Menu
(0)

Search

【レポート】『キングコング:髑髏島の巨神』監督来日イベント「モンスターの登場を待たせる映画は好きじゃない」王道怪獣映画宣言!樋口真嗣監督との対談&日本版ポスターも

映画『キングコング:髑髏島の巨神』ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督が来日。2017年2月7日、本編映像の一部が先行上映され、監督自身が解説するという関係者イベントが開催された。イベントの後半には、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督が登壇し、ロバーツ監督と語り合う一幕も。今回は『キングコング:髑髏島の巨神』にかける、若き新鋭の想いをまるごとお届けしよう。

ジョーダン・ボート=ロバーツ監督 ©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,
LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督は弱冠32歳。本作『キングコング:髑髏島の巨神』は2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』から始まる「モンスターバース」の第2作だが、『GODZILLA』をギャレス・エドワーズ監督が39歳で手がけたことを考えても、かなりの大抜擢だといえるだろう。

幼少期からコミックやアニメ、ゲームなどに親しんできたロバーツ監督は、もともとキングコングというモンスターが大好きだったという。しかし本作のオファーを受けたとき、最初こそ喜んだものの「なぜキングコングの映画を、今もう一本作らなければならないのか?」と考えたようだ。

「(さまざまな)メディアや映画がたくさん存在する時代なので、いかに特別な作品を作るかがポイントだと思うんです。目が肥えた観客には、金儲けのために作られたものはすぐに気付かれます。今までと違う特別なものをどのように作るのか、観客をどのように引き込むのか。自分はどんな映画が観たいのか、友達にはどんな映画を観せたいのか。そんなことを考えながら映画を作りました」

そこで今回、ロバーツ監督が選んだアプローチは、自分が摂取してきたあらゆるカルチャーを一本の映画に詰め込むことだった。たとえばこの日上映されたオープニング・シーンでは、出演が発表されたMiyaviが日本兵イカリ・グンペイとして登場し、南太平洋に浮かぶ髑髏島で、米兵を相手に激しい戦いを繰り広げる。

「思い浮かんだ情景をそのまま映像化しました。キングコングの世界に刀を登場させてはどうか、ということで」

また特筆すべきは、このオープニング・シーンにキングコングがさっそく姿を現すことだ。監督が「いつまでもモンスターの登場を待たせる映画は好きじゃないんです。これはキングコングの映画なんだから、いきなり登場させようと思いました」と語るように、上映された映像からは“出し惜しみなし、直球の怪獣映画を見せる”という意志がうかがえた。『GODZILLA ゴジラ』で、ギャレス監督がゴジラの登場をギリギリまでお預けにして映画を盛り上げたのとは逆の方法が選択されているようだ。

1970年代という舞台設定、怪獣のデザイン

ロバーツ監督は、物語の時代設定に1970年代を選んだことにもこだわりを見せている。『地獄の黙示録』や『プラトーン』といった戦争映画を参考に、ナパーム弾が投下され、軍用ヘリが飛ぶ、そんな中にモンスターを登場させたかったというのだ。たとえばヘリがコングに叩き落とされるなど、監督は「この映画ならではのアクションシーン」を撮りたかったと強調する。

また主な舞台となる「髑髏島」のロケ地には、ベトナム・ニンビンが選ばれた。ロバーツ監督が「荒々しくも美しい光景を捉えたかった」と話すように、この日上映された映像でも、雄大な自然のなかに突如怪獣が現れる様子や、人間たちが無慈悲に襲撃される様子が鮮やかに描かれていた。その一端は、すでに公開されている予告編でも確認することができる。

本作に登場するコングは、体長が31メートルにも及ぶ“巨大モンスター”だ。この大きさに設定したのは、今後ゴジラと戦うからではなく、1933年版『キング・コング』に原点回帰したかったからだとか。とはいえ、1933年版のコングは5~7メートル程度だが……。

「動物というより二足歩行のモンスターなんです。人間が見上げたときに、獣やサル、巨大ゴリラではなく、“これは神だ”と思うサイズはどれくらいなのか。ゲーム『ワンダと巨像』に登場する巨像のような威厳やパワー、恐怖を意識しました。崇拝していいのか、殺すべきなのか分からなくなるサイズ感です」

またコング以外に登場する怪獣について、ロバーツ監督は「恐竜のようにも、エイリアンのようにもしたくなかった」と話す。宮崎駿作品に登場するような、精神性と美しさ、パワーと恐ろしさを兼ね備えた怪物にしたかったというのだ。ハリウッドではリアルで写実的な造形が好まれるなか、監督はコングも含めて「モンスターらしい造形と大げさな動きを心がけた」という。なかでも劇中に登場する、とりわけ狂暴な怪獣のデザインについては……。

