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【インタビュー】『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は「世界中で起きている出来事」─ 監督&主演が想いを語る

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
©2019 A24 DISTRIBUTION LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

世界中が最も注目する映画スタジオ・A24と、ブラッド・ピット率いる製作会社プランBが『ムーンライト』(2016)以来の共作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』が2020年10月9日(金)より全国公開された。

アメリカ・サンフランシスコで生まれ育ったジミーは祖父が建てた、家族と暮らした記憶の宿る美しい家を愛して止まない。しかし家主は、変わりゆく街の観光名所となっていた家を手放してしまう。再び住む事を願って奔走するジミーを支えるのは、親友のモント。都市開発により取り残されてしまった人々が交差していく……。

この度、THE RIVERは主演・原案のジミー・フェイルズ、監督のジョー・タルボットに単独インタビューを実施。住宅地の高級化、題名の意味、小津安二郎監督からの影響などについて尋ねてみた。

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
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実体験に基づく物語・登場人物

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
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──本作は実体験から着想を得た作品と伺いましたが、どこまでが実際に体験した出来事なのでしょうか?

ジミー・フェイルズ:僕の人生で実際に起きた数多くの出来事が基になっています。実の母親も出演していますし、登場人物の多くが僕の知人を基にしていますよ。したがって、物語ではありますが、実際の出来事から着想を得たものもあれば、作り話も含まれています。

──本作に登場するジミーとモントには、友人同士である、お二人の関係性が反映されているのでしょうか?

ジミー:確実にそうとは言い切れませんが、確かに複数の共通点があったことは確かでしょう。とはいえ、決して意図した訳ではありません。そうだとしたら、代わりにジョー(・タルボット監督)が出演していたと思います。彼自身も演じてみたいと考えていたので。

ただ、僕たちはモントを家と同じように、僕(ジミー)を街に繋ぎ止める存在として描きたかったのです。僕は彼の事が大好きですし、大切な存在なので。そういう部分は共通点と言えるかもしれませんね。

──題名に込められた想いについては如何でしょうか?

ジミー:僕が一年間も街を離れて、ニューヨークに行ったことで感じるようになった部分が反映されています。一年間大学に通い中退しました。それから街に戻って来た時、全てが変わり果てたかのような感覚に陥りました。

街からは自分自身の面影が薄れかけていたり、黒人コミュニティも街から消えかけていたり、もしくは住む場所を制御されてしまったり。とにかく僕が慣れ親しんでいた街とは異なっていました。つまり、その時に感じた想いが込められている訳です。

世界中で起こる住宅地の高級化

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
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──本作の主題でもある、住宅地の高級化によって、街から人がいなくなり、都市から歴史性が失われるという問題はサンフランシスコだけでなく、世界各国で起きています。例えば東京にしても、オリンピックの為に街の風景が変わり、ホームレスを含め、居場所を失った人たちが沢山います。世界に届く普遍性は作りながら意識していましたか? 

ジョー・タルボット監督:最初は僕達の生まれ育った街について描く事に尽力していました。街に縁のある友人達と共に取り掛かり始めたのですが、早い段階で企画を公にする必要があると考えたのです。今までより大きな規模にする必要があり、支援が必要だったので。そこで、コンセプトに基づく5分間の短編映画を製作しました。公開したら多くの反応があり、支援の申し出が来るようになったのです。僕達が描こうとしている事に興味を持たれるとは想像もしていなかったので、本当に感動しました。

最初は地元の人達からの反応が多かったのですが、そこから作品は東海岸から欧州、日本など世界中に広がりました。感想を下さった方々の誰もが、愛し慣れ親しむ街の高級化、利益の為に売り飛ばされてしまう悲惨な状況を訴えていたのです。まだ撮影も始まる前、ただ頭の中で想像していた段階で、映画にもなっていなかった頃でしたが、初めて「残念ながら、これは世界中で起きている出来事だ」と考えさせられました。

──このような状況を止める方法や、全員が納得するような解決策はあると思いますか? 

タルボット監督:不動産開発業者が船に乗って二度と帰って来なければ解決するでしょう。テクノロジー業界の裕福な億万長者達も一緒に船に乗れば、僕達の勝利ですが、実際は起こり得ないと思います。彼らが小舟に乗る訳ないですからね(笑)。

──現在世界で起きている様々な社会情勢を鑑みての質問ですが、フィクションには現実に勝てるだけの可能性があると信じられていますか?

タルボット監督:素敵な考え方ですね。僕自身も希望はあると思います。ただし、現実に勝てるのかは正直分かりません。心から愛する映画に出会ったとしても、最終的には必ず劇場から出ていかなければなりません。そうすると、再び変わらない現実と向き合わなければなりませんよね。その現実を映画は変える事が出来ないのです。

しかし、素晴らしい映画と出会い劇場を後にした時、今までには無かった価値観が生まれて、新しい景色が目の前に広がることもあるでしょう。現状を変える解決策が見えて来る可能性もあるかもしれません。必ずしも映画から人生の回答が得られるとは思いませんが、それでも人生における大切なきっかけには成り得ると思います。

衣装・音楽・最新技術について

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──主人公は全編を通して概ね同じ服装ですが、何か意図があったのでしょうか?

