スコセッシ最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』に『ミッドサマー』の影響あり ─ 「ゆっくり、静かな」テンポ、圧倒的な没入体験に

マーティン・スコセッシ監督最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が遂に公開を迎えた。3時間26分の超大作となる本作には、日本でも大きな話題となったあのホラー映画の影響があるという。
本作は、ノンフィクション小説を基に、石油の発掘により巨万の富を得た米オクラホマ州のオセージ族に起きた連続殺人事件の真相に迫るクライム・サスペンス。米The Irish Timesで、スコセッシ監督はインスピレーションを受けた作品に、ホラーの鬼才として知られるアリ・アスター監督の2作品を挙げている。
「アリ・アスターの『ミッドサマー』と『ボー・イズ・アフレイド(原題:Beau Is Afraid)』のような優れたホラー映画の作風とペースがとても好きなのです。映画のテンポは、ヴァル・リュートンのB級映画や、ジャック・ターナーの『キャット・ピープル』『私はゾンビと歩いた』のような作品に回帰している。もう少しゆっくり、静かな感じです。」
『ミッドサマー』(2019)は、アメリカの大学生グループがスウェーデンの夏至祭で目の当たりにする恐怖体験を描いた1作。一方、現時点で日本未公開の『ボー・イズ・アフレイド』(2023)は、極度の不安症を患うホアキン・フェニックス演じる中年の男の“幻覚的な”冒険を描いたコメディホラー。2作ともに2時間半を超える長尺の中で、物語は「ゆっくり、静かに」進む。
こうした作品の影響から、映画のテンポを遅めることに決めたスコセッシ監督は、物語の被害者であるオセージ族に着目。「赤子への名付けや葬式、結婚式といった慣習に表されるオセージ族の文化」に関するシーンを濃密に描くことで「民族を理解することができるようになった」という。「たくさんの人がこの映画の世界に没入してくれると自負しています」。
ちなみに本作の物語は当初、原作と同様に事件を捜査するFBIの視点から展開されていく予定だったが、大幅な改稿作業が行われた。スコセッシ監督によると、脚本を書き進めて2年が経過した頃、主演のレオナルド・ディカプリオが「“この物語の心臓はどこにあるのでしょう?”と尋ねてきた」という。その後、オセージ族と面会したというスコセッシは、当時をこう振り返っている。
「“そうだ、ここに物語があったじゃないか”と思いました。私たちが感じた本当の物語は、必ずしもFBIのような外から来るものではない。むしろ、オクラホマの中にあるんだ、と。」
映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は公開中。
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Source:The Irish Times