キューブリック未完の『ナポレオン』伝記映画、スピルバーグがHBOで全7話のTVシリーズとして製作中

20世紀の巨匠スタンリー・キューブリック監督が長年に渡って企画していた、ナポレオン伝記映画プロジェクト『Napoleon(仮題)』がついに本格的に動きだしたようだ。間もなく最新作『フェイブルマンズ』が日本公開を迎えるスティーブン・スピルバーグ監督が本プロジェクトをHBOのドラマシリーズとして製作を進めていると、ベルリン国際映画祭のインタビューにて明かしている。
『Napoleon』は、キューブリックが『2001年宇宙の旅』の次回作として準備していた未完の映画。『2001年宇宙の旅』のポスト・プロダクション(撮影後作業)の時点ですでに構想は存在しており、ナポレオンの栄枯盛衰を綴る伝記映画として進めていた。主演をジャック・ニコルソンに据え、撮影も目前に控えていたが、製作スタジオの米MGMが打ち切りを発表し、幻に終わっていたのだ(同時期に同題材を基にした映画『ワーテルロー』が興行的失敗に終わったことが一因とされる)。
過去には『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)のキャリー・フクナガ監督が企画の進行を試みていたこともあったが、明確な進捗は見られなかった。この幻の企画は、鬼才テリー・ギリアム監督も挑戦したものの頓挫した経緯がある。そしてこの度、名監督スピルバーグが企画の進捗を明言した。
「クリスティアーヌ・キューブリック(キューブリック監督の妻)とジャン・ハーラン(キューブリック作品を多数手がけたプロデューサー)の協力を得て、スタンリーのオリジナル脚本『Napoleon』をベースにHBO向けの大規模な製作に取り掛かっています。全7話のリミテッドシリーズで『Napoleon』を製作します。」
これには報道陣からも拍手やどよめきが起こっている。スピルバーグは2013年にも仏メディアに『Napoleon』の脚本を開発していることを明かしていたが、キューブリック脚本の翻案として実現する運びになった。
キューブリックとスピルバーグの縁と言えば『A.I.』だ。これは、原案キューブリックの逝去後にスピルバーグが監督し、2001年に公開に漕ぎ着けた作品である。
『Napoleon』でスピルバーグがどの立ち回りを担うのかは定かでない。直近ではTVシリーズに関心があるとコメントしていたこともある。なお米Deadlineによると、企画はまだ開発段階であるものの、シリーズ受注に近づいているところだという。
ナポレオンを題材にした作品と言うと、リドリー・スコット監督、ホアキン・フェニックス主演の新作映画『Napoleon(原題)』が 2023年春、Apple TV+にて配信予定だ。もしもキューブリックがナポレオンを映画化していたら、ナポレオン・ボナパルトの「誕生から死まで」を描いていただろうと思うと回答していたスコット。スピルバーグがキューブリックから引き継いだ本作『Napoleon』との違いを見比べるのも一興だろう。
Source:Deadline