タルボット監督:衣装については入念に話し合いました。僕はそういう要素(衣裳など)で遊んで、現実から掛け離れたところに進んでいくような作品が好きです。そこで、『波止場』(1954)のマーロン・ブランド演じる港湾労働者の象徴的な衣装を参考にしました。僕達の映画に登場するジミーも、(西部劇の)カウボーイが服を着替えないのと同じで、最終的に赤色のシャツとニット帽、ズボンなどを組み合わせることになったのです。これがサンフランシスコの英雄的な服装だと感じた訳ですね。

──音楽には何を表現して貰いたいと考えたのでしょうか?

ジミー:本作での音楽は、様々な時代の核心を捉える必要があったのです。サンフランシスコに関係した昔の音楽が数多く挿入されています。ジェファーソン・エアプレイン、ジョニ・ミッチェルなど。あの時代は短い期間でしたが、サンフランシスコを形作った曲が数多く発表されていました。したがって、これらの音楽は必要不可欠だった訳です。

──パソコンやスマートフォンなど、最新のテクノロジーが直接的にほとんど登場しません。その理由は何故でしょうか? 

ジミー:僕達は、最新技術に固執した世界には入り込み過ぎないようにしています。当然、僕達が携帯を持っていなかったり、使わなかったりという訳ではありません。実際に今、ZOOMで会話もしていますからね。(編注:この度のインタビューはZOOMにて実施)

ただ、僕達は現実世界で生きようとしているのです。例えば、外に出て散歩する中で刺激を受ける事はありますよね。その時は携帯で電話している訳ではなく、街を肌で感じながら、互いに会話を聞き合っています。互いに刺激し合うには、その瞬間を大事にしなければなりません。

小津安二郎を彷彿とさせる撮影

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
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──小津安二郎監督の作品を彷彿とさせるような撮影に意表を突かれました。

タルボット監督:小津安二郎監督からは間違いなく影響を受けています。特にジミーと母親がバスに乗っている場面ですね。リバースショット(※向かい合って会話している人物を交互に撮影する手法)、センターフレーミング(※登場人物を画面の中央で捉える手法)などは小津安二郎から着想を得ました。撮影監督であるアダム(・ニューポート)と全体の画作りについて議論した時は、一つの作品に限る訳ではなく、場面毎に異なる作品を引き合いに出して議論しましたね。

──他に参考にした作品についても教えてください。

家の場面での撮影や照明については、アキ・カウリスマキ監督『白い花びら』(1999)を参考にしました。当然、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)についても話し合いましたよ。あの映画はブルックリンに行ったことが無かったとしても、その場に実際に行ったことがあるような感覚になります。また、世界観が鮮明で登場人物は壮大だったので参考にしましたね。

『ゴーストワールド』(2001)についても色々と考えて、その過程の中でソーラ・バーチ(同作で主人公イニード役を演じている)をバスの場面で出演して貰う事になったのです。10代の時に初めて、あの作品を観たのですが、非常に感銘を受けました。前々から、ジミー(・フェイルズ)演じるキャラクターと、ソーラ・バーチ演じるキャラクターにも共通点があると感じていましたよ。

僕とジミーが愛して止まない映画『Nothing But a Man(原題)』(1964)も参考にしました。本作と物語自体は全く異なるのですが、心温まるような精神性が作品全体を包み込んでいます。非常に強烈で痛みを伴う主題を扱っていますが、そこに存在するキャラクター達は常に優しさに満ち溢れています。そのような精神性に影響を受けました。キャラクターだけでなく、世界をどのように撮るのかにも。

あと忘れてはいけないのが、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(2019)を手掛けた友人の長久允監督ですね。彼とはサンダンス映画祭で出会いました。その時は互いに短編が出品されていて、2年後に再び長編映画を引提げてサンダンス映画祭で再会しましたね。彼の短編(『そうして私たちはプールに金魚を、』2017)には素晴らしいショットが詰まっています。その中でも携帯を空中に投げると、電話が宙を回りながら地上に落ちて来るという演出があったのです。それで、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』でも同じ事をやりたいと思いましたね。本作の予告編にも同様に子供が石を空中に投げて、頭に落ちてくるという場面があるのですが、そこに引用させて頂きました。

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は2020年10月9日(金)より新宿シネマカリテ、シネクイントほか全国ロードショー。

Writer

南 侑李
Minami南 侑李

THE RIVER編集部。「思わず誰かに話して足を運びたくなるような」「映像を見ているかのように読者が想像できるような」を基準に記事を執筆しています。映画のことばかり考えている“映画人間”です。どうぞ、宜しくお願い致します。

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