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【レビュー】『キングコング 髑髏島の巨神』贅沢!技術と俳優を結集した「カッコ良かったらええんやで精神」の結晶

映画『キングコング 髑髏島の巨神』は、ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA ゴジラ』と世界観を共有する「モンスターバース」の第2作だ。2020年公開予定の『ゴジラ vs コング(仮題)』に向けての序章として、本作はおなじみのモンスター、キングコングを再びスクリーンに甦らせている、のだが……。

『キングコング 髑髏島の巨神』は、はっきりいって、従来の映画版「キングコング」とは明らかに違うトーンとストーリーをもつ作品だ。また本作は、宣伝から想像されるような、“キングコングを戦争映画風のテイストで描く”という映画でもない。もちろん物語の背景にはベトナム戦争があり、そうした要素はキャラクター造形に活かされているし、ところどころに『地獄の黙示録』などの名作を思わせる仕掛けもある。ところが不思議なことに、作品のトーンは、いわゆる戦争映画とはまるで異なるのだ。たとえば『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が“スター・ウォーズを現代の戦争映画として撮る”映画だったのとは、その違いは明白である。

それでは『キングコング 髑髏島の巨神』とは、いったいどんな映画なのか?

「カッコいい」だけの映画、という潔さ

もしもあなたがキングコングに、いわゆる人間とモンスターのロマンス、そこで生まれるエモーションを求めているのなら、もしかすると本作をわざわざ劇場で観る必要はないのかもしれない。しかし逆に「ゴリラでしょ?人間に恋したりするんでしょ?」という程度のイメージなら、本作はきっと衝撃的なものとして映るはずだ。『髑髏島の巨神』は、キングコングのイメージを鮮やかなやりかたで打ち破ってくれる。

ストーリーは至極単純だ。“どう見てもヤバい島に探検隊が突入し、そして脱出する”、これだけである。そして本作は、その“ヤバさ”をド派手に見せる、という点で非常に秀でている。もっとも、ヤバいのは島だけではないのだが……。

©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

キングコング&モンスターがヤバい

とにかく本作に登場するキングコングは、もうメチャクチャ強い。監督自身も「巨大なゴリラではない」と述べているように、デカいとかゴリラだとか、そんなレベルでは到底ない、これぞモンスターというべき暴れっぷりと存在感を惜しみなく発揮するのだ。予告編にもあるように、ヘリを容赦なく叩き落とし、物をぶん投げ、全力でドラミングする。「こんなヤツに勝てるわけないだろ……」という絶望感を味わうのは、島を訪れた探検隊のメンバーだけではない。観客も、彼らと同じ目線で地獄絵図に放り込まれることになるだろう。ぜひIMAX 3Dでご覧いただくことをお薦めしたい。

また劇中には、コング以外のモンスターもあれこれ登場する。もちろん探検隊のメンバーは、そうしたモンスターの数々とも対峙せねばならない。しかも現れるのは、どいつもこいつも「こんなヤツはイヤだ」とか「もしもこんな怪獣がいたら」といったビジュアル重視のモンスターばかりだ。日本版ポスターにはその姿が描かれているが、あのモンスターがスクリーン狭しと大暴れする。そして、そこにコングが現れたら……。あとはファイト・シーンを心ゆくまで堪能されたい。

©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

人間たちもヤバい

すでにご想像いただけるかと思うが、『キングコング 髑髏島の巨神』は真っ当な怪獣映画でありアトラクション・ムービーだ。そのサービス精神は、ともすればギャレス版『ゴジラ』をしのぐ勢いである。モンスターたちは昼間の明るいシーンでもガチで戦うし、そのアクション(バイオレンス)描写には「これ、三池崇史が撮ってんの?(いい意味で)」といった感慨もある。人間が戦い、モンスターが暴れ、自然が猛威を振るう。ほとんどマンガのような、とにかくカッコ良いことが正義という姿勢を貫いた作品なのだ。もちろんそれは、ときに想像を超えるバカバカしさに転じることもある……。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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