いかにして『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はR指定を回避したか ― J.A.バヨナ監督が語る残酷描写のツボ

巨匠スティーヴン・スピルバーグが描いた恐竜映画の傑作『ジュラシック・パーク』(1993)の特徴は、ファミリー映画でありながら、確かに“怖い”演出の数々だった。それから25年が経過した2018年、シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)でメガホンを取ったのは、『永遠のこどもたち』(2007)などを手がけたスペイン発ホラー映画の新鋭J.A.バヨナ。よって本作は、まごうことなき原点回帰となる“ホラー志向”の一作となった。
しかしバヨナ監督にとって、本作は初めてのハリウッド大作映画にして、恐怖演出を取り入れながらもファミリー映画ゆえの制限を受ける機会であった。そんな中、監督は自分の望む表現を追求しながら、いかにしてR指定を回避したのか? 複数のメディアにて、そんな「残酷描写のツボ」が解説されている。

ファミリー映画には「超えちゃいけない一線がある」
「ファミリー映画なのでPG-13指定にする必要があった。でも、残酷にしたかった」。
英Empire誌のポッドキャストにて、バヨナ監督はこう言い放っている。『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は、監督が工夫を凝らして残酷描写の限界を探った一作なのだ。米CinemaBlend誌のインタビューでは、その制限をいかに認識し、どうやって乗り越えるのか、その演出の難しさとやりがいが語られている。
「こういうPG-13指定にしなきゃいけない映画を撮る時には、超えちゃいけない一線があるんだということを学びました。たとえば、人間の血を大量に映すことができない。なので、たとえば恐竜が男の腕を食いちぎる場面では、血を見せることなく、きちんと効果的になるようにシーンを作ったんですよ。そういう場面を撮る時、本当にやりたいことを実現する方法を見つけるのは楽しかったですね。一線を超えることなく、効果的な印象を与えるという。」
ホラー映画の俊英として評価され、『インポッシブル』(2012)や『怪物はささやく』(2016)など多岐にわたるジャンルの映画でその演出センスを発揮してきたバヨナ監督にとって、こうした制限の範囲内で創造性を発揮する作業には面白さもあったようだ。Empire誌では「どうやって(直接的に)見せることなく描くのか、ということを常に考えていました」とも話されている。
邦画・洋画を問わずに映画を愛好する観客ならば、こうした幅広いフィルモグラフィと、ファミリー映画で規制をくぐり抜けながら残酷描写を実現しようとする姿勢には、日本の誇る鬼才・三池崇史の仕事を想起する人もいるかもしれない。
たとえば三池監督の場合、必要とあらば過剰な表現を避けつつ、観客の想像力に委ねる形でグロテスクなシーンを演出する。バヨナ監督のアプローチも、実はそうした方向性で共通しているものだ。前述した「恐竜が男の腕を食いちぎる場面」で監督が発見したのは、シンプルかつ効果的な方法だった。
「(腕を食べられた後)男が地面に倒れると、その手が(恐竜の)口に残っている…というアイデアを思いついたんです。すると全く血を映すことなく、すごく残酷な場面だということを示せるんですよ。」
映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は2018年7月13日より全国の映画館にて公開中。監督こだわりの残酷描写、ぜひとも注目してほしい…!
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』公式サイト:http://www.jurassicworld.jp/
Sources: CB, Empire
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