「顔が白くて皮膚が黒い。『千と千尋の神隠し』に出てくるカオナシや、『新世紀エヴァンゲリオン』のサキエルを彷彿とさせますよね」

樋口真嗣監督登場!超濃厚なトークに発展

イベントの後半では『シン・ゴジラ』を手がけた樋口真嗣氏が登場。上映された映像を観て「予想に違わぬ『地獄の黙示録』っぷり。怪獣映画を卒業したら『地獄の黙示録』という世代なので、二つの大好物だけでできているような映画」と話した。さらに樋口監督は、アニメやゲームからの引用を明かしたロバーツ監督に、さらなる突っ込みを入れていく。

ロバーツ監督(左)、樋口真嗣氏(右) ©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
ロバーツ監督(左)、樋口真嗣氏(右)
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,
LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

樋口:(Miyavi扮する日本兵の役名について)グンペイですからね、イカリ・グンペイ。イカリは言うまでもないとして、なぜグンペイ(横井軍平:ゲームボーイなどの開発者)を知ってるのかという。
ロバーツ監督:そこを指摘されたのは初めてです。おっしゃる通り、グンペイは横井軍平さんから取っていて、(イカリ・グンペイという名前は)ゲームボーイのクリエイターと『新世紀エヴァンゲリオン』にインスパイアされています。ほかにも宮本茂さんをはじめ、いろんな人にインスパイアされていて……。

樋口監督はロバーツ監督を「ホンモノです」と一言。劇中に登場する爆弾の名前が「サイズミック・チャージ」(『スター・ウォーズ』に登場する爆弾と同名)であることなど、気になることは尽きない様子だった。

樋口:いろんなキングコングがあっていいと思うんですよ。初代(1933年)、ジョン・ギラーミン版、ピーター・ジャクソン版、あと我々の大先輩である円谷英二先生が作られたキングコングも2体いますけど。今回、昔っぽいのがスゴいですよね。最初に(ウィリス・)オブライエンが作った、人形アニメのコングっぽいプロポーションで。ピーター・ジャクソン版が大きなゴリラに近かったのを、今回はちゃんとキングコングっぽくしてるんですよ。ギラーミン版にちょっとだけ出てくる、リック・ベイカー(造形)の着ぐるみにも似ていて。今回はその延長線上で、巨大感などもうまく再現してるんじゃないかと思います。

また樋口監督は、本作のVFXを手がけたのが『スター・ウォーズ』などのILM社であることに言及。しかも、かつてILMを解雇されたジョン・ダイクストラ(視覚効果の巨匠)が、古巣に戻って本作に携わっていることに興奮を隠しきれない様子だった。この事態の重大さがわかる方は、ぜひ本作を劇場で観ていただきたい。

ザ・怪獣映画!日本版ポスターも解禁

なおイベントの最後には、怪獣画師である開田裕治氏が描いた、本作の日本版ポスターも解禁された。

©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,
LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

このポスターを見たロバーツ監督は「死ぬまで壁に飾っておきたい。自分の映画が他の人をインスパイアして、また別のものが出来上がるのは信じられないほど素晴らしいこと」と感激。一方、樋口氏はネタバレを語りかけて静止されるも「本当に(怪獣映画が)好きなんですね」と監督に改めて感心した様子だった。

なお、イラストを手がけた開田氏は「私が子どもの頃に怪獣映画のポスターを見て感じた高揚感を蘇らせようと思いました。特に今回のコングの巨大さ、人間など歯牙にも掛けない圧倒的な強さ、存在感が感じられるように描きました」とコメントしている。

左より、ロバーツ監督、開田裕治氏、樋口監督 ©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED
左より、ロバーツ監督、開田裕治氏、樋口監督
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,
LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

最後に樋口監督は、本作を「正統派の怪獣映画だという予感がします。同時にベトナム戦争映画であり、そこに“映画ってこうだよね”という監督の美学が貫かれているところにシンパシーを感じます。こういう映画を、一人でも多くのお客さんに、大きいスクリーンで観てもらえるとうれしいです」と一押し。ロバーツ監督は「日本の文化に大いにインスパイアされた映画です。なぜ2017年にキングコングを作らなければならないのか?なぜ人々は映画館へ映画を観に行くのか?ということを意識して作りました。早く日本の皆さんにご覧いただきたいと思います」とアピールした。その自信のほどは、ぜひ劇場で確かめることにしよう。

『キングコング:髑髏島の巨神』は2017年3月25日(土)全国ロードショー。

Eyecatch Image ©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,
LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly