分がアーサーの主観になっており、真実を確定できないところに『ジョーカー』の罠がある。

ジョーカー
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

しかしながらカレンは、本作におけるブルース・ウェインとアーサー・フレックが本当に異母兄弟だった可能性を示唆してもいる。“アーサーがトーマスの息子である”という展開に驚いたカレンは、フィリップス監督にその意図を尋ねたというのだ。

「トッドの返事は、“ジョーカーがバットマンに強い憎しみを抱くだけの理由って何なんでしょうね”というものでした。つまり、ジョーカーが認知されなかった子供であり、ウェイン家から何も得ることができなかった、それが憎しみのモチベーションとして説得力があるわけです。」

この言葉を鵜呑みにするならば、フィリップス監督の解釈では、ジョーカーがバットマンを憎むのは“自分たちの持てなかったものを全て持っているから”なのであり、それが真実ということになりそう……なのだが、事態はそう簡単でもない。なにしろラストの時点で、アーサーは自分をトーマスの息子とも、ましてやペニーの息子とも思っていないからだ。監督の言う「憎しみのモチベーション」すら無効化されている以上、ここにも疑いの余地はあるだろう。

ちなみに、従来のバットマン映画からは想像もつかないようなトーマス・ウェイン像を演じたことについて、カレン自身はこう振り返っている。

「(トーマスは)他の映画で、すごく親切な、非常に成功している人物として描かれていますよね。そして死んでしまう(笑)。今回はトーマス・ウェインという人物をもう少し掘り下げています。成功したビジネスマンは、成功を維持するための行動も取るだろう、という考え方ですね。時には褒められたことではないこと、冷酷なこともするという。現実的な強みがある、現実に深く根差した男だと思います。」

映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)より全国公開中

Source: THR

